✒ 病院 1
──*──*──*── 病院
──*──*──*── 病室
久賀瀬千晴
「 ………………此処……何処ぉ~~?? 」
???
「 おぉっ!
千晴ぅ~~!
目が覚めたんじゃのぅ 」
久賀瀬千晴
「 その声は……お祖父ちゃん? 」
お祖父ちゃん
「 ばぁばも居るよ 」
???
「 アンタが言うんじゃないよ!
千晴ちゃん、無事で良かったよぉ 」
お祖父ちゃん
「 壹禾坊に礼を言わんとな 」
久賀瀬千晴
「 いっちぃ??
どうしていっちぃに御礼を言うの? 」
お祖母ちゃん
「 歩道橋の階段から落ちる千晴ちゃんを助けてくれたからよ 」
久賀瀬千晴
「 え?
歩道橋の階段??
…………僕、歩道橋になんて行ってないよ 」
お祖父ちゃん
「 なんじゃと?
帰宅早々に贈答用の新聞を持って出掛けたじゃろ。
覚えとるかの? 」
久賀瀬千晴
「 贈答用の新聞??
……………………あっ!
ちゃんと覚えてるよ!
結局、新聞は渡せなくて…………諦めて《 家 》に帰る事にしたんだ。
《 コンビニ 》から《 家 》迄は歩いて10分もしないよ。
それに途中に歩道橋なんて無いじゃん。
僕は歩道橋じゃなくて《 家 》に向かってたんだよ。
誰かと間違えてるんじゃないの? 」
お祖母ちゃん
「 じぃさん、確かに《 コンビニ 》から《 家 》迄は歩道橋なんて有りませんよ 」
お祖父ちゃん
「 確かにそうじゃな。
然しのぅ、歩道橋から足を踏み外して落ちる千晴を壹禾坊が庇って助けてくれたのも本当の事なんじゃよ 」
久賀瀬千晴
「 どういう事なの??
僕……本当に歩道橋なんて──。
でもでも……足を踏み外しちゃった事は覚えてるかも……。
身体が、ガクッてなったの覚えてるし……。
でもでもでもっ、歩道橋まで歩いた記憶が無いよ…… 」
お祖母ちゃん
「 千晴ちゃんは新聞を持って《 コンビニ 》へ行ったのねぇ。
大型のタンクローリーが《 コンビニ 》に突っ込んだって聞いたけど、千晴ちゃんは大丈夫だったのねぇ。
良かったわぁ…… 」
久賀瀬千晴
「 う…うん……。
僕が《 コンビニ 》に着いた時には突っ込んだ後だったから……。
パトカーと救急車が来て[ 駐車場 ]に停まったのは見たよ。
新聞を渡す相手とは会えなかったけど…… 」
お祖母ちゃん
「 あら~~そうなの?
《 病院 》へ運ばれたのかしらねぇ?
御客の多い時間帯だったみたいだから、かなりの人数が《 病院 》へ運ばれたそうよ 」
久賀瀬千晴
「 あのね……僕が新聞を渡す予定だった学ランを着た6人のお兄さん達はね…………《 コンビニ 》が建つ前の《 空き地 》で……ヤクザに殺されて亡くなっていたみたいだよ……。
今から20年くらい前の事らしくて…………僕…怖くなっちゃったよぉ~~。
だからね、早く《 家 》に帰ろうって──。
お祖父ちゃん,お祖母ちゃんは事件の事、知ってる? 」
お祖父ちゃん
「 いや、御近所さんから聞いた事は有るがのぅ……。
此方に引っ越して来た時には既に《 コンビニ 》は在ったからのぅ── 」
お祖母ちゃん
「 そうですねぇ。
当時はニュースで放送されたみたいだけど……詳しくは知らないわねぇ。
《 コンビニ 》が出来てから6年後に引っ越して来たからねぇ 」
久賀瀬千晴
「 そう…なんだ……。
幽霊になるんだよね?
幽霊って話したり、物に触れたりするの?
僕ね、お話もしたし、ランドセルを取られたり、教科書やノートを読まれたりしたんだよ!
新聞も1枚渡したままだし……。
足だってちゃんと有ったし、身体も透けて無かったんだよ!
実体の有る幽霊なんて居るのかな?? 」
お祖父ちゃん
「 ふむ…………分からんのぅ。
神佛が見せられる場合も有る様だがのぅ。
話したり、触られたりはのぅ…… 」
お祖母ちゃん
「 そうですねぇ。
人間には分からない事が多いから、神佛にお聞きするしかないわねぇ 」
久賀瀬千晴
「 そう…だよね。
神佛に教えてもらうのが1番だよね…… 」
神佛に駄目って10回も教えられた近道から帰った事を正直に話したら、怒られちゃうかなぁ……。
お祖父ちゃんから定規でお尻をペンペンされちゃうかなぁ……。
言いたくないよぉ~~~~!!
???
「 千晴っ!
目を覚ましたって── 」
久賀瀬千晴
「 お母さん! 」
お母さん
「 千晴の馬鹿っ!
寿命が縮んだじゃない!
心配させないでよぉ…… 」
お母さんは両目から涙を流して僕に抱き付く。
お母さんが泣くの初めて見たかも知れない。
久賀瀬千晴
「 ご……ごめんなさい……お母さん……。
僕にも何が起きたのか分からなくて……。
《 コンビニ 》から《 家 》に帰るつもりだったのに……何で歩道橋に行っちゃったのか覚えてないんだ…… 」
お母さん
「 壹禾君にちゃんと御礼を言うのよ。
壹禾君が歩道橋を上がってる千晴に気付いてくれたから、軽い怪我で済んだんだからね! 」
久賀瀬千晴
「 う…うん……。
いっちぃは無事なの?
怪我してない?? 」
お母さん
「 歩道橋の階段から落ちたんだから無傷な訳ないでしょ。
全治2ヵ月よ。
再来週ある部活の試合には出れなくなったそうよ 」
久賀瀬千晴
「 えっ……僕の所為で──。
そんなぁ~~~~ 」
いっちぃが中学校の部活で何の部活に入ってるのか知らないけど……、きっと運動部だよね?
僕が神佛を無視しちゃったから、いっちぃを巻き込んじゃったのかな……。
巻き込んじゃった事、ちゃんといっちぃに謝らなきゃだ。
神佛の事は出せないけど、誠心誠意、心を込めて謝ろう。
許してもらえないのは仕方無いとして、僕に出来る事は精一杯して償おうと思う。
久賀瀬千晴
「 お母さん、いっちぃに会えるかな? 」
お母さん
「 会えるわよ。
壹禾君、千晴に “ 聞きたい事が有る ” って言ってたわね 」
久賀瀬千晴
「 聞きたい事?
何だろう?? 」
お母さん
「 昼食が終わったら連れて行ってあげるわ。
壹禾君の病室は5階なの。
エレベーターで行くわよ 」
久賀瀬千晴
「 うん。
お母さん、僕も御飯は食べれるの? 」
お母さん
「 お弁当を作って来たのよ。
食べなさい 」
久賀瀬千晴
「 わぁい♪
お母さんが作ってないよね? 」
お母さん
「 安心しなさい。
作ったのは戞茲さんよ 」
久賀瀬千晴
「 良かったぁ~~(////)」
お母さんは料理が苦手で御世辞にも家庭的とは言えない “ お母さん ” だったりする。
料理に関しては、お父さんの方が上手で美味しいんだよね。
お父さんの料理の腕は、お祖母ちゃん譲りなんだ。
僕がお父さんの手作り弁当を食べている間、お母さんが車椅子を借りて来てくれた。
お弁当を食べ終えた後、車椅子に座ると、お母さんが後ろから車椅子を押してくれる。
[ 病室 ]を出て、エレベーターの場所へ移動する。
エレベーターに乗って、5階の病棟へ向かった。




