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魔王の弾丸  作者: eXi
第二章 冒険の書 一部 イグルー
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六話 未来は白紙

食べ物まみれになった私の顔と髪の毛を丁寧に拭き取ってもらい

家路についた私は正に虚無の心境でした……あまりにも自分の周りのことが

大きく動きすぎてて理解は追いついてるのですが脳がそれを拒否してるかのような。




しかしどうにかしなければなりません。

それには2つのジレンマを解決する必要があります。


それはロレーヌさんの条件を達成するためには

一つにまず工房を利用しなければならないということ。

二つにミデサン先生の手助けが恐らく必須になるであろうこと。


正直部品改良の分野は先生の得意分野で

もし一週間以内に達成しなければならないともなれば

助力無しで達成はほぼ不可能でしょう。



いずれにしても私は工房に戻らないといけないということです。


「なによりも工房に作った水車を利用したシャワーを使いたい!」


正直ろくに服すら着替えない私ですが、流石に食事が頭についた状態で

ずっといるのは流石に気持ちが悪いです……。


結局激しく葛藤したのに情けない理由で私は工房に足を向けたのです。


道中、先生を怒らせてしまった私が

果たしてこの工房に戻る資格があるのだろうか?

そんな思いが何度も頭をよぎりましたが

それでも足はいつものように自然と工房に向かっていました。




私は工房の目の前にたったところで異変に気が付きました。

工房はドアがついていますが、基本的にいつも開けっ放しです。

それは仮に誰もいない状態であってもです。


誰も泥棒にはいらないという理由もあるのですが

この中には泥棒よけの細工があるため、あえてドアを閉じていないのです。

しかし今日に限ってはその工房のドアが閉ざされていました。

出張のときですら閉じることがないそのドアが閉ざされている事に

私は強い緊張感を覚えました。


……やはり先生を激怒させてしまった私を工房は拒んでいるかのようにも見えます。


ふと私は初めて工房に足を踏み入れたときを思い出しました。

あのときも工房のドアは開きっぱなしで、先生が背中を押すように

優しく促してくれたのを覚えてます。


しかしシャワーだけでも浴びさせてもらいたいという浅ましい考えで

私は工房のドアをノックしました。




コン、コン。




!?

瞬間、少しだけドアが開いたように思えたのですが

隙間風が少しだけドアから吹き込んだだけのようでした。




「あっ」と声が漏れてでてしまいました。

ドアは施錠はされておらず、私のノックによって軽く開いたのです。

あまりにもずっと開きっぱなしだったため、蝶番が緩んでいたのかもしれません。

そのうち直さないといけないなどと「無意味なこと」を考えつつ私はドアを開けました。




なんてことはありません。

中はいつもどおり、取り替えるのがめんどくさいが故に

巨大で細い芯のロウソクが一本灯ってるのみの薄暗い部屋です。


部屋にはいつも物静かに研究に耽っている「私の先生」の姿はありません。

ただ、一番大きな作業台の上にはいつもと違う巨大な設計図が置いてありました。


私はそれが先生の「残したもの」であると理解し

すぐにその図面につぶさに観察しました。


そこには私の考案した金を車輪に巻いて摩耗しない工夫がなされた

「魔導工作」が施されたものです。しかも私が想像を超える改良がなされており

更には魔導機関車に牽引させる予定であった幌馬車の改良案まで書かれていました。

私はその洗練された先生の得意分野である改良に息を呑みました。


図面には魔導機関車の出力の無駄がないように

出力できないエネルギー分を牽引力につなげるように

幌馬車を巨大な、まるで家のように広いものに取り替える考案図も

記載されていました。


私はその素晴らしい図面に夢中になっていて這い回るように図面に顔を近づけて

図面の詳細を読み取っていたとき、何かが手にあたって机から落ちるのに気が付きました。


私は慌ててそれを拾い上げるとそれは一通の封筒でした。

丁寧に封蝋までされており、そこには先生の家の家紋である印璽がされてました。

私は手で雑に封筒を破ると、中には先生からのメッセージが記載されていました。









親愛なるフリーナへ。


恐らく君は今後魔導機関車の研究を進めるに当たり

直面するであろう問題を私なりに推察し、

事前に私が持ちうるすべての技術のすべてを用いて

その難題を解消するべく、図面を残した。

使うも良し、使わぬも良し。君の力になれるのであれば幸いだ。


以下は余談になるが、私は学問はどんなところでもできると信じてきた。

そう、たとえ道端でも、トイレでも、牢屋でもだ。

今でもその考え方にかわりはない……だがしかし君を見てて思うことがある。

果たして君が私の手を取らなかった場合、

本当に学問の道を志していただろうか。

学問はどこでもできる。だが、その考え方は環境に大きな影響を受ける。

それが私が今日発見した新しい学びだ。


私は得た学びを蔑ろにすることを良しとしない。

一つは君に道を与えること。そのために図面を残した。

そしてもう一つは私の長年にわたる怠慢を

是正する必要があると考えた。

そこで私自身は皇帝陛下に直接謁見することにした。

しばらく留守にするため、工房は自由に使ってくれて構わない。

私は私の可愛い教え子のためにこの工房の扉を閉じることはない。


君を発見したことが私の人生最大の発見であることを

私はいまだに信じて疑わない。

いつでも帰ってきてまた新しい学びを私に教えてくれたまえ。


 ミデサン




「う、うぅぅ……」

一行ごとに、先生の声が聞こえてくるようだった。

最後の一文を読み終えた瞬間、私の胸は何か大きなものでいっぱいになり……

気づけば涙が溢れ出ていた。


早く頭に絡みついたソースを洗いたいのに。

早くこの図面に書かれたものを実現化したいのに。


私はその場でしばらく泣くことしかできませんでした。



フリーナ視点の物語はこれにて終了となります。

次回からはヤン視点の物語が始まる予定です。


割とストックはたまり始めましたが、また十話分貯まるまでお休みを頂く予定ですので

よろしければ評価やブックマークなどいただければ幸いです。

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