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魔王の弾丸  作者: eXi
第二章 冒険の書 一部 イグルー
17/39

一話 車輪

キキキキキキキキキキキキキキキキン!!!




激しい小さい金属同士の打音と共に私は目が覚めました。

私は自ら作り出した試作品の目覚まし機能付きの時計の動作確認を行っていた。

窓からはカーテン越しに朝日が差し込んでおり、時刻は朝の八時。


私にしてはとても早い起床時間です。

というよりいつも寝たい時に寝て、起きたい時に起きてるので

時間間隔がないと言ったほうがより正確です。


眠気が収まらないですが、鳴り止まない時計を止めるべく、私は眠い目をこすりながら

時計の内部にある目覚まし機能を停止させましょう。


この目覚まし時計、起きるたびに破壊してしまいたくなるほど騒々しい。

でも、簡単に止められない構造が、逆に確実に目を覚まさせてくれる。

矛盾してるけど、これがいいのかもしれないと悩みます。


金属針が指定した時刻の場所に触れると、鳴り出す簡単な構造になっています。

今はネジで分解しないと止められない構造ですが

この不便さが逆に効果的だと感じることがあります。






でも今日に関しては早く起きれてよかったです。


というのも私は昨日大失敗を起こしてしまったからです。

クリントさんが作り出してくれた大きな水晶玉に夢中になりすぎて

自分の作った装置の性能を過信した結果、危うく全員がこの世から旅立つところでした。


しかしその危機を救ってくれたクリントさんにまず感謝をしなければならないのに

泣きわめいてしまい、さらにそのうえで落ち着いた後は

私はクリントさんが魔法で取り出した装置の特異性に気がついてしまい

夢中でクリントさんを質問攻めにしてしまいました。


おかげで全員から呆れられてしまい、私は「やってしまった」と

自分が情けなくて、床に伏せたくなるほど落ち込みました。


というわけで今日は皆に謝罪して回ろうと考えたわけなのです。

私はいつも「人のこと」をあまり考えたことがないので

正直何を言えばいいか全くわかりません。

ごめんなさいといわないといけないことぐらいはわかるのですが……。







「先生、おはようございます……」

真っ先に服も着替えず顔もあらわずにまず工房に足を運んだ私は先生に挨拶をしました。

私の思考ルーティンの中には身だしなみのことははいっておらず

都度都度気になった時に行うことにしてるため、ついつい汚れっぱなしになりがちです。


先生は昨日の夜から寝ていないようで部屋の中には暗いながらも明かりが灯っており

先生は図面を広げてその紙とにらめっこをしておりました。


「おはよう、フリーナ。昨日は大変だったみたいだね」

顔も向けずにひたすら図面を眺めている先生は特に珍しくなく

私達の間でのコミュニケーションは別に無くても良い程度のものであったりします。

恐らく声をかけてくれたのは、流石に昨日やらかしたことに対して気を使ってくれて

先生は話しかけてくれたというわけです。

私にはこの気遣いが温かいものだとわかるのですが

いざ自分がどうすればいいかと思うとどうすればいいかわからないです。


「せんせぇ……私やらかしちゃいました……皆さんに謝ってきたいと思います」

私は責任の重さから顔を下げてふさぎ込むだけでは心のざわつきが落ち着かず

ふと何かに触りたくなり、何気なく伸び散らかした後ろの髪の毛を適当に掴みつつ

私は先生に話しかけました。



私は今の自責の念から意識をそらしたかったのかもしれません。


ふとその時、思ったより髪が伸びてるなと思い

近くにあったハサミを手に取り

私は髪が伸びた部分を無造作に切り始めました。

挿絵(By みてみん)



その様子に少しだけ先生は不機嫌そうな顔をしました。


忘れていました、先生は「仕事」で部屋を汚すことは全く気にしないのですが

身だしなみのことで部屋を汚すととても機嫌を悪くするのです。


私は慌てて箒をとりだして、散らばった髪の毛を集め始めると

先生はその箒を抑え、何をするかと思えば私の手から箒を取り上げました。

かわりに箒を手に取り、私の髪の毛の始末を始めながらいいました。


「私も人の事は言えんが、たとえ技術者であっても清潔さは大切だ。

 もし君の自慢の魔導機関車に君の髪の毛が入り込んだことで……」


そこまでいうと先生は話すのを止めて、眼鏡に指を当てながら言った。


「それはともかくとしてだ。魔動機感謝のポテンシャルを発揮するためには

 現状のままではいかんな」


私は先生の見ていた図面をみて、先生が夜遅くまで何をしていたかを理解しました。

先生は私の作った魔導機関車の設計図、とりわけ車輪部分の構造を

確認してくれていたようです。


「はい……車体重量が大きいことを加味してかなりのスピードをだしてもよいと

 考えていたのですが、車体衝撃の吸収機構を取り付けて、車輪が地面に離れることによる

 空転も防いだのですが、それも無視して車輪は空転を始めました。

 これ以上の速度を出すためには地面に粘りつくような材料を車輪に使う必要が

 あるかもしれませんが、それはそもそも車輪のコンセンプトとして破綻してます」


「如何にも。車輪は地面に張り付かず、滑らかに転がることが使命だ。

 でもそれだけじゃ足りない。魔導機関車には、触れた瞬間だけ張り付き、

 離れる時にはすっと剥がれる――そんな夢のような素材が必要なんだ。」


簡潔に言うとベットリとしててサラサラしている物が必要です……。

意味がわからないと多くの人には言われるでしょう。

こういう事を言うとだいたい多くの人は話の意味がわからないーーということで

次第に私から皆離れていきました。


ーーミデサン先生だけがそんな私の話をまともに聞いてくれます。


でも、今まさに迷惑をかけてしまった三人の方々は

なんとなくですが、そういったことを馬鹿にせずに聞いてくれる。

そんな気がするのです。




「先生、私今回の件、皆さんに謝罪したくて……」

私は俯いたまま先生に話した。

先生はそれを特に咎めるでもなく言った。

「ああ、そうしたほうがいいとおもうならそうしたまえーーただし」


先生は私の方をまっすぐ見つめてきた。

とても珍しいことだった。

「謝罪とは気持ちの問題だ。謝罪する時だけは相手の目をみて言うんだ。

 いいかいフリーナ。約束できるかな?」


そういう先生は優しい表情をしていった。

私は顔を見て言葉を交わすことがこんなに心に響くということにびっくりしました。

きっと先生が手本を示してくれたように

みんなにもいえばこんな気持になってくれるのだろうか?


「わかりました先生、私行ってきます!」


私は思い立った瞬間、工房から駆け出していた。



みんながどこにいるか解らなかった私はまずはロレーヌさんが

幌馬車を止めている宿舎に向かうことにしました。


するとなんということでしょうか、そこには既に幌馬車の近くて

三人の方々が何やら話し合いを行っており、全員揃っていたのです。


……。

体が金属のように固まるような、心が固まるような。

先生に言われた時にあの温まる心地がしたアレをここでーー

そう思うほどに体と心は強張りました。


そんなときでした。


「フリーナ、昨日はとても楽しかったわよ。

 ちょうどみんなともそのことについて話していたの」


ロレーヌさんは気さくに私に話しかけてくれたのに私は俯いてしまいました。

そんなとき、意外な方が私に話しかけてきました。


「失敗は若者の特権だ。若い内にできるだけ失敗しておけ。

 そのうち自分が若いものを導く事になった時には失敗は出来んからな」


ヤンさんがそんな言葉を私に投げかけてきてくれました。

正直ヤンさんはとても怖い印象が強かったので怒鳴られるかもしれないと思っていたので

かなり意外な言葉をかけられて心の中が少しだけ軽くなったーー。


その気持の軽さから顔をふとあげるとヤンさんは私の事を見て

いつもの険しい表情……しわになって怖い顔が残ってますが

優しい表情をして「私をまっすぐみて」話しかけてくれていたのです。


私はヤンさんに顔をまっすぐ向けていいました。

「ごめんなさい!」


そして、私は心で汗を書くような気持ちに駆り立てられて

続けざまに一気にロレーヌさんに対して

「ごめんなさい!」


さらに馬車に寄りかかっていたクリントさんの前にも駆け寄って顔を見て

「ごめんなさい!」


ーーはぁ……はぁ……何か雑になってしまった気がしますが

全員にちゃんと顔を向けて謝罪できました。


そんな私に対してロレーヌさんは優しく声をかけてくれました。

「なーに、みんなここにいる人達はね、命知らずの馬鹿ばっかだから

 下らないことで明日命がなくなってても気にしないわよー」


とあっけらかんという様はいかにもロレーヌさんらしい明るい物言いです。


!?

ふと頭を急に撫でられたかと思ったらそれは眼の前に居たクリントさんの手でした。

「皆の言う通りさ、むしろおまえさんに怪我がなくて何よりだ」

そういい、髪の毛をわしゃわしゃと撫でるとクリントさんは幌馬車の中に

入り込んでいってしまいました。


「ふーん、アイツのこと少しずつ分かってきたけど

 要するにカッコつけたがりってことね!」


そんなことをいうロレーヌさんの顔は少しだけ口を尖らせて不満げな表情を浮かべてましたが

皆本心から私のことを心配してくれていたこと

見守っていてくれたことがわかり私は嬉しくなりました。


「ありがとうございます!」


声を張り上げた瞬間、胸の奥から熱いものが湧き上がってくるのを感じた。

昨日の後悔が、今は暖かい希望に変わっている。

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