やってきてしまった『皇室主催のお茶会』と言う名の皇太子の婚活。9
「お話とは、何でしょうか?」
恐る恐る伺ってみる、私何か気に触る事を致しましたでしょうか?
「いいえ、ただ少し君に興味がわいただけでして。」
「興味…ですか?」
「はい。あんな空気の中でどちらかを一方的に責めるでもなく、更に場を悪くするでも無く、全て上手に丸く収めてしまった事が、純粋に素晴らしいと思ったんです。」
無表情の癖によく喋る。
「まあ!ふふ。ありがとうございます。」
思わず笑ってしまった。仲裁云々は中身がオバハンだから為せる技なのだから。
レオナルドの目がまた僅かに見開かれる。
「君は…その……………、いや、今日のお茶会の主旨は知っているんですよね?」
「はい。一応父から聞かされておりますが?」
無表情なので、何を考えているのか良く分からないが、なんとなく困惑している様に見てとれた。
「変な質問をしてしまうことを許してくれますか?君には婚約者はいないと聞いています。ですが、誰か好きな人がいるんですか?」
「………はい?」
意味が分からない。
「その顔だと、好きな人が居るような雰囲気でも無さそうですね…。」
ぶつぶつなにやら言っている。
「レオナルド殿下、如何なさいました?」
「ああ、紅茶が冷めてしまいますね。ケーキもどうぞ?」
「はあ、ありがとうございます…。」
にらめっこするのもおかしな話だし、どうぞと言われたので、遠慮なくいただくことにした。
ーーーーーもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ、ごっくん!
はぁ~、苺のケーキ美味しい~!洋酒の香りが堪らなく良い!!
あ!このチョコレートケーキは中にナッツが入ってる~。
生クリームたっぷりのプリンは卵の濃厚さが堪らない~。カラメルの苦味がほどよいアクセント!
ん~!このマカロンさくさくで中のクリームの甘さもちょうど良い。
……………。
…………………。
………………………。
………………………………はい。現実逃避してます。
だってさぁ!目の前でレオナルドが無表情のまま、じぃ~~~っと人のことを見つめて、一言も話さないとか何の拷問ですか。メジェド様ですか!?
ちらりとレオナルドの顔を見て、おかしな事に気が付いた。あんなに無表情なレオナルドの表情筋が動いている!
少し、ほんの少しの違いなのだが、ゲームをしていた私なら分かる。ゲーム終盤でヒロインと想いが通じあったとき、ヒロインに微笑むスチルが有るのだけど、まさにその顔!その顔の幼いバージョン!!
「笑ってる。」
思わず口をついて出てしまった。
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。




