表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集10 (451話~最新話)

来た客

作者: 蹴沢缶九郎

客足もまばらとなった平日の昼過ぎのコンビニエンスストア。スーツ姿の青年は雑誌コーナーで立ち読みをし、子連れの主婦は幼い我が子とお菓子を選んでいる。

レジを担当しているバイト学生の男子は、何とはなしに店内のそんな光景を眺めていた。

そこへ、慌てた様子で一人の中年男性が駆け込んできて言った。


「すいません、トイレを貸してください!!」


余程我慢も限界だったのだろう。バイト学生の男子は、


「トイレは右奥です」


と、トイレの場所を指し示すと、中年男性はドタドタと足音を立てながらトイレに走っていった。その後ろ姿をバイト学生は見ていたが、お菓子を持った小さな子が母親とレジ前にいる事に気付き、自身の仕事に戻った。


それからしばらくの時間が経ち、バックヤードから出てきた店長がバイト学生に聞いた。


「やあ、お疲れさん。何か変わった事はなかったかい?」


「はい、とくに変わった事は…」


そこまでを言いかけて、バイト学生はふと、先ほどトイレに入っていった中年男性の事を思い出した。トイレがあまりにも長いのだ。


「店長、さっきトイレを借りにきた中年の男性なんですが、中々出てこないんです。もう三十分は入っているかもしれないなあ」


「それは長いな。心配だ。ひょっとしたら、中で何かあったのかもしれない。一応声を掛けてみよう」


店長は奥からトイレの鍵を取ってくると、二人でトイレに向かった。

店長はトイレの前に立つと、軽くノックをして、中の中年男性に尋ねた。


「すいません、お客さん、大丈夫ですか?」


…。


中からの返答はない。今度は少し強めにノックをしながら言った。


「もしもし、大丈夫ですか? お客さん、開けますよ? いいですか?」


…。


やはり返答はなく、意を決した店長は、用意したトイレの鍵を使い、ドアを開けた。

飛び込んできたトイレ内の光景に、バイト学生は驚きの声を上げた。


「これはどういう事だ!? ぼ、僕、警察に電話してきます!!」


バイト学生は電話をする為、バックヤードに走っていった。

店長は声にこそ出さなかったが、便器から溢れた床一面の臓器と、骨と皮だけになり、フニャフニャの状態で便器に覆い被さっている中年男性を見て、


(きっと彼は出し過ぎたんだろう…)


と思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 新年おめでとうございます^^) コンビニのトイレは確かに右奥にあったですね。 思うに中年おじさんは、人の体をしたエイリアンだったのかもww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ