閑話 レオナルド視点 3
レオナルド視点ここまでです。
全員との挨拶が終わる頃には、いい加減疲れが出てきた。でも、とりあえずアルバインの令嬢に一言何か言わないと悔しくて、彼女と話をしようと思った矢先。
ガッチャン!!という音が響いた。この広間、構造上音がよく反響するのである。
急いで音の方に行ってみると、なんと汚れたドレスで睨み合いをしているご令嬢の間に、あのアルバインの令嬢がいた。
何事かと思ったが、彼女は喧嘩の仲裁をしていたのだ。他の子供達は固まってしまってただ成り行きを見守っているだけだった。
優雅に挨拶をしたと思ったら、流れる様に2人から話を聞く姿も凛としていた。
そして最後2人に
「お二人共、ニクラス様の事が大好きでいらっしゃるのね。ですが、本日はレオナルド殿下とアダム殿下がご用意してくださったお茶会です。それに水を差す様な行いは、レオナルド殿下及びアダム殿下の将来の臣下としてあるまじき行為です。さ、まだお茶会は半分を過ぎたくらいです。ドレスの予備は有るでしょうから控え室で着替えてきて下さい。」
あまつさえニコニコと2人の頭を撫でている。何故かその姿に惹かれる自分がいた。
何故か焦りに似た感覚を覚え、無理やり彼女の手を取りエスコートして、観葉植物で目隠しさせたテーブルへと誘った。
彼女が僕を見る瞳には好意とは程遠いモノが見て取れた事に疑問を抱いた。正式に彼女に会うのは初めてだし、話した事も今が初めて。
それに加え今回の『お茶会』の意図もわかっている様だったがどこ吹く風、さりとて好きな人がいる訳でもなさそう。
何故こんなにも胸がモヤモヤぐじぐじするのか不思議で仕方がなかった。
手付かずのケーキを思い出して彼女にすすめると、遠慮なく食べ始めた。そのまま紅茶を飲みながら彼女を観察すると、彼女はコロコロと表情が変わる。
最初は少し警戒して顔つきが固かった様だが、余程美味しいのか顔を綻ばせ「美味しい〜」と呟いている。
純粋に可愛いなと思った。その顔を見ていたらさっきまの不快感がいつの間にか消えている事に気付きもしなかった。
「笑ってる。」
彼女の呟きで現実に引き戻され、自分が笑っていた事に気がつかなかった。そんなに分かりやすかったのだろうか?
笑おうとすると顔が強張ると話すと
「表情は時に武器になりますが、時には弱点にもなります。私は逆に表情がコロコロと変わりやすい様で、お母様から引き締める様よく言われてしまいます。作り笑いも確かに大切ですが、今は無理になさらずとも良いと思います。心が動けば自然と表情も豊かになっていきますよ。」
作り笑いじゃ無い彼女の笑顔にドキッとした。その時、モノクロの世界で彼女だけが鮮やかな色に染められた。
キラキラと輝くプラチナブロンドの髪と、吸い込まれそうな深い青い瞳は女神のようだ。僕は初めて『欲しい』と思える人に出会った。
周りは相変わらずのモノクロなのに、彼女だけが色鮮やかに映る。美しいと思った。
僕は漸く自分の気持ちに気づき、「レティシア」と呼ぶ事に了承を得た流れのまま、婚約者になってほしいとお願いしたら、速攻で断られて逃げられた。
僕の心を奪って行ったのだ、絶対に僕のものにする!
レティシアの後ろ姿を見ながら、僕は硬く決意した。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます




