ヘンリーに突貫します。
ヘンリーお兄様登場です。
ある日の昼下がり、午後から暇になった私はヘンリーお兄様がいるコンサバトリーへと向かった。
この部屋は、壁から天井にかけて見事なガラス張りの部屋になっていて庭を一望できるのだが、ガラスに魔法が施されていて、入ってくる日差しを調節してくれる上に、外から中の様子は見えないという超優れものなのである。
特に何もない日は大体ここにいることが多い。
本を読んでいることが多く、差し込む日差しの中優雅にお茶を飲みながら本を読む姿は、一枚の絵の様に美しい。
ヘンリーお兄様は大変な読書家で、我が家の図書室は王立図書館並みに蔵書が多い。
昔はさほど無かったそうだが、ヘンリーお兄様が本を集めだしてから我が家の図書室は昔の3倍の大きさに増築したそうだ。
私は図書室全ての本を読み切る自信はないが。
相変わらず美しいなぁとうっすら開けたドアの隙間から覗いて呆けていると、視線に気づいたのかヘンリーお兄様がふと視線を本から外し、顔を上げた。
「レティ、どうしたんだい?そんなところに居ないで入っておいで。」
「!…はい。失礼します。」
夢から醒めた様な感覚に少し驚きながら部屋に入った。
私と同じプラチナブロンドの少し長めの髪を青いリボンで緩く結い、薄いブルーを基調にし服を着て、椅子にゆったりと座りながら私に手招きをする。
「レティの分のお茶とお菓子を用意させよう。食べたいものはあるかい?」
「いいえ。お茶だけで結構ですわ。お昼をしっかりと食べたせいで今お腹いっぱいで。」
「そうか。じゃあ、こちらへお座り。」
クスクス笑いながら向かいの椅子を進められた。
「ヘンリーお兄様、何がそんなに可笑しいんです?」
座ってなおクスクスにこにこ笑っているヘンリーお兄様に訝しげな視線を送る。
「いや、すまない。以前のレティはノックもしなければ、お伺いを立てることもなく、ここ1〜2年かは僕に近づこうともしなかったのが嘘の様だと思ってね。」
「それは、私が何をしても許される立場だと勘違いして、それが当たり前だと思っていた中で、唯一ヘンリーお兄様だけは注意して下さっていたからです。その注意も、以前の私はただただ煩わしく思っていただけですから…。」
すいません。と小さくなりながら謝る。
「責めているわけじゃないから謝らなくても良いよ。きっかけはよく分からないけど気付いてくれた事が僕は嬉しいんだ。それに、また昔のようにこうやってゆっくりレティと話が出来ることがもっと嬉しい。」
今目の前におわすは天使かな?
花が綻ぶような、ふわっと咲く笑顔は世界遺産に認定されるべきだと思う。
脳内ヤッフー!で踊り狂っていても、顔にはおくびにも出さず私もニコッと笑い返した。
運ばれてきたお茶に口をつけて、向かいのヘンリーお兄様に目を向けた。
「実はヘンリーお兄様にお願いしたい事がありまして…。」
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
更新は不定期ですが、なるべく早く進めていきたいと思います。