初配信
「こんにちは、ゔいのじ所属、天星 夏です!今日からよろしくお願いします!」
同接17万人、その大人数の前で小瀬川 凛音は天星 夏という名前でデビューした。
《来た〜!夏ちゃんよろしく!!》
《記憶を失ったって本当?》
《ビジュ神。なんせ絵師があの咲希先生だからな》
と色んなコメントが目に見えない速度で流れていく。
これって凛音への応援メッセージだよな...。
理解できない量のコメントに戸惑いを隠せない俺は、とにかく冷静になるため、1度深呼吸をする。
そして少し落ち着いたので、コメント欄を見ると、
《どうせ嘘の設定だろ、ゔいのじも落ちるとこまで落ちたな》
というアンチコメントも少しだけ見られた。
多かれ少なかれ、アンチというのは湧くものだ。その対処法も一流Vtuberには求められる。
「ゔいのじ公式のホームページにも掲載してあった通り、私は記憶を失っています。理解してもらえないことも多いと思いますが、これからどうぞ、よろしくお願いします!」
《記憶を失ったってやっぱ本当なんだ...》
《記憶喪失後に、Vtuberデビューとかエグ》
《え、今日の配信どうするん?》
ここで俺の出番だ。そう思い、俺は画面の外から声を出す。
「こんにちは、RSです。今日は天星 夏の配信を見ていただき、ありがとうございます。今回は天星 夏の方から色々と説明させてもらいますが、記憶を失う前の話などは、その前から交友があった私からお話させてもらいます」
《ええ、まじか》
《いきなり公式公認の彼氏登場で草》
《これはおもろくなってきた》
と俺の登場にコメント欄は盛り上がっている。
ここで画面に映っている背景画像を変更し、二次元コードを表示する。
そのコード先は、トゥンカロンというサイトだ。
このサイトでは、匿名で質問を書き込む事ができ、そのサイトで質問した内容の中から抽選で1つだけ送られてくるので、その質問に答えるというものだ。
「では、記念すべき1個目の質問は...こちら!」
そして表示されたのは
《デビューおめです。
記憶を失う前の関係を教えてください
結構気になります》
「いや、いきなりRSくんとの質問かよ〜w」
少し笑い気味に凛音が言うと、「これはRSくんから説明してもらったほうがいいかな?」と話を俺に振ってきた。
「俺たちは元々幼馴染の関係でした。いや、今もですよ!別に喧嘩したわけではないので。記憶が戻るまで配信のお手伝いをしようと思っています。なので、マネージャー兼今のお世話係って感じですね」
十数万人に見られていると思うと、緊張して言葉がよく出てこない。
《めっちゃ緊張してるやんw》
《幼馴染とか言わなくてもいいじゃん》
《どうせカレカノだろw》
早くも誤解が生まれているが、その後も色々と質問を行っていった。
趣味は何かや、休日は何をして過ごすかなど、色々聞かれた。
そして1番怖かったのは
《記憶喪失前の職業は?》
という質問だった。
レンタル彼女という職業が俺の頭に浮かんできたが、
「妹ですから、働けませんよ!」
とVtuberならではの逃げ方で、回答を避けれた。
確かにこういう技術もVtuberには必要なのかもしれない。
そう思いつつ、初配信は進んでいく。
投稿頻度が落ちないよう、頑張ります!




