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あの日の君を、僕は探す。―from world' an end―  作者: 岩尾浩
第●章[今日―終わりの日]
1/4

prologue-世界の端から-

もし、もしも・・・。

今は隣にいる大切な人が、一生会えなくなったら・・・。そんな世界、滅んでしまえと思うのだろうか。それとも新しく『大切な人』に似た人を作るのだろうか。

はたまた、その人を探し続けるのだろうか・・・。

『もしも』なんて・・・。


****


海沿いの道を歩く。意味も分からず。ただ、スマホのメモを見て来ただけだ。

歩き慣れた筈の中学時代の通学路も、学校の校舎も、どこか懐かしい様な、何かあった様な・・・。

しかしその景色のすべてが、『何か』を自分に見せつけようとしている。


――なんだ。


ただ、さっきからこの景色すべてが、自分を苦しめているようにも感じる。


――何故だ。


水面に映る月を見つめ、独り、呟いた。


****


「はぁー・・・今日で5年かぁ・・・。」


スマホの日記アプリを見て呟く。

私の記憶なかにあるのに、あなたの記憶なかにはない。


「いつか会いたいなー・・・」


なんてね、と付け足す。

会えっこない。会えっこないのに、どうして・・・。


――あなたは私の記憶なかから、消えてくれないの。


あの人と最後に話した言葉、それだけは忘れていない。否、忘れられない。


『つらくなったら、夜の空を見てみて』


なんで空なんて見ろって言ったんだっけ・・・。もう、思い出せないや。


――だって、もう五年も経ったんだもの。


そう自分に言い聞かせる。ただ、それしか思い出すことが出来ない。

きっと、私は怖いのかもしれない。思い出して、飛び出して言っても、もう・・・。

あー、だめだ。考えるな、私。とにかく上を見よう。上を見てもあの人と会える訳でもないけど。

満月に雲ひとつない夜空。あぁ、綺麗。夜空には満天の星空。しかし、しばらく星を見ていると、不意にそれらがにじんで消えた。月も滲んでいた。

あれ、と目に手を当ててみる。つぅ、としずくがこぼれ落ちた。


――どうして・・・。


声にもならないような、そのかすかな呟きと嗚咽おえつさえも、空に輝く満月は静かに見守った。




――でも、どうしてだろう、『誰か』に会いたい。


そよ、と風が吹いて髪を揺らす。水面の月も俺と同じで揺らぐ。


――『君』にはもう、会えっこないのに。


風でなびく部屋のカーテンを締めながら私は思う。




お前と、

一緒に居たかった。

君と、




気がつくと、月はさっきまでと同じように、静かに微笑んだように水面に浮かんでいる。

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