レオナルドが突撃してきた。
お茶会から一週間後、朝仕事に行ったと思ったお父様が即帰ってきた。
何事かとお母様と出迎えに来てみれば、疲れた顔のお父様の背後に、どこかで見たよぉーな男の子の姿があった。
「これはこれは!レオナルド殿下ようこそお越しくださいました。先触れを頂ければキチンとしたおもてなしが出来ましたのに。」
お母様が嫌味を含めて挨拶をする。
「いえ、アルバイン公爵に無理を言って連れてきて頂きましたので、気を遣っていただかなくても大丈夫ですよ。」
相変わらず無表情でお母様の嫌味をサラッとかわしてしまう。本当にこいつ8歳なのかな。
「本日レオナルド殿下がお越しになったのは、レティシアを婚約者としたいということで挨拶に来られたんだ。」
疲れきった顔と声でお父様が爆弾を投下した。
「「「「ええ!?」」」」
後から追いついてきたお兄様達も一緒に驚いたのである。
レオナルドに一緒に付いてきた陛下の側近だと言う人と、両親は話が有るとかで応接室に行ってしまった。
残された私達兄弟とレオナルド。ヘンリーお兄様は笑顔が黒いし、ダニエルお兄様は敵意を隠そうともしない。
レオナルドはそんな2人など眼中に無いとばかりに私の両手なんぞ掴んでやがる。
「皇居の方で、父から正式にアルバイン公爵に僕がレティシアの婚約者となると挨拶はさせて頂きました。改めて、レティシア、僕の婚約者になってください。」
冷や汗が伝う。
「え?お茶会でお断りしましたよね…?」
「さあ?僕は覚えていませんが。」
「断ったとレティは言っていますが、覚えておいででない?一体どう言うことでしょう?」
ヘンリーお兄様が助けに私達の間に入ってくださる。
「僕はお茶会で正式に婚約者になってくれるよう言った覚えは有りませんし、言った覚えの無いものに断わるも何も有りませんよね。」
身体中の血が足元に下がったように感じた。
確かにそうだ。あの時レオナルドは『婚約者』の言葉を言い終わらない内に私は断ったのだから、そう言われてしまえばおしまいである。
ましてや、あの時は近くに誰もいなかったから証言してくれる人もいない。
更に、陛下から正式にお父様に話が言ったのであれば、これを覆す事は誰にもできない。
詰んだ。完全に詰んでしまった。何のためにお茶会で無愛想にしていたと思ってるんだ!私の努力かーえーせー!!
「これから宜しくお願いしますね、レティシア。」
またほんの少しだけ、レオナルドが笑った。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
 




