✒ それから 5 / 祓い屋 1
──*──*──*── 眞宮乃壹禾・退院後
入院してから2ヵ月後、いっちぃが完治して《 病院 》を退院した。
退院したいっちぃも僕が通う《 囲碁教室 》に遅れて通い始めた。
いっちぃも6組からのスタートで、[ 教室 ]に慣れる迄は1ヵ月間は6組に通っている。
いっちぃは囲碁部への入部を諦めて、放課後は《 囲碁教室 》へ通っている。
僕も4年生になったら、囲碁部の入部を諦めて放課後に《 囲碁教室 》へ通う事になるんだろうな~~。
そんないっちぃから連絡が入った。
LINEの内容は、お父さんのコネで祓い屋に依頼をする事が出来て、調べてもらえる日程が決まった事だった。
集合場所は僕の《 家 》から近い例の《 コンビニ 》の[ 駐車場 ]だ。
どんな祓い屋が来るんだろう??
詐欺師とかじゃないよね??
いっちぃは「 信頼の出来る祓い屋だから大丈夫だ! 」ってLINEで言ってるけど……。
疑う訳じゃないけど、僕は一寸…かなり不安だったりするよぉ~~。
──*──*──*── 当日
──*──*──*── コンビニエンスストア
僕は《 自宅 》から直接、《 コンビニ 》 へ向かって歩いた。
[ 駐車場 ]に到着すると既にいっちぃが居た。
僕に気付いたいっちぃが元気に手を振ってくれる。
久賀瀬千晴
「 いっちぃ~~!
御免ね、遅くなっちゃったかな? 」
眞宮乃壹禾
「 千晴!
大丈夫だ。
約束の時間より、10分も早いからな。
──此処が大型タンクローリーが突っ込んだ《 コンビニ 》なんだな 」
久賀瀬千晴
「 う…うん……。
《 コンビニ 》が無くならなくて良かったよ。
此処が無くなると不便になっちゃうんだもん…… 」
眞宮乃壹禾
「 この《 コンビニ 》、無くなる話が出てたらしいけど、頓挫したって噂だ 」
久賀瀬千晴
「 頓挫って?? 」
眞宮乃壹禾
「 何でも《 セロッタ商会 》が土地を買い取ったらしくてさ、《 コンビニ 》の改修工事も《 セロッタ商会 》がするらしいぞ。
《 コンビニ 》の名前も変わるらしくて──【 セロカ君のコンビニ 】だってさ 」
久賀瀬千晴
「 【 セロカ君のコンビニ 】って事は、会員カードを使って買えるって事だよね?
凄いや!
今より多くセロカPが増やせるね、いっちぃ! 」
眞宮乃壹禾
「 そうだな。
──おっ、来たみたいだぞ。
此方でぇ~~す! 」
いっちぃが向かって来る人物に元気良く手を振り出した。
此方に向かって歩いて来る人物は2人だ。
あれ??
2人の内、1人は僕の知ってる人だぁ!!
何で??
祓い屋と関係が有るのかな??
眞宮乃壹禾
「 今日は有り難う御座います 」
祓い屋
「 構わない。
御得意様の頼みだからな。
我は陰陽師の絲腥玄武だ。
本来は別の陰陽師の予定だったが、来れなくなった。
済まない…… 」
???
「 玄武さんはTVには出ないけど、祓い屋としての腕は確かだよ 」
久賀瀬千晴
「 兄ちゃん!
兄ちゃんも祓い屋だったの? 」
兄ちゃんと呼ばれた人物
「 千晴、久し振りだな。
聞いたよ、院生として《 囲碁教室 》に通ってるんだって?
《 碁会所 》の皆、自分の孫の事みたいに自慢してたよ。
嬉しそうにさ、『 千晴がプロ棋士を目指す 』って喜んでたよ 」
久賀瀬千晴
「 恥ずかしいよぅ~~(////)」
兄ちゃんと呼ばれた人物
「 ははは。
それだけ千晴は《 碁会所 》の皆から好かれてるんだよ 」
眞宮乃壹禾
「 千晴、知り合いなのか? 」
久賀瀬千晴
「 うん!
兄ちゃんはね、《 碁会所 》に来て、囲碁の相手をしてくれてるんだよ。
《 碁会所 》の皆からは “ マオちゃん ” とか “ マオ坊 ” って呼ばれて親しまれてるんだよ。
前に話したと思うけど──、自分より弱い相手には指導碁しか打てない兄ちゃんだよ 」
マオ
「 紹介の仕方ぁ~~ 」
絲腥玄武
「 マオの知り合いなのだな 」
マオ
「 うん。
プロ棋士を引退された久賀瀬先生夫婦の御孫さんだよ 」
絲腥玄武
「 あぁ……あのプロ棋士の──。
可愛い孫がプロ棋士を目指すなら嬉しいだろうな 」
マオ
「 玄武さんは、オレの異母兄だよ。
オレには異母兄が後3人居るんだ 」
久賀瀬千晴
「 お母さんが違う兄弟って事?
仲良しなんだね… 」
マオ
「 まぁね。
歳が離れてるしな。
( 本当は皆で決めた設定なんだけどなぁ~~ )
えぇと──、依頼人は眞宮乃壹禾君だったね 」
眞宮乃壹禾
「 はい。
実は── 」
いっちぃが兄ちゃんと陰陽師の絲腥さんに事情を話してくれた。
僕からも分かる範囲で当時の事を話した。
神佛の事は言わないで伏せながら話した。
マオ
「 ふぅん──。
約20年前に此処で殺害された6人の学生か……。
空き地で学生を殺害するなんて、20年前のヤクザって馬鹿だったのかな? 」
絲腥玄武
「 さてな。
我には分からぬが、褒められた事では無いな。
約20年も此処に居となれば、地縛霊として地脈に縛られていたのだろう。
だが、この[ 駐車場 ]には地脈に縛られている霊的存在の類いは居ないな。
地縛霊を地脈から引き離し、地縛から解放した何等かの切っ掛けが有った筈だ 」
マオ
「 えと……地縛霊を地脈から引き離し、地縛から解放する事なんて出来るもんなの? 」
絲腥玄武
「 不可能ではないな。
それだけの強い力の能きが “ 人知れず起きる ” 場合も稀に有る。
今回はその稀なケースの可能性が有るかも知れぬな 」
マオ
「 そうなんだ。
じゃあ、もう[ 駐車場 ]に地縛霊は居ないんだ。
じゃあ、何処に行ったんだろう…… 」
絲腥玄武
「 依頼主の話では歩道橋で見掛けたと言っていたな。
歩道橋に移動した可能性は有る 」
マオ
「 歩道橋に?
どうやって? 」
絲腥玄武
「 久賀瀬千晴を移動手段に使った可能性が高いな 」
久賀瀬千晴
「 えっ?
僕ですか?? 」
絲腥玄武
「 自分の《 家 》へ帰るつもりだったが、何故か《 家 》とは別方向の歩道橋へ向かって歩いていたのだろう。
その間の記憶は無いなのだろう 」
久賀瀬千晴
「 は…はい!
覚えてないです! 」
絲腥玄武
「 地縛から解放された6体の霊体は移動する為、君の身体を勝手に動かしていた可能性が有る。
君には何も憑いてない。
安心すると良い 」
久賀瀬千晴
「 僕はこれからも大丈夫って事ですか? 」
絲腥玄武
「 君の全身を包んでいる力次第だろうな。
肉眼で見る事は出来ぬが、全身を包んでいる力の信頼を君が裏切らぬ限り、守護ってもらえるだろう 」
久賀瀬千晴
「 は…はい…… 」
この人、神佛の力が見えてるんだ!
陰陽師って凄いよぉ!!
僕は本当に神佛から守護ってもらえてるんだ(////)
眞宮乃壹禾
「 あの──、千晴が目に見えない力に守られているなら、何で幽霊が千晴の身体を勝手に動かせるんだ? 」
マオ
「 言われてみれば……そうかもな。
玄武さん、どうなの? 」
絲腥玄武
「 我には分からぬな。
全身を包んでいる力に理由を聞くしか有るまい。
全てはその力次第と言ったが 」
久賀瀬千晴
「 そう…ですよね。
張本人に聞くのが1番ですよね!
僕もそう思います! 」
そうだよね。
彼是と人知でモヤモヤと考えるより、神佛にお聞きすれば良いんだよね!
誰にでも出来る事じゃなくて、神佛と意思の疎通が出来る僕にしか出来ない事だもんね!
絲腥玄武
「 マオ、歩道橋へ向かおう 」
マオ
「 そうだな!
歩道橋に行けば何か掴めるかも知れないよな 」
僕達は歩道橋へ向かう事になった。
《 コンビニ 》から歩道橋に向かって皆で歩き出した。