ニクラス・マルーンとの遭遇
少し時間が前後します。
レオナルドとの婚約が内定した日から二日ほど前、実はもう一つ頭の痛い出来事が持ち上がっていた。
我が家にニクラス・マルーン公爵令息がやって来たのである。
まぁ、理由は言わずもがな『お茶会』でニクラスを巡ってのケンカの仲裁を私がやったからなのだが…。
彼と我が家の応接間で対峙したとき、情報が蘇ってきて奇声を上げなかった事は誉めてもらいたい。
『ニクラス・マルーン』も攻略対象だ。
彼のルートでは私の出番はほぼ無い。ヒロインがいじめられているシーンでちょっと出てくるだけ。ライバルとなる令嬢は彼の従姉妹のナターリャ・ヘンティヒ侯爵令嬢。勿論ケンカをしていた従姉妹ちゃんだ。
ニクラスは赤みがかった銀髪で瞳は真紅。ゲームでは、俺様気質の兄貴肌だった。第二の皇室としてのプライドと実力を持っている。
ナターリャとの関係も穏やかなもので、妹の様に可愛がっていた。
学園である日、レティシア一派にいじめられているヒロインをたまたま見つけ、「公爵令嬢として恥ずかしくないのか!!」の一言で一蹴し、ヒロインを助ける所から物語は展開していく。
何様俺様ニクラス様を地でいく彼は、正義感が強いが故にヒロインを助けただけで、最初はヒロインに対して何の感情も持っていない。
それが、今まで自分に従順な女性しか知らなかったニクラスは、彼の目を真っ直ぐ見つめて対等であろうとするヒロインに対し興味を持ち始め、その内無自覚でヒロインに惚れてしまうのだ。
そして、ヒロインが別の男子と仲良く喋っている現場に遭遇した彼はやっと自分の気持ちを自覚するのだが、そこから一転攻めに転じガンガン押してくるようになる。ここまでくればハッピーエンド確定。
ちなみにライバルのナターリャは淑女の鑑としてヒロインに立ちはだかる。
ただ面白いのは、バッドエンドを迎えた場合でもニクラスとナターリャは結婚しない。ナターリャの方から婚約破棄を言い渡す流れとなる。心からニクラスを愛していたのはナターリャの方なのにも関わらず、浮気をしたニクラスを捨てることが出来る本当の意味で強い女性なのだ。
トゥルーエンドでは、ニクラスは見事なメンヘラを発動させる。厳しく強く賢くあれと育てられたニクラスは、本当は精神的に弱くただの寂しがり屋で承認欲求が非常に強い男の子だったのだ。
ただ、彼を取り巻く環境がそれを許してくれず、強い自分になるためには俺様になるしか無かったと言う事が浮かび上がってくる。
ヒロインの愛を確かめたいがために、自傷行為に走り武術訓練の時はワザと怪我をする。それを甲斐甲斐しく治療しニクラスの全てを受け入れようとするヒロインなのだが、そこからさらに束縛が酷くなり最後はメンヘラ拗らせて心中エンド。
割と攻略しやすくテンプレ展開満載のキャラだっただけに、鬱展開は結構心を抉られた覚えがある。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。




