第1章 ASOKO
札幌のすすきのの「頭部切断持ち去り事件」の、2週間後、金沢駅西口(裏側)近くにある、ラブホ「ピンク・シャトー」で、同じような「ラブホ頭部切断殺人事件」が起きた。
当初は、すすきのの事件の模倣犯と思われたのだが、この金沢市の事件では、証拠は、ラブホに出入りする、男女の画質の悪い防犯カメラのみしか、残っていなかったのだ。
3ケ月過ぎても、事件は、全く解決しないのだ。
で、あるWEB投稿サイト「小説家になるぞ」に、ある小説が投稿された。
作者曰く、新聞、テレビ、週刊誌、SNS上の書き込み等からの情報のみからの推理だけで、この小説を書いたと言うのだが……。
それにこの小説自体が、このWEB投稿サイトに投稿された小説と、本当の現実とが、混在している不思議な構成となっている。
遅遅として進まぬ捜査。
深まる謎。
そして、あっと驚く、衝撃のラストまで、あっと言う間です。
第1章 ASOKO
ギーコ、ギーコ、ゴキッ!!!
奇妙で不気味な、音が、ユニット・バスに流れる。
「フフン、フフン……」と、謎の鼻歌。
ここは、金沢駅西口(裏側)奥近くにある、ラブホ「ピンク・シャトー」の一室である。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「うわー、お嬢さん。今まで、こんな美しいASOKOは見た事が無い。
顔は絶対映さないないから、貴方の美しいASOKOだけでも、スマホで撮らせて下さいね。
ここに、今日の本番代も含めて、現金5万円出すからさあ……」と言って、いかにも紳士然とした、40歳前後の男が言う。目の前に、高級財布から、ポンとピン札5枚を出した。
顔が写らないなら、まっいいか。
しかし、ここで、彼女、北川恭子は、致命的な判断ミスを犯した。
パチリと映されたスマホには、ASOKOは勿論、自分の自慢の美人顔や全身が、キチンと撮られていたのである。
「残念だったね、お嬢さん。何処の誰かは、これからユックリ聞かせてもらうが、ここに、お嬢さんのアラレも無い姿が映った写真がある。
警察や弁護士に相談したが最後、即、インスタやツイッターや、その他のSNSにこの画像をUPするからなあ、良く、覚えておけよ。
で、この俺がやりたくなったら、直ちに、出て来いよ」
と、先ほどまでの、紳士然の態度とは、真逆の態度と言葉である。
彼女、北川恭子は、現役の国立大生である。小遣いが少ないので、マッチングアプリで知り合った男性とパパ活行為をして、高価なブランド品などを買っていたのだが……。
しまった!ちょっとした、ほんの心の油断が、こう言う事態を招いてしまったのだ。
もう、一生、こいつの、言いなりに、なってしまうのか?
この悪い予感は、的中した。
ある日など、即、呼び出されて、障害者用多目的便所で、いきなりされた。
「私は、公衆便所かよ!」と、怒ってみても、後の祭りである。
屈辱以外の何物でも無いが、一旦、SNSにUPされたら最後。自分の将来は、その一点で消え去るのは、「デジタルタトゥー」の一番の怖さで有る事は、自分が、一番良く知っているのだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
しかし、北川恭子は、元々、地元では、有名な国立大学薬学部の学生であった。
自分の頭の良さには、ある程度、自信を持っていた。
「何とか、あいつを処分しなければ、一生、公衆便所のママだ」と、色々と作戦を考えた。
で、遂に、ある方法を思い付いた?それで、一体、どんな方法なのか?
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
彼女の家は、金沢市の郊外の新興住宅団地にあった。大学へは、最初は、公共バスを使っていたが、入学後の夏休み中に、車の免許を取った。中古車も親に買って貰った。
ただ、新興住宅団地故、近所付き合いもほとんど無く、それ故、空き巣等が多発。
で、よく警察のパトカーが回っていた。
丁度、今から2年前の2月頃、一台のパトカーが巡回していたが、運転手は若い警官たった一人であった。
それを十分に確認して、パトカーの手前で急に激しくしゃがみこんだのだ。パトカーから、若い警官が直ぐに降りて、駆け付けて来た。
「お嬢さん、大丈夫ですか?救急車を呼びましょうか?」と、訪ねてくる。
「いえ、救急車まで呼ばなくても大丈夫です。時たま、今日のように、めまいがする事がありますので……」
「そうですか?本当に大丈夫ですか?」
すると、北川恭子は、通っている地元の国立大学の学生証を見せて、
「この通り、私は、ただの学生で怪しい者ではありません。ワガママを言えば、家まで送って頂ければ、助かるのですが……」
「それぐらい、簡単です。じゃ、助手席に乗って下さい。自宅まで送りますよ」
さて、パトカーに乗り込んだ北川恭子は、ワザと、人目の付かないガード下まで運転させた。
そして、次のように言ったのだ。
「あのう……。私、彼氏と別れて、もう半年なんです。でも、私は、男性がいないと駄目な体なんです」と、言って、警官の左手を、スカートの中に無理矢理入れさせた。下着は全く着けていない。
「お願いですから、一度でいいから、して下さい。お金なんかいりませんから……」
「いや、本官。この私には、そう言う事はできかねます」
すると、ポケットから、避妊具を取り出して、警官のズボンのチャックを開けて、ビンビンにそそり起っている、アソコに被せた。
「誰にも言いません。好きにして下さい。昔から言うじゃありませんか。据え膳食わぬは男の恥、だとね」
ここまでされると、若い警官の性欲が暴走する。北川恭子と言う名前も学生証で確認していた。で、安心して助手席のシートを押し倒して、襲いかかった。
最後まで出し終わった、その時である。
北川恭子は、最新式のデジタルボイスレコーダーをポケットから取り出した。そして再生ボタンを押した。
「イヤイヤイヤ、辞めて、何て事を、イヤー!!!」
「もう、止められねえや、最後まで入れるぞ」
こんな会話が、ハッキリと残されていた。だが、しかしここで、一番重要な、最初の彼女からの猛烈な哀願部分は、全く録音されていなかったのである。
「ハイハイ、強制性交罪(当時)の成立ね。
あっと、この機械の音声はFM電波で別の機器に録音されているのよ。例えこの私を殺しても、絶対に消せないのよ。分かった?」
だが、このように、録音された音声をFM電波で飛ばすデジタルボイスレコーダーは、スパイ映画ぐらいしか出てこないのだが、完全に動揺した警官は、そこまで頭が回らなかったのだ。
「しまった。ハメたつもりがハメられたのか!」
「そう、これからは、二人で共同作業をするのよ」
この小説の題名は、あの推理小説界の巨匠、「横溝正史」先生の「悪魔が来たりて笛を吹く」を真似ています。
しかし、大先生には、遠く及ばないのが、作者としてもとても残念です。
しかし、「札幌のすすきのの事件」に衝撃を受け、急遽書きました。
札幌の事件が、今後、どのような推移をたどって行くのかを、注視しています。
この話は、全て私の空想で有る事を、ここに明記しておきます。
色々と出て来る人物名も、全て、架空です。
お間違え無いように、お願い致します。