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4話 町案内②

「へぇ、ここがゆいの行きつけの公園か。めちゃくちゃ広そうだな。」


「すっごく広いよー? なんでもなんでも、東京ドーム10個分はあるみたいだよ? そうそう、ゆい的には砂場がお気に入りなんだ。だから新人さんも砂場で遊ぼう?」

 

 そう言ってゆいは俺を砂場まで引っ張っていく。こんな町中に東京ドーム10個分っておかしいだろ! 絶対迷子続出するだろ。


 しばらく歩くとゆいがここが砂場だよと俺に紹介してくれる。

すげえ、これ本当に公園の砂場なのかよ……。俺の目の前には100m四方くらいのそれはそれは大きな砂場があった。ナニコレ、ちょっと広すぎじゃない?


「ふふふー、驚いたでしょう? ここの公園はねー、製作者達がお金に糸目を付けずに自分達の理想の公園を作ったんだってー。だからだから、この砂場も甲子園の土を土台として、その上に星の砂っていうのを敷き詰めてるんだって! なんだかあんまりよく分かんないけどすごいよねえ。」


「・・・・・・。」


 えー!?? 甲子園の土が砂場のただの土台!? ってか、砂の部分全部星の砂って色々ぶち壊しだろ!! 星の砂ってあれだよな? 砂浜とか行ってわざわざ探し出して見つけられたら幸運になれるとかなれないとかいう四葉のクローバー的存在だよな? それがここでは逆に星の砂しかないとか、色々とぶっ飛んでるな。




「よしよし、それじゃあ新人さん! ふたりでお題に沿ったものを作ってどっちがより上手く作れるかで勝負だよ!」


「ふっ、この無駄に豪華な砂場、俺が本気を出すに相応しいフィールドじゃないか。よし分かった。その勝負受けて立とう!」


「新人さんノリノリだねー。 うんうん、ゆいもこの砂場を気に入ってくれたようでなんだかうれしいよ。

 それじゃあお題を発表するよー。じゃらじゃらじゃらじゃら、じゃじゃん!お題は「お城」! 制限時間は2時間だよ。それじゃあスタート!」





2時間後



「よっし、新人さん! ゆいは完成したよー?」


「俺もちょうど完成だ!! どれどれ? ゆいのお城はどんな感じだ?」


 俺はゆい側の陣地に行きお城を覗き込む。そこにあったのは、ドームみたいな丸っこいのに何本か木の枝がささっているお城というかどちらかというとお子様ランチの旗が乗ったライスみたいな建築物だった。これがゆいが2時間掛けて作った城か……。


「な、なかなか前衛的な城じゃないか。こ、この枝?なんかいい味出してるなよな、うん。」


「そうでしょうそうでしょう? あのねあのね、この枝をさす角度にはすごく気を使ったんだー。全部さすのに1時間半以上使っちゃったよお。でもでもその分とぉーっても自信作だよ! 作品名はカリオ☆トロの城~木の枝を添えて~地中海風味』だよ! これはゆいが勝ちをもたっちゃったかもね!」


 木の枝に1時間半以上ってゆいほとんど木の枝さすだけに時間使っちゃってるじゃねえか! 作品名も無駄に長えし‼ どこがカリオス☆ロの城だよ!? ただのライスじゃねえか! 地中海風味ってのもどうなの!? これお城の作品名だよね? なに、味するのこの城。


「す、すげえな。うん。何にでも自信も持てるって言うのは良いことだぞ。

 ただ、俺の作品を見ずに勝利を確信するのはちょっと早計だな。見て見ろ俺の城を!」


 次に披露するのは精神年齢35歳の俺が2時間掛けて本気で作った江戸城だ。城はスマホで外観を確認し、屋根の上のしゃちほこや堀など細部に渡るまで丁寧に作り上げた。

 ここまで全力で取り組むなんて子供相手に大人げないと思う者もいるだろう。しかしだ! 俺は遊びであるならばこそ全力で取り組む男だ。ゆいはこの敗北から多くを学びまた一つ大人になるだろう。


「どうだゆい! 俺の作品『リアル江戸城(砂)』は? なかなか良く出来てると自負してるぞ?」


「な、なんてことなの……! ゆいのお城に張り合うお城を作り上げて来るなんて!? この作り込みはとってもとってもすごくて賞賛に値するよ! それにそれにこの堀に流れてる水はどこから持ってきたの!? 池の場所はまだ教えてないし、新人さんは最初から最後までずっとここにいたのに!」


 え、これを見てもゆいはライスもどきと俺の江戸城が拮抗しているって言うのか? 思ったよりもなかなか図太い子だな。


「あ、あぁ、水か? これはな、俺の魔法だ! 魔力でちょちょいっとやった。ちゃんと石垣とかにも硬化の魔法を使ってあるんだぞ?」


「ま、魔法!? 新人さんが異世界から来たってのは聞いてたけどそんなこと出来るなんてゆいは聞いてないよ!?」


「まぁ、こっちに来てから使ってないからな。多分聖も知らないぞ。」


「それはずるいよお。 ゆいもゆいも魔法が使えたら『リアル江戸城(城)』よりも圧倒的にすごい空飛ぶカリ☆ストロの城を作れたのにー。」


「い、いやーどうだろうなあ。ゆいが魔法を使うのは難しいと思うし、空を飛ぶのはラピ☆タに任せておけばいいんじゃないかな?」


 どう考えても今のゆいの城のクオリティから俺の城を超す城を作れるイメージが湧かないのだが、ゆいもなかなか納得してくれそうにない。


「うん、確かにいきなり魔法を使った俺も悪かった。でもな、魔法禁止なんてルールに無かっただろ? だから今回は両者の健闘を称えて引き分けってことでどうだ?」


「うーん、引き分けー? たしかにたしかにー、新人さんも素人にしてはよく頑張ってたし、そうしてあげてもいいかなあ。」


 と言うゆいだがまだちょっと納得いっていないみたいだ。そんなにあのライスもどきに自信があったのかよ。仕方ない。ちょっとサービスしてやるか。


「よし、それじゃすごい作品を見せてくれたゆいにお礼に俺の魔法を披露してやる!」


 魔法を使うと直ぐに腹が減るからあんまり使いたくないけどまあたまにはいいだろう。

 俺は浮遊魔法で身体を浮かし、水魔法で作った水球を両手と両足でそれぞれ10個ずつジャグリングして見せる。異世界にいた頃良くやっていた宴会芸の一つだ。この技はかなり高難易度でとてつもなく大きな魔力とそれを完璧に制御する技術、そして高い集中力が要求される。ちなみにジャグリングしているように見えるが、実際は水球の動きを魔力を使って自分で操作しそう見せかけているだけである。


「おおおおお! すごい! すごいよ新人さん! どうなってるのそれ!」


「ハハハハハ! まだまだこんなものじゃないぞ? もっとすごいのを見せてやる!!」







 日も傾き始め、会社帰りのサラリーマンの姿も多く見え始めた時間、俺達は教団本部に向かって歩いていた。どうやらゆいは俺の魔法を使った芸に興奮して大人な下着を売っているお店に行くのは忘れてくれたらしい。ホントに良かった……。


「いやー、すごかったね新人さん! 炎のドラゴンと水のドラゴンのドラゴン対決はゆいもついつい熱くなっちゃったよっ! それにしても魔法ってすごいんだねー。」


「そうだな、魔法はこっちの世界には無い物だからゆいが想像も付かないようなこともいっぱいできるんだ。またいつか見せてやるよ。」


「ホント!? 楽しみだな~。」


「それより、こっちの道教団本部に向かってるけど良いのか? 家に帰るんなら送っていくぞ?」


「大丈夫大丈夫。ゆいも教団本部に住んでいるからねー。だからこの道で問題ないよ。」


「え、そうだったのか? 今まで気付かなかったな。」


「教団員にも何人かいるんだよ? 色んな事情があって家に帰れない人とか、身寄りがない人とかが本部で生活してるんだー。実は実は、お姉ちゃんもその内の一人なんだよ?」


「へー、あいつもねー。そんなこと全く言ってなかったけどな。」


「うん、お姉ちゃんはあんまり自分の事を話さないからね。

 それにしても今日は遊んでくれてありがとう! とってもとっても楽しかったよ。同じところに住んでいるんだし、これからも一緒に遊んでくれたらうれしいな。」


「当初の目的はこの辺を案内してくれるっていう話だった気がするけどな(笑) もちろん、暇な時ならいつでも遊んでやるぞ。あの巨大な公園の事とかもっと教えて欲しいしな。」


「まっかせて~。 それじゃあ新人さん…..、ううん、いつまでも新人さんって呼ぶのはおかしいよね? じゃぁキーンさん? サキさんってのは教団員的にNGだし。うーんなんかしっくりこないなー。・・・・・・お兄ちゃん。うんこれだ! 

これからもゆいと仲良くしてね! お兄ちゃん!!」


・・・・・・・・・・・・どうやら俺に妹が出来てしまったらしい。


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