✒ 病院 3
──*──*──*── 2階・病棟
──*──*──*── 病室
お母さんがいっちぃの[ 病室 ]に迎えに来てくれた。
個室の[ 病室 ]から戻ったら、《 病院 》が用意してくれた夕食を食べ終えた。
お祖父ちゃん,お祖母ちゃんと囲碁を打ちながら、僕は心此処に有らずだ。
いっちぃに囲碁を教える為に一緒に打つのは構わないけど、僕まで院生を目指す話しに発展するなんて──。
「 院生になって、プロ棋士を目指したい! 」なんて、言えないよぉ~~。
お父さんには絶対に言えない。
言ったら、何でそんな事になったのか、事情を根掘り葉掘りと聞かれちゃう。
そんな事になったら、僕が神佛を無視して近道して帰った事がバレちゃうよぉ~~。
言えない……絶対に言えないよぉ~~~~!!
お祖父ちゃん
「 千晴、迷いが有るようじゃのぅ 」
久賀瀬千晴
「 えっ?
迷い……?? 」
お祖母ちゃん
「 そぉねぇ~~。
何時もより切れが悪いわよねぇ~~ 」
久賀瀬千晴
「 そ…そんな事ないよ……。
僕は何時も通りだよ?
あははは…… 」
お祖父ちゃん,お祖母ちゃんって意外と鋭かったりするんだよね……。
バレちゃうのも時間の問題かな??
神佛の事だけ上手く隠して話せないかなぁ……。
お祖母ちゃん
「 そうそう、睛雉さんがね、外来でプロ棋士になったそうよ 」
お祖父ちゃん
「 ほぉ~~。
プロ棋士になったか。
『 22歳の誕生日迄になれんかったら諦める 』と言っとったが、意外と早かったのぅ 」
お祖母ちゃん
「 睛雉さん、頑張りましたよねぇ 」
久賀瀬千晴
「 睛雉兄ちゃん、プロ棋士になれたの?!
凄いねぇ~~ 」
お祖父ちゃん
「 漸く、スタートラインに立てた “ だけ ” じゃよ 」
お祖母ちゃん
「 これからが大変なのよ。
囲碁のプロ棋士の平均年収は280 ~ 285万程なの。
棋士の経験,実績,タイトルの獲得状況で年収は変わるのよ。
プロ棋士には、手合い料,解説料,囲碁教室の講師料,書籍出版,企業からの依頼──、他にも様々な収入源が有るの 」
久賀瀬千晴
「 そ…そうなんだぁ……。
囲碁三昧な生活になりそうだね…… 」
お祖父ちゃん
「 千晴は院生は目指さんのか? 」
久賀瀬千晴
「 えっ?
僕が…院生?
…………な…何で?? 」
お祖母ちゃん
「 千晴ちゃんは強いのよ。
引退したとは言え、元プロ棋士と2対1で打てているし、惷麗ちゃんからも筋が良いと褒められたもの。
マオちゃんからも “ 院生になれる ” って言われていたでしょう 」
久賀瀬千晴
「 それは…そうだけどぉ……。
惷麗さんにしごかれるのは嫌だし…… 」
お祖父ちゃん
「 院生になる気が有るなら、手続きはしてやるからのぅ 」
お祖母ちゃん
「 院生でプロ試験に合格が出来なくても睛雉さんみたいに外来でプロ試験を受けれるし、大丈夫よぉ 」
久賀瀬千晴
「 う…うん…… 」
こ…この流れってチャンスなんじゃないかな?!
この波に乗っちゃえば、神佛の事を言わなくても済むかも知れない?!
お祖父ちゃん,お祖母ちゃんは僕を院生にしたいみたいだし……。
久賀瀬千晴
「 あ…あのね、お祖父ちゃん,お祖母ちゃん!
いっちぃがね、今の部活を辞めて『 囲碁部に入る 』って言ってるんだ!
それでね、『 院生になって、プロ棋士を目指す 』って言ってるんだよ。
初心者のいっちぃが退院する迄、いっちぃと囲碁を打つ事になったんだ 」
お祖父ちゃん
「 ほほぅ……壹禾坊がのぅ 」
久賀瀬千晴
「 月刊囲碁に掲載されてる漫画を読んで、決めたんだって。
お祖父ちゃんと一緒だね!
それでね……いっちぃから『 一緒に院生になってプロ棋士を目指そう 』って言われちゃってて…………悩んでたんだよ 」
お祖父ちゃん
「 それが原因なのかい 」
久賀瀬千晴
「 う…うん……。
お祖父ちゃん,お祖母ちゃん……僕、いっちぃと一緒に院生を目指しても良いのかな?
院生になるには、お金が掛かるんでしょ?
お父さん,お母さんには言い難くて…… 」
お祖母ちゃん
「 それなら、千晴ちゃんは、何も心配しなくて良いのよ。
未来のプロ棋士に投資するわ 」
久賀瀬千晴
「 とうし?? 」
お祖父ちゃん
「 “ 支援する ” って事じゃ。
金の事は心配せんでえぇ。
折角じゃから、とっておきの《 囲碁教室 》を紹介するからのぅ 」
久賀瀬千晴
「 とっておきの《 囲碁教室 》が在るの? 」
お祖父ちゃん
「 《 セロッタ商会 》がBSになっとる《 囲碁教室 》じゃな。
其処はセロカ会員,家族登録をしておる子供だけが通える《 囲碁教室 》でのぅ、月額をセロカPで支払う事が出来るんじゃ 」
久賀瀬千晴
「 セロカPで月額を支払えるなんて太っ腹だね! 」
お祖母ちゃん
「 《 囲碁教室 》で囲碁を教えてくれる先生は、厳蒔弓弦さんよ。
とても強いプロ棋士なの。
弓弦さんに習えば上達も早いわよ 」
久賀瀬千晴
「 そうなの? 」
お祖父ちゃん
「 弓弦先生はマオ坊や惷麗ちゃんより強いからのぅ。
沢山打ってもらうとえぇぞ 」
久賀瀬千晴
「 うん…… 」
お祖父ちゃん
「 千晴が来月から通える様に手続きはしとくからのぅ 」
久賀瀬千晴
「 有り難う、お祖父ちゃん! 」
《 囲碁教室 》に通って、院生になる事が決まっちゃったぁ~~。
囲碁は嫌いじゃないけど、囲碁尽くしな生活は一寸嫌かも知れない……。
そこそこな棋力の僕が院生になれるのかなぁ……。




