やってきてしまった『皇室主催のお茶会』と言う名の皇太子の婚活。2
ノリノリで書いていたらいつもより長くなりました。
しばし固まる事数秒、余程キョトンとした顔をしていたのか、皆が私の顔を見てクスクス笑い出した。
「そんなビックリした顔をしなくても大丈夫だよ。高々お茶会だ、皇太子の婚約者探しに関しては、確かに身分も容姿も年齢も1番可能性が高いのはレティに違いない。でも、他の公爵家や侯爵家、それに伯爵家と辺境伯家にもお嬢さんはいらっしゃるし、先帝が男爵家から皇后を選んだお陰で、爵位のある家の娘であれば誰でも結婚できる様になったしね。」
お父様はウインクしながら悪戯っぽく笑った。
「そうですね、話によればすったもんだの末、元いた婚約者のご令嬢を捨ててまで男爵家のお嬢さんを迎え入れたとか。最初こそ淑女の矜恃で頑張っていたらしいですが、まぁ、そのご令嬢も実は他に好きな人が居て結局その相手と結婚したんですよね。周りがギャーギャー騒いで大変だったってオチ付きまでが公式らしいですけど。」
「そんな、常識外れな上に人の努力や気持ちを簡単に踏みにじる人間の血が混ざっている男がレティに近づく事が許せない。」
ヘンリーお兄様は笑っているしダニエルお兄様は眉間にシワが寄っている。偉く対照的な表情だ。
「ヘンリーお兄様お詳しいんですね?ダニエルお兄様は不敬にあたるので口は慎みましょうね。」
ダニエルお兄様、叱られた仔犬みたいな顔やめて下さい!可愛いじゃないか!!
「詳しいも何も、その婚約者のご令嬢はお祖母様じゃないか。」
「へ?そうなんですか!?」
持っていたフォークを取り落としそうになる。
お祖母様ってあれか?あのジェニーちゃん人形をそのまま老けさした様な、現役でモデル出来そうなあのお祖母様か?
お母様は一見細くて儚げだが、出るとこどどんと出てて、くびれる所キュッとくびれたギャップ萌えの悩殺ボディーなのに対し、お祖母様は八頭身通り越して九頭身のスーパーモデル真っ青のスレンダーボディーをしていらっしゃる。
歳だってそれなりに重ねているはずなのにシミシワ一つ無い上に、本人は至って現場主義の人なので、お祖父様とあっちゃこっちゃ飛び回っていらっしゃる。
本来であれば、お祖父様とお祖母様は領地でのんびり暮らしている予定だったのだが、お祖母様の並外れた好奇心と行動力で領地を空けることなんてしばしば。
お祖父様も嬉々として一緒にくっついて行っちゃうので、2人の顔をまともに見たのはいつだったか覚えていない。
お二人とも超がつく程アクティブなもんだから見た目の若い事!お父様とお母様も見た目が若いから、本当はお祖父様とお祖母様が父と母で、お父様とお母様は少し歳の離れた兄弟です!とか言われても違和感が無い。
そんでもってとにかく2人はラブラブ!こちらが砂糖を吐くぐらいラブラブなのだ。
いつでもどんな時でも愛するお祖母様第一主義のお祖父様と、そんなお祖父様に絶大な信頼と愛を向けていらっしゃるお祖母様。
大恋愛の末2人は結ばれたのだと、私が幼い頃子守唄がわりにお祖母様が話して聞かせて下さった。
だからまさかお祖母様が元は先帝の婚約者だったなんて一欠片も思ってなかったぞ!
「私、今初めて知りました。」
「でもレティも聞かされていたんじゃないかい?『侯爵令嬢マルガレーテの数奇な恋愛運命』。」
「なんですかそれ?」
なんじゃその小説家志したばっかりの中学女子的なネーミングは。
「なんですかそれ?って…お祖母様の昔話じゃないか。ちっちゃい頃よく聞いただろう。好きでもないクズ野郎に男爵家の娘を当てがって、子供の頃からずーっと好きだった相手と結婚してめでたしめでたし。覚えてない?」
笑い過ぎですヘンリーお兄様。
「そう言えば、ちっちゃい時お祖母様に「愛は権力に屈しては駄目。どんなに辛くても運命だと諦めずに、譲れないならどんな事をしても自分の気持ちに正直になりなさい。クズは捨てれば良いだけよ。」と言われた覚えがあります。」
「お母さんは孫娘に何を言うかな。」
あら、お父様頭抱えちゃった。
「おほん!皆、話が脱線しすぎです!お茶会は1ヶ月後ですよ。婚約者に選んで頂く頂かない関係無しにドレスを新調しないといけましんし、それに合わせて髪飾りとアクセサリーと靴を揃えないと。レティ、明日から準備に取りかかりますから、そのつもりでお願いね。」
お母様のおっとりしつつもハッキリとした言い様に一同顔を見合わせたのだった。
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。




