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魔王の弾丸  作者: eXi
第二章 冒険の書 二部 半步崩拳打遍天下
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九話 ケジメ

ワシとイザークはお互いに睨み合う。

これは決闘の形式を取っていたが、事実上のケジメであった。









三百の松明に覆われた村での戦闘から一夜が開けた。

奴らはクリントへの奇襲に失敗したことがわかった時点で

全軍が撤退していったようだ。


盛大にぶっぱなしていたクリントだがゴブリンの死体数は二十八であった。

流石に飛距離が遠かったことに加えて夜間であること

あとは数が多すぎることなど奴は色々と言い訳はしておったが

いままでの戦果がなかったことから考えれば

あまりにも上出来と言わざる終えないだろう。




当たり前だが「前線」を任されたロレーヌとフリーナは

矢継ぎ早にクリントに文句を言っていた。

だんだん感化されてきたのかフリーナもロレーヌのように

不平不満を言うようになったのはいい傾向なのかどうなのか。


ただ前線を任されて不平不満を言っていたロレーヌは傷一つすらなかったし

フリーナはフリーナで自分より魔導機関車に傷が付いたことに

不平不満を述べており、女性の精神力の強さには驚かされるばかりである。


幸い魔導機関車は動かす分には問題がないようで

持ち運んでいた機材で修理も賄えるようである。


そんな中、クリントちょっと考え事をしたいと

一人席をたった。ワシは女性陣にまだ文句が言い足りないと言わんばかりに

クリントのかわりに愚痴を聞いておったが

次第に我慢できなくなり、ワシも酒が切れたと席をたった。


早々に席をたった当人は一人、村の入口で地面に木の枝で

何やら落書きをしては考え込んでいた。


「何をしておる、お主が席を離れるからワシがお主への不満を

 ロレーヌたちからぶつけられる羽目になったぞ」


しかし奴は黙って地面を見続けている。

更に文句を言おうとしたが、奴は集中していることに気がついた。


ふとクリントは顔を上げるとようやくワシに気がついたようで

「多分だが……もうこの村は襲われない気がする」

といいおった。


「何故だ?」


当然の問いを投げかけた。


「頭がいいからだ」


クリントは簡潔に答えた。

頭が良いと攻めてこない、ワシは理屈がよくわからなかった。

「頭が良くて強いのじゃろ? 次はもっと

 巧妙な作戦を立ててくるものではないのか?」


そんなワシの言葉に鼻を鳴らして顔を手で拭うとクリントは言った。


「まぁ自意識過剰な『人間』なら馬鹿だからそうするかもしれないな」


そういい、持ってた枝を指揮官の剣のようにブンブンと二回振った。


「俺は次どうするべきかを考えてた。

 奴らはかなり高度に訓練されていて無駄がない。

 ならば俺と同じように考えるかもしれない。

 そう考えた時、俺ならこの村はもう襲わない」


コヤツにとってはそれが答えなのかもしれないが

ワシにとってはいまいち要領を得なかった為

再度ワシは文句を言うように質問した。


「結局何がいいたいんだ」


やつは枝で村を指して言う。


「もうこの村は安全に略奪できる『カモ』ではなく

 獰猛な番犬のいる危険なリスクの伴う戦いになった。

 俺ならここを攻め続けるより、もっと楽な『カモ』を探すね」


そう言うとクリントはこの議論はもう終わりだと言わんばかりに

枝を放り投げてどこかに歩いていってしまった。


とことん冷静、冷徹といってもいい。

それがヤツの強みなのだろう。

果たしてゴブリン共にそこまでの頭脳があるのだろうか?




奴は会議室に戻るやいなや、ワシに言ったこととは全く別の説明をした。

何のことはない、今日も昨日と同じ作戦で行くという話である。


ただワシとクリントの配置場所は前回とは違う場所になっていた。

村にいた冒険者たちも実際に戦果を上げたクリントに対して

表面上は指示に従う姿勢を見せていた。









そして再び夜。

結論から言えばクリントの予測どおりとなった。

夜襲はまったくなく、ワシらはただ待っていたが何事も起こらなかった。


ワシはクリントの横で大量のエールの樽を抱えてきて

襲撃など、起きないと酔っ払っていた。


「おいジジイ、いくら敵が来ないと予想してても最悪の事態には備えろ」

「こう見えてもワシはお主のことを評価しておる。

 おそらくハズレはないだろう」


そういったが彼はなんとも釈然としない顔をしていた。

しかしクリントが銃をずっと見つめていないことからも

奴も自身の読みに相当自信があるのだろうとワシは思っていた。


「……人間もこれだけ冷静な判断力を持っていればな」

「お主、頭が良いようで頭が悪いのぉ?」


その言葉にクリントは言葉は発しなかったが不愉快そうな顔で

ワシを睨みつけることで回答とした。


「人間は頭が良いだけなんてつまらないだろう。

 頭がよかったらワシのような人間は生まれてこなかっただろうからな!」


「……そいつは違いない」


それをきいて不愉快そうな顔がワシと同じようなニヤケヅラに変わった。


そう、人間は合理性だけですべて割り切れる生き物ではないのだ。






更にそして翌日、クリントは会議室で自身の推論を言うと

それぞれが三者三様の態度を示した。


まずは村の村長だ。

これで安心して生活が出来るとロレーヌに対して

深く感謝の意を伝えていた。


そしてワシらは一件落着ということで気持ちの整理がついたと言った所か。


だが問題だったのは元々いた村の冒険者たちである。

一応村長は彼らにも礼を言っていたが、形式的なのは明らかである。

彼らの表情は複雑であり、一応笑顔を見せてはいたが

その心中は定かではない……。


そしてそんな和やかな雰囲気を破る一言が老魔道士から出た。




「ヤン殿、お願い事がありまする」


一見無表情だが眼に強さを感じる。

こういった手合はワシの人生の都合上よくみてきた。


「私と決闘しなさい、貴方に拒否権はないはずだ」




復讐者の眼だ。









決闘は町の外で行われることになった。

あたりには何もものがなく、殺風景だがこの老魔道士にとっては

何かを破壊する心配がない、いい条件なのだろう。

最もそれはワシにとっても同じことではあるのだが。


立ち会い人にはお互いの連れが努め

ロレーヌがワシとクリントが戦ったときと同じやり方。

つまりコインをトスし、地面についた瞬間が開戦の合図となった。


ワシは決闘のとき、常に血が疼くタチだった。

高揚感からワシは相手に対して無駄なことを話した。


「本気でやったほうがいいか? それとも……」

「無論」


そういう奴の眼は……年老いた老人の皮を被った狼のごとく

ギラついた眼をしていた……いい眼だ。


クリントは全員が冷静で賢くなればいいと言っていた。

たしかにヤツの理想は「平和」だからな、もっともな話である。

だがワシは別に馬鹿で構わないと思っている。


頭が悪くても、喧嘩好きだろうと、悪人だろうと

生きる目標を持っている人間は素晴らしいだろうとワシは思う。

それがたとえ復讐であってもだ。




老魔道士は勝算無しで立っているわけではないだろう。

ワシぐらいの歳になると無策で強者の前に立つほど愚かな者は少ない。

ましては魔法を生業とするものが知恵を駆使しない訳が無い。


それでもなお、仮にどんな小細工をしたとしても、負ける気はしなかった。


状況を冷静に判断する。

心が踊る、熱を帯びても戦いにおける判断力は失ってはいけない。

奴から溢れ出るマナの総量は弟子を取っていたというに相応しく

おそらく日々研鑽を重ねたのであろう、かなり多めに評価して

ワシの十分の一程度……と言った所か。


しかし決闘はマナの総量で決まるわけではない。

だが奴のその冗長でまるで絵本の世界から出てきたかのような

身の丈を上回るほどの巨大な杖は明らかに即応性を犠牲にして

巨大な魔法を行使するために作られた設計なのは明らかである。


流石に決闘となれば別の杖を使用するかとも勘ぐっていたがアテは外れた。

ワシの戦闘スタイルはシンプルが故に隙が少ないが

シンプルすぎるが故に攻撃がわかりやすいという弱点ともいい難いが

そういう部分があるのは承知している。


ロレーヌの手からコインが宙に舞う。

あたり一面が凍りつくかのようにピリピリとひりつくが

まだワシはその段階に至っても思案してた。


本当に無策か? それはありえない、まして相手は復讐者である。

……ピンときた。おそらく相打ちないし一矢報いる命がけの攻撃。

そしておおよそ素早くないと思える魔法使いのとりえる戦法。


コインは落下を始め、ワシは奴のマナの動きを見た。

この老獪なジジイめ、既にマナの行使を始めているが見えないように

迷彩を施している……あの冗長な杖であれば奴のマナのすべてをぶつければ

ワシの放出するマナと同等のなんらかを出力する可能性がある。


ならばワシにも考えがある。

ワシも遠慮なく丹田にマナを練り始めた。

いちいち隠したりする必要もない、奴も同じ小細工をしておるのだからな。


そしてコインは地面に触れた瞬間ーー。


ほぼ着地と同時にワシに向かって杖からまるで天から降り注ぐような

雷撃がワシの右拳に向かって着弾した!


ワシは体を狙ってくると判断したため、全身を均一にマナで覆っていたため

一点集中の雷撃はわしの手を貫くように着弾し、貫いた!


ワシの右手からは煙のような黒焦げた煙が上がっていた。

奴は表情にこそださなかったが、その眼は驚嘆を物語っていた。


右腕ごと消し飛ばすつもりだったのだろう。

だがワシの腕は原型を保っていた。




……だが右腕全体がひどく焼け焦げていた。

おそらくもう右腕は振ることも出来ないだろう。


ワシは左腕にマナを込めて奴に言った。


「満足したか?」

「……満足と言うには程遠いが……弟子に一つ報告してやることぐらいはできそうじゃな」

「そうか」


ワシは左拳を奴の体にぶち込むとやつは体ごと宙に浮かび、そして落下した。


死にはしてないだろう。体の安全の保証はしかねるが

こちらの右腕一本もっていったのだ、十分だろう。

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