やってきてしまった『皇室主催のお茶会』と言う名の皇太子の婚活。10
長かった『お茶会』編これで終了です。
「笑ってる。」
思わず口をついて出てしまった。
レオナルドは弾かれたようにハッとして、目をぱちくりさせている。
「笑って…いましたか?」
自分でも気づいていなかったようで、少し呆然としながら、口元から顎の辺りを撫でる。
「僕は、意識的に顔を作れないと言うか、笑おうとすると逆に顔が強張ってしまうんです。それに、最近は感情の起伏もあまり無い様な感じだったのに…。」
最後の方はほとんど独り言のようだ。
その言葉に少し痛ましさを感じた。
「表情は時に武器になりますが、時には弱点にもなります。私は逆に表情がコロコロと変わりやすい様で、お母様から引き締める様よく言われてしまいます。作り笑いも確かに大切ですが、今は無理になさらずとも良いと思います。心が動けば自然と表情も豊かになっていきますよ。」
だから焦らなくて良いんだよ。将来ヒロインちゃんが出てくれば自ずと心は動く様になるから。と内心付け加えた。
「君も作り笑いより自然な笑顔方が素敵ですね。」
営業スマイルはバレていたか。
「お褒めいただき恐悦至極でございます。」
まさか褒められると思っていなかったので、ついつい茶化してしまった。
しばらく、他愛のない会話が続き、レオナルドの表情も最初と比べて、ほんのちょっと微妙に動くようになって来た頃。
「お願いが有るのですが、聞いていただけますか?」
「レオナルド殿下からのお願いを断るわけがございませんわ。ただ、私ができる範囲ですが。」
「ありがとうございます。では、これから君の事を『レティシア』と呼んでも構いませんか?」
「へ?え、ええ。まぁ、良いですよ?」
もっと違うモノを想像していたので、一瞬素が出てしまった。
「良かった。では、もう一つ。僕の婚約者にーーー」
「丁重にお断りさせていただきます!」
食い気味で返答し、ガバッと頭を下げた。
そのまま固まるレオナルド。
ちょうどそのタイミングで、アダム殿下の婚約発表がされると言う話が入って来たので
「レオナルド殿下。とても楽しいひと時をありがとうございました。私、これで失礼させていただきます。」
早口でそれだけ告げると、足早にダニエルお兄様の元まで逃げた。
「ダニエルお兄様、お待たせ致しました。」
「僕もすぐに迎えに行きたかったけど、他の令息・令嬢に捕まってしまって。そのあとも、テーブルに行こうとしてもすぐに邪魔が入ってしまって…レオナルド殿下に変な事言われなかった?」
気遣わしげに聞いてくるが、余計な心配をさせるのも気が引けるし、婚約者の件は今しっかりお断りしたのでいちいち報告しなくても大丈夫だろうと思い、伏せておくことにした。
「大丈夫でしたよ。ご心配をおかけしました。」
「なら良かった。」
その後、アダム殿下の婚約者が発表され、時間も来たのでその流れでお茶会はお開きとなった。
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。




