表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の弾丸  作者: eXi
第二章 冒険の書 二部 半步崩拳打遍天下
26/39

四話 我楽多

ロレーヌという女はワシが出会ってきた人物の中でも極めて変わった人物である。

ワシは人物眼に自信があるわけではないが、それでも五十年近く生きてきて

ある程度若いもんよりはそれが有るつもりだ。


その点で言うとロレーヌという女の性格は一見してみると極めて社交的で

理想的な人間関係を築くタイプ……に偽装したトンデモナイ内向的女である。


彼女はよく同行しているクリントに対して内面を見せないことを叱責するが

「どの口が言う、笑わせてくれるわ」と

酔っ払った勢いで何度もいいかけたことがある。


まあ性格などどうでもいい。

ワシ自身も人に褒められるような性格は素よりしていない。


そんなワシが唯一この女について気に入らない点があった。

それは自らの力量をずっとひた隠しにしていることだ。

しかもその隠蔽は幾重にも重ねられていることがワシは非常に気になる。


この女は恐らく野盗ごときには遅れは取らない。

それは魔物との戦闘時の立ち振舞をみていても理解できる。


見た目はおもちゃのような短刀を腰に下げてるが

恐らく剣のほうの腕前も相当だろう。

振るったところを殆ど見たことがないが歩いてる時に体の軸がぶれていない。


だが最も気に入らないのは彼女のマナである。

正直言って周りの人間は気が付かないのかと言いたいほど異常だ。


まず何の魔法だかしらないがこの女のマナは幾重にも重ねて封印が施されている。

ありえん話ではあるがワシに匹敵しかねないマナでも内蔵しているのか

その幾重にも重ねた封印を押し破るかのようにかすかではあるが

ざらついたマナが発露することがある。


めったにそれを表すことはないが、クリントという男は

よほど人を逆なですることが上手だと見える。

そんな彼の言葉に感情を激しく顕にした時にわしは見た

わずかに吹き出るかのように、しかしざらついたような異常なマナを。


言葉にするのは難しいが例えば人間のマナに色があるとしたらそれを青だとする。

魔物にも当然マナがあり、それは赤だとする。

彼女のマナは丁寧に塗りつぶしてあるが

辛うじて見える程度にまた違う色に感じるのだ。






まぁいい、この女が強いのならばそのうち一緒に旅をすることになったわけだ

その本性が顕になるかもしれない。

顕になることがあるならそれも良し、そうでなかったとしても

所詮、ワシより強いものなどそれこそ

今や伝説に語らる存在と化している

魔王ぐらいなものだろうと勝手に思っている。

過大な期待は大きな失意をもたらす物だ。






まあそれに異常というのであればクリントという男はその遥か上を行く異常者だ。

何が異常かといえばすべてが異常だ。

その精神性から魔法のあり方、理念、すべてがおかしい。

正気を保ってるのが奇跡とでも言いたいほどおかしい男だ。


最もコヤツに関しては異常なだけで何かを超える驚きを与える存在ではないだろう。

以前コヤツと決闘してある程度コヤツの底は割れたと思っている。


ただ評価をしていないわけではない。

コヤツの長距離からの攻撃能力は他の冒険者を圧倒して余りあるものがある。

その精密性や隠密性は正に殺人のために生まれてきたような男だ。

殺しの加護でも受けているのだろうか。


ワシでも流石にマナの感知ができない位置からコヤツの射撃を受けた場合

良くて致命傷、絶命してもおかしくないだろうということは容易に理解できた。


しかしそれでいて当人の性格は平和主義ときている。

おまけに秩序を愛している節がある。








そんな異常者の一行である我々のところに

ロレーヌという女は新しい異常者を招き入れた。

フリーナとかいう小娘で、歳は十五を超えた程度だろうか。

この女も常識の範囲外にいる「思考」を持っているようで

魔導機関車? とかいう奇天烈な馬に変わる装置を持ち込んだ。


こいつのお陰でワシは非常に助かっているので

あまり大きなことを言えないのだが、最初仲間に加わることになった時

ワシは激しく反対したのだ。


いくら常識外の人間の集いといえど、ワシから見ればまだガキも同然である。

何より……若者の顔を見ていると愛弟子の顔が思い浮かぶのが嫌だった。


ワシは言った。

「こんな戦力外、襲われたら足手まといになる。

 ロレーヌ、お主彼女の身に何かがあったらどうするつもりだ」

しかし女狐はいいおる。

「あら、クリントもいるし、何よりヤン先生ともあろう方がいらっしゃっる

 我々のもとにいるのはある意味、世界のどこよりも安全だと思いませんか?」


この女に口喧嘩をしても無駄なのはわかってはいる。

なのでワシはこの女狐とは話さず、フリーナという少女に

話を集中させることにした。


「たしかにワシの元は世界一安全じゃ。それは保証するが

 だがワシが得意なことは相手を倒すことだ。

 護衛は得意ではない」

「つ、つまり、ど、どういうことなのでしょうか?!」


この少女は愛弟子とは違い、とても気弱で臆病な気質である。

ただワシが怒鳴って怖い人物像を植え付けることで離反するように促しても

ロレーヌという女は、ワシとこの少女をうまくコントロールしてしまうだろう。


なのでワシはあえてこの少女に対して少女の土台で勝負することにした。


「お主はガラクタを作るのが特技なんだろ」

「が、ガラクタ、じゃないですが……ものを作るのは、得意です」

そこにロレーヌが割って入ろうとしたのを察知し

ワシは彼女が入り込む前に畳み掛けるように口にした。

「ワシが攻撃して壊れない防御を考えろ。そしたら同行を許可する」

「先生、勝手に話を決めないでください!」


案の定、ロレーヌは話を遮ってくるがワシは取り合うつもりはない。

なによりワシはこの言葉をいった瞬間、

気弱な彼女の瞳がかすかに光ったのを感じた。


彼女は「うー」と唸りながら頭を捻ったあと言った。

「確かに自衛手段がなければ急な攻撃でやられてしまっては

 護衛もなにもありませんよね……考えてみます」


そういうと彼女はなにやらぶつくさといいながら我々から離れていった。

「ちょっとヤン先生! 意地悪すぎないですか?」

「命の話をしている。多少は厳しくもなる。そんなことよりロレーヌ。

 お主あの少女の目を見たか?」

「まぁ……やる気になってるみたいなので止めはしないですが……」


やはりこの女、抜け目のなさは確かなものがある。


「というかクリントも少しはなにか言いなさいよ!」

「俺はジジイより護衛は慣れてるが、言ってることは正しい」


この小僧は相変わらず……。


「そんなに歳は変わらんじゃろ!ジジイはやめろ!」

「いくつだろうとジジイはジジイだ、それに俺のほうが十歳以上若い」

「もう下らないことで言い争わないで!!!」







そんなこんなで少女はワシの攻撃をも防ぎ得るものを作るらしい。

正直そんなものは存在しないとワシは思っているが。

魔物がうろついてないなら魔王城だろうと解体してやって構わない。


しかし、フリーナという少女は本気だったようだ。

しばらくするといろいろな道具をもってきてワシのところに戻ってきたのだ。


何やら不思議なメガネを装着しており、よくわからない数字がついた装置なども

もってきていたが何を意図するのか、学がないワシには全くわからない。


「全力を防ぐということであれば、ヤンさんの全力を知らないといけません」


などと少女は生意気なことを言いおった。

このような生意気なことを言われると色々なことを思い出してしまうが……

自分が巻いた種である。ワシは言った。


「わかった、町中では全力は出せん。街の外までは歩けるか?」

「は、はい、わかりました!」


そう言うとワシと彼女は一緒に街の外までやってきた。

なにかいい「物」は無いかと思いみてみると街の近くに崖のような場所があった。

人間が落ちたら形も残らないほどの高さがある崖だった。


「あれがいい」


そういうと彼女はよくわからないという表情を浮かべつつもついてきた。


「何やら色々用意したようだが、今から実践して見せる。

 準備は必要か?」

「え?! 一体何をするんですか?! ちょっとまってくださいね」


そういうと彼女はかけていたメガネについたトリガーを引いていた

どうやらレンズが切り替わるギミックのようだ。


一通り準備が終わったのか彼女は言った。

「おっけーです、いつでもいいです!」

「よかろう、ならばしかと見るがいい。

 危ないからここより先には踏み入るな」


ワシも本気を出すのは久しぶりである。

身体強化に関しては常に全力の鍛錬を日々重ねているが

マナに関しては全力を出すといろいろと破壊範囲が広すぎて問題がある。


今回も全力とはいったが全力でやると地形が変わってしまう恐れがあるため

実際には六割程度だろうか……それでもそれを防げるものを生み出せるとも

思えないがどうだろうか。


ワシは崖のすぐ下までだいぶ歩いていき、片手で崖に掌で触れた。

そこで足裏からマナを吸い上げるイメージをし、丹田から流れ出るマナを

一気に掌に流し込んだ。


ゴゴゴギ!!!

その瞬間、まるで地震が起きたかのような地響きと共に崖は大きく崩れた。


「ヤンさん! 上!」


大声をあげて危険を知らせてくれる少女。

わかっておる、崩れた崖がワシの頭上に降ってきていた。

それをワシはマナを込めた拳を振り上げて殴りつけた!


ダーン!!!


その巨大な岩の塊はワシの頭上で砕け散った。


パラパラと粉になった岩の破片が飛び散り目が痛い。

ワシは粉塵がおちつくまで目を閉じて手を目に当てていたが

収まるのをみて、手足を払い、土埃を取り除いて彼女のもとに戻った。


「どうじゃ? 諦める気になったか?」

ワシはよく喧嘩をふっかけた相手に見せるニヤけづらをしつつ言うと

彼女は元気よく言った。

「わかりました! 今から作ってきますね!」




一体このパーティはどうなってるんだ。

まともなやつは誰もおらんのか?


ワシは一人ため息を付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ