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ちょっとだけオチのある短編集(ここを押したら短編集一覧に飛びます)

死者誤入

作者: よっきゃ

 ある日、マサオ氏の社内で幽霊が出るとの噂が出た。



 警備員が見たらしいのだ。

 青白い顔の幽霊を。



 この会社はかつてブラック企業であり、過労死した人がいたらしい。だが現在は業務体制も改善しホワイト企業へと向かっている途中。そんななか、ブラック時代の幽霊が誤って会社に戻ってきたかもしれないというのだ。




 幽霊。

 おばけ。



 そんなのいるわけない。

 絶対にいない。



 マサオ氏はそう思っていた。



 そんな幽霊に今のホワイトになろうとしてる会社を穢されてたまるか。

 なんなら、見つけ出して除霊してもいいくらいだ。


 よし、そうと決まれば今日にでも深夜に一人張り込みをしよう。



 マサオ氏は必死に仕事をする合間に、上司に今晩社内で泊まることを相談した。


「き、君が幽霊を確認するだって? 家は大丈夫なのかい?」


「家のことは妻に任せています。心配無用です」


「そうか。しかしなあ」


 上司は初めは困惑したものの、幽霊の正体を掴むという冒険心と興味もあり、結局本日限りで許可してくれた。



「ありがとうございます。必ず見つけ出します」



 意気込みを伝えた。





 そして深夜。


 幽霊を探すという目的で会社に泊まり込んだマサオ氏。


 しかしいつまで経っても出てくる気配はない。


「なんだ。やっぱりただの噂か」


 全く出てこないので、暇を持て余したマサオ氏はいつものように自席へ座りパソコンの電源をつける。



 ぱちぱちとキーボードを叩いていく。



 マサオ氏は真面目な働き者だった。

 会社の為に必死で働き全力を尽くす立派な人物だった。


 しかし、マサオ氏は一言呟く。




「忙しい」



 これがマサオ氏の口癖だった。



 会社に肉体と精神を縛られ、心が死んでいたのだ。



 彼はブラック時代の名残だったのだ。



 そしてマサオ氏はぼそりと口にした。




「しかし、今日は隠れて潜入せずに堂々と会社に泊まれて良かった」



 そんな彼の顔は、暗闇の中でパソコンの光に当てられ、青白く光っていた。

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