1章 ナイトメア・トリガー
時が経つのは早いものだ。そう物思いにふけって外の景色を眺める。
北秀中高等学校生徒会執行部第1会議室。
多くの椅子が綺麗に並べられ、壁には大型モニターが設置されている。
俺はこの景色が好きでもあり、嫌いでもある。それには理由がある。
それは俺がこの部屋に呼び出され、外の景色や内装を見る度に、無理難題や不都合な事ーいや、事件と言った方が正しいのかもしれない。そのためこの風景を見るとその記憶がフラッシュバックしてくるのだ。
この状態に対しいじめ認定はされないのであろうか。
.....そんなどうでもいいことを考えていた俺に甲高い耳障りな音が耳に飛び込んできた。
「急に呼び出してしまい申し訳ない。今後の執行部のメンバーに話しておきたいことがあってね」
声の主は小柄な男性だ。
でもそんな見た目に反して甲高い不愉快な声を出しているのを聞いていると眠気も冷めてしまう。
だがそんな目覚ましは俺に味方している。この岩本 護特別活動部部長の話にはリスクが山ほどあるのだ。
俺が凝視する中、岩本部長は続ける。
「実は、執行部人員を募集しよう思っていまして....」
「不要、だと思います」
岩本部長の話が終わる前に言い放つ。
岩本部長はあからさまに嫌な顔をした。
止めることはここでしかできない。
しかし止める理由もないのだ。現在の生徒会執行部はたったの2名しかこの学年にはいないのだ。そのため副生徒会長と副書記長はいるが副議長などが不在なのだ。そのため、一般的には人員補充が必要なのだが、今回は不要だ。というのも人員を補充すると言っても岩本部長に従順に従うものたちの集まりになり、俺の計画が吹き飛ぶからだ。計画はさておき、岩本部長はまじまじと見つめ、
「人員補充に反対の理由を聞かせて欲しいですね。」
「最近は落ち着いていますし、機関誌についても俺がスカウトします。それで問題はないと思ってます。」
言い終えて、俺は岩本部長をちろりと見る。
岩本部長は腕を組んで考える。
「しかし、必要なのに変わりはない為、募集はかけます」
出た。岩本部長の強制執行。それに山本 権太生徒会執行部副生徒会長が援護射撃。
「メンバーは多ければ多いほどいい。募集をしない理由が俺には見つからないな。」
フンっ。俺は心の中で笑う。お前は学年最下位の残念ピープルだろ。但し声には出さない。
しかしここまで圧倒されたら勝ち目はない。今回も諦めて引き下がる。
「そこまで言うなら仕方ありません。前のものは撤回します。」
そういうと岩本部長がほくそ笑んだ。この判断が今後の俺を苦しめるなんて微塵も思っていなかった....