掌ですくいあげた物語17 ~年輪~
書棚の奥に ほかの書類とまじっていた
結婚する人へ贈るために書いた
お祝いメッセージの下書き
まったくもって失礼な話ではあるけど
誰にあてたものだったのか思い出せない
たぶん年下の人だとは推察できる
結構な長文なので
これをすべて使ったとは思えないが
いまとなってはそれを確かめるすべもない
書いたのは30歳ぐらいのときだろう
だとするとぼくはまだ独身だったはずである
よくもまあ こんな青くさい こざかしいことを
恥ずかしげもなく書いたものよと呆れるが
読み返してみると
それなりに賛同できるところもあるので
そのまま書き写そうと思う
* * *
ご結婚おめでとうございます
ひとつの人生をともに歩む人と巡りあわられたこと
本当によかったですね!
心からお祝い申し上げます
この機会に
おじさんが考える理想の夫婦のありようについて
述べてみたいと思います
(それぞれに手書きのイラストが添えてある 計3点)
1.ご存知! 伊勢の夫婦岩
太い注連縄でむすばれたこの二つの岩
めおと○○の代表選手のひとつである
なぜか男岩のほうが大きく 私にはどことなく
昔ながらの夫婦像にみえてしまうのだけど・・・
2.屋久島の夫婦杉
となりあう二本の杉の どちらか一方から伸びた枝
この太い一本の枝で 木と木がつながっている
ちょっと「エッチ」な感じがするのは私の妄想か?
しかし!
3.屋久島のテーブル
屋久島で偶然はいったお店で出会った
ひとつのテーブル
一本の太い樹を横から伐って作った
一枚ものの見事な天板のテーブル
その天板をよく見ると なんと年輪が二つある!
どうみても一本の木でできた天板なのに
つまりは・・・
もともと別々であった二本の木が
永い歳月をかけて成長して太くなりくっつき一体化し
やがては一本の大きな樹となった
なにを言いたいのかというと
相手につき従うのではなく 寄りかかるのでもなく
互いが対等の立場で ともに成長し
一本の大樹として 大地に根をはり
大空に向かって まっすぐにそびえ立つ
これが理想の夫婦像ではあるまいかと考えておるわけですよ
かくのごとく人生を歩まれてみてはいかがでしょう
本当におめでとうございます
* * *
ちょうどこのころのぼくは 屋久島にハマっていた
「縄文杉」を見るため友だちと山に登り写真撮ったっけ
懐かしい
あのテーブル いまもあるかなあ