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魔王の弾丸  作者: eXi
第一章 出会いの書
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一五話 トゥエルブ・ナイン

工房の中にはいつもの陰鬱とした暗さとはかけ離れた

青白いまばゆい輝きが暗闇を照らしており、その様子を三人は

不条理な召喚術士の魔法の成果を期待感を込めて見守っていた。


彼の掌には球状の物質を眩い光を放ちながらゆっくりと丹念に生成を始める……。


約二、三分程度だろうか、生成の結果、クリントの手には透明の球体が生成された。

クリントの顔にはかなりの疲労感が浮かんでおり

生成の負荷を示すようであった。


クリントは生成した透明の球体をフリーナに渡し言った。

「作ってみたけど成功してるかは知らん。確認してみろ」


そう言われるとフリーナはつぶさに球体を確認し始めた。

持ち上げて陽の光にかざしてみたり、手触りを観察してみたりしたあと

ルーペを取り出してつぶさに球体を観察すると言った。


「うーん……これはガラスですね」


クリントはぽかんとした顔を浮かべていた。

「ガラスと水晶は違うのか?」

「見た目はにてるのですが全然違います、完全な水晶体は質も有るのですが

 基本的に単一の成分で構成されているそうです。

 一番わかり易いのはこれです」


そういうとフリーナは2本の髪の毛を形成された玉に当てて

ルーペでそれを皆に回してみてもらう。


みなさんこれは何本に見えますか?


それに対してミデサンが答えた。

「なるほど、基本的に水晶であればこれは2本に見えなければおかしい。

 しかしこの玉はぼやけて一本の髪の毛に見えますなぁ!」


クリントは頭をかきながらいった。

「うーん、いまいち違いがわからないんだよな。

 ちょっと本物の水晶を見せてくれないか?」


そういうとミデサンはガラクタの山の更に奥深くに手を伸ばすと

ぎゅっと目を閉じながら手の先でコロコロと玉を転がしつつ

ぎりぎり届いた水晶玉を取り出してクリントに渡した。


「あまり高品質ではありませんが、これこそが本物の水晶になりますね」


メガネをクイッとしつつミデサンは答える。

クリントは眼の前に持ってきて見てみたり、手の上で転がしてみたり

様々な方法で自らの作った玉と比較していた。


その後にまた頭をぼりぼりと掻きながら言う。


「スマンがこの水晶、ちょっと割ってみてもいいか?」

と、の言葉に流石にロレーヌは驚いて言う。

「いや、流石にそれはまずいでしょ……」


しかしその言葉にミデサンはにこやかな顔で答えた。

「必要ならば構いませんよ! 我々探求者に必要なことは常に常識にとらわれないこと!

 破壊から生まれるものもあるのですよ!」


早口で語るミデサンにフリーナがぼそっという。


「先生……よく発明品壊す……お金なくなります」


ロレーヌもその言葉に水晶玉をじっくりみて言う。

「私は水晶の鑑定出来ないですけど、このサイズなら本物なら最低でも

 金貨十枚はかかりますよ!? いいんですか?

 というか壊すって何に使うのよアンタ」


価値の話になり商人としての火が着いたのかかなりの真顔で

クリントに詰め寄るロレーヌだがクリントは落ち着いた様子で言う。


「試したことはないんだが、魔法を逆転させて稼働させてみることで

 その物質の構造を理解できる……かもしれない」


「あんたねぇ、かもしれないで金貨十枚壊すつもり?!」

ロレーヌは顔こそ真顔を保っているが語気はかなり強い。

そこについて再びミデサンが言う。


「わたくしは金銭的価値をモノに見出しませんが

 もし成功すれば金貨数千枚の価値のものが生まれる可能性すらありますよ?

 もっとも発明に金銭を当てはめるなどということはナンセンス極まりない話ですが!」


技術者と商人の思考の違いが激しくでた場面であったがクリントは構わず

勝手に魔法の行使を開始した。


少し名残惜しそうに悲しそうな顔をするロレーヌに対し

ミデサンとフリーナはその赤黒く光り輝く水晶玉に興味津々といった様子である。


そしてその水晶玉は徐々にヒビが入り、崩壊を初め、

最後には粉々になって赤黒い光は収束した。


「金貨十枚が……で、あんた、ここまでしてちゃんとなんかわかったんでしょうね!」


都度都度きつい口調のロレーヌの言葉が飛ぶがクリントも意に介さず言葉にする。


「恐らく水晶というのは高純度の二酸化珪素の結晶体だな……」

「わかるんですか?」


フリーナはおどおどとしつつもクリントに問いかける。

クリントは額に汗が滲んでいる中で平静に答えた。

「極めて単純な構造体だったからな、複雑な構造でなくてよかった。

 ガラスとの違いも理解した。

 今度は生成してみるが……サイズはどのぐらいがいいんだったか?」

「大型であれば有るほどいいのですが、

 重量や持ち運びのことを考えるとこのぐらいでしょうか?」


そういうとフリーナは肩幅より気持ち小さいぐらいのサイズを掌に浮かべるようにして示した。

「わかった」というとクリントはその場でしゃがみ、再び掌に青白い光を放ち始めた。


最初に作ったガラス玉は十センチメートル程度であるため今度は三十センチメートルほどの

かなりの大きさの青白くまばゆい光が部屋全体を照らしており

一同はあまりの眩しさに目を細めたが、クリントだけはその光を直視しており

あくまでも魔法の行使に集中するその様はまるでたった一人の空間で

完全に何もかもを忘れきって集中してるかのようであった。


誰もが固唾をのんで見守った。

その空間では誰しもが音を立て、動き回ることすら禁忌とされるような雰囲気が漂い

クリントの魔法行使を見守る。

クリント自身は額だけではなく全身から発汗しており

あまりに集中に顔面は赤面し、眼球は充血し、それでもなお魔力を送り続けていた。


そして都合十分、その場に居た者たちにとっては丸一日が経ったかのよな錯覚をも与える

時間が過ぎ、その光り輝く物質は完成を遂げた。


その瞬間、クリントはぐったりと倒れるかのように

玉を抱えるように前のめりになっていた。

よくみると肩で呼吸をするほど息が乱れており

尋常じゃない様子が誰の目から見ても伝わった。


ロレーヌが心配してクリントに近寄るがクリントは手を出してそれを制した。

しかしロレーヌはそれを無視してクリントに駆け寄り手を肩にかけた。


そのあとロレーヌはポケットからハンカチーフを取り出し

クリントの顔から滝のように流れる汗を拭き取っていた。


しばらくロレーヌの介護が続き、一通り顔の汗を拭く取ってもらうと

クリントは肩で息をしたままフリーナに両手で玉を掲げるように渡す。


フリーナはそれを落とさないように受け取るとかなりの重量のせいか

はたまた彼女が非力なせいか、しばらくは両手で抱えていたが

あまりの重さにテーブルに置こうとし、それをみてミデサンは慌ててガラクタ置き場から

よく水晶などがおかれる座布団のようなものを取り出してその場に置いて

そこに水晶玉を置くようにミデサンは促すと、フリーナはそこに水晶玉を置いた。


三十センチメートルほどの水晶玉である。

人の顔がほぼそのまま映り込むサイズであるが、その水晶玉が純粋な二酸化珪素の塊であることを

示すかのように人々の顔はそのままキレイに反射して映っていた。


ミデサンとフリーナはお互いルーペなどの道具を持ち、その水晶玉を観察し始めたが

「おぉ……」などと時折感嘆を表しながら次々と検査をしていくが

次第にそれが本物であることを理解すると最後にミデサンはこの言葉で結果を示した。


「素晴らしい!」


そもそも水晶自体が珍しいものであり、加えて人工的に制作したものであることから

極めて純度が高く、加えてほぼ真球にちかい状態である。

フリーナは言った。

「こんなデカくて純度の高い水晶球、今までみたことがないです……」

ミデサンも続いて言う。

「それはそうだろう、恐らくこのクラスのものはあったとしても皇帝陛下の宝物庫にでも

 詰め込まれているだろう。いやそもそも存在するかも怪しいですぞ!」


「……あのー、これお値段にしたらおいくらぐらいになるんでしょうかしら?」

その問いにミデサンは右拳をぐっと構えていった。

「どんなに低く見積もっても金貨数千枚以上は確実です。そもそも国宝級ですので

 値段が付けられるかどうか」

「水晶はどちらかといえば私達のような発明を生業にする人より

 魔法使いの方が重宝する印象がありますので、そちらの方々のほうが

 どんな値段をつけてでも欲しがりそうですけどねぇ

 単純に杖の触媒などにしてもすべての魔法は威力が倍以上上がりそうです」

と、フリーナも同調した。


あまりの高額品に高い関心を示したのはロレーヌであった。

「クリント、アンタこんな高いもの作れるなら傭兵なんかやめたら?

 これ作ってるだけで一財産できるわよ……」


あまりにもめちゃくちゃな言い分である。

しかしクリントは言う。


「俺はあくまでもフリーナが困ってたから協力したんだ。

 こんなもん、日頃なら作ってやる気はない。

 それにどんなに価値が高いものだってありふれてしまえば

 安上がりなものになってしまうのは商人のお前が一番良く知ってるだろ」


「それはそうだけど……まぁしょうがないわね。

 フリーナ、これであなたへの義理は果たせたかしら?」


そういうロレーヌはまだいささか口をとがらせ気味で不満げではあった。


「ありがとうございます、早速これを取り付けて

 装置が動くか試してみたいと思います。

 あぁ……でもサイズもでかいしちょっと調整しないとですね」

「フリーナ、私も手伝いますぞ、こんな楽しそうな事はめったにないですからな!」


そんな満足げなみんなをみてクリントはしゃがんだまま壁にすりより

寄りかかるように眠りについた。

そんなそばにしゃがみ再び顔から流れ出た汗を拭き取りつつロレーヌは言った。


「クリント、無理させて悪かったわね……本当にありがとう」

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