始まりの日
僕が学問科に入ってからかれこれ一年になるある程度友達もできたし今の生活には十分満足している。
しかし、残念なことに僕の知りたいことはなかなか資料がなく調べられないでいる。というより、この時代に欠かせない資料のはずなのに隠されている気がするくらい資料が少ない。50年間何も起こっていないし、何があるわけでもないと思うが。
「よお!ソラ、また図書館にひきこまってんのか。」
この目の前に立たれたら何も見えなくなりそうな大柄な男子は、学問科で武術を中心に学んでいる、斎藤康裕だ。僕の2倍はあろうかというその巨体から運動を得意としそこから武術に興味を持ったらしい。俺と同じく、今の世界では必要とされない知識を学んでるアホの一人だ。ちなみにソラというのが僕で本名は芦間空ロボットについてやってる機械オタクだ。
「ヤス、図書館なんだからもう少し静かにしなよ。」あの気の弱そうな男子は、三坂啓示必要ない知識をバカみたいに蓄えてる僕らの同類だ。生粋の化学オタクで薬なんかに関して異常な知識量を持っている。そんなんでイニシャルとChemistryを掛けてケミなんて呼ばれている。
「まあこんなとこ使う変わりもんはほとんどいないだろうけどね。」
そう、ほとんどの知識が電子化したい今こんな紙媒体の図書館など使う方が珍しい。
「たしかにこんなとこ使ってんの君と僕あと一人くらいしか知らないよね。」
ミケが言った。
「たしかにここ使ってんのは僕らとあの気の強い女子だけだわなぁ。気が強くてここで昔の本ばっか読んでるから他の女子と話してるのも見たことなし、学問科といえど一人も喋るやつがいない奴はあいつくらいしか知ら、」
ミケがあわてた顔をして小声で後ろ後ろと言っている。あー、王道のパターンか。
「あら、それは私のことかしら?」
こいつは、僕と犬猿の仲にある難波志保なぜこんな仲が悪いかは後からいうとして、この数学バカはなぜかいつもとてつもなく古い文献ばかり見ている。
「逆にあなた以外に誰がいるというのですか?」
「あなたと私が知っている女子は私くらいかと思っていたけれど、万に1つでも、あなたが他の女子を知っていたら決めつけるのは申し訳ないと思って。」
知ってはいたが相変わらず気に入らねえ。
「ピーンポーンパーンポーン後5分で図書館が閉館します。帰宅の準備を始めてください。」
聞いての通り閉館5分前になると鳴り出す放送が流れた。
「まあいいわ、もう閉館だし私は帰るとするわ。」
あの性格じゃなきゃ顔はいいから人気だと思うんだがな。
「俺らもそろそろ帰るか!」
ヤスがやはりでかい声で言った。
「どっかで食べてく?」
僕がそういうと、ヤスが
「ラーメン行かね?」
ヤスのいう店は大体うまいので、俺もケミも賛成だった。
「どこの店なんだ?」
僕が聞くと、
「センター街の裏道にある店なんだがその店結構うまいんだよ。」
「じゃあ行くか。」
電車に乗ってセンター街に行くと、大型空中掲示板が出ており人だかりができていた。
「なんだこれ?」
こんなものは昨日はなかった。
白い光が照射されていた掲示板に急に人の顔が現れた。そして、それはこの時代の人間ならば誰しもが知る人物であり、いるはずのない人物だった。
見ていただいた皆様ありがとうございます。
これからは、毎週出して行く予定なのでよければ見てください。