表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある作家の短編集  作者: 毎日居留守
10/27

 恋、それは大人も子どもも狂わせる甘い甘い劇薬。恋は愛という薬へと発展する可能性も秘めているが、それはほんの一握りだけである。大抵は全身を駆け巡って脳へと至り、考え方を、価値観を、行動を、周りの接し方を狂わせる。


 例えば、うちのクラスにはそこそこモテ男くんがいて、そいつを三人の女が取り合っている。まず、その三人の足の引っ張り合いがものすごく醜い。前はわりと仲がよかった三人だったのだが、ご覧の有り様である。それぞれが同じ男を思い合ってると分かった瞬間、そこから冷戦の開始だ。まずはおどおどしながら互いの様子を探り合い、だんだんとその目線が牽制に変わったかと思えば、今度は他の二人への嫌がらせへと発展していった。


 しかも、極め付けが男には他に好きな人がいるのだ。まだ男がその子に対して大胆なアクションを起こしていないから件の三人にはバレていないものの、それも時間の問題だろう。その時、彼女たちはどのような行動に出るのだろう。



 逆バージョンもある、男二人に女一人だ。男二人は一人の女を巡って常に何かしら張り合いを見せている。結構貢いでもいるようだ。


 女はそれを利用し、悦に浸っている。対立させようと仕向けているのだ。男二人の気持ちに気づかない振りをして時には相手のすごいところをワザと手放しに褒め、時に相手が買ってくれた貢物を自慢する。


 この関係はいったいいつ頃からなのかは知らない。気づいたのは男の二人の目が血走り始めてからだ。それまで周囲には気づかれないように対立させていたらしい。



 ああ、恋とは実に恐ろしい。人を化け物へと変化させてしまうのだ。最初は単に「気になる」から始まり、「ドキドキする」「こっち見てくれると嬉しい」「仲良くなりたい、お喋りしたい」「好き」「違う異性と話しているとなんとなく嫌だ」「こっちだけを見て欲しい」「ずっとそばに居たい」「あの人と××××をしてみたい」「自分だけのものにしたい」と、ドンドンドンドン深みへとハマっていく。


 どこかで相手が振り向いてくれるならそれでいい。そこで一度沈むのが止まるのだから。ハッキリと拒絶を示してくれるといい。例外もあるが、大抵はそれで諦める。


 一番ダメなのはハッキリしない態度を取ることである。これが一番まずい。キープのつもりかどうか分からないが、これをやってしまうと沈むのが止まらない。さながら、恋の奴隷にまで身を落としてしまう。



「と、言うのが僕の恋に対する持論なんだけど、君はどう思うかな?」



 隣にいる彼女に話しかけてみる。しかし返事はない。僕は無視されたのだと思い不機嫌になるが、そのぐらいのことはこれからのことを考えれば些細なことだと思い直し、顔を向ける。



「…ああ、なんだ寝ていたのか。通りで返事がないわけだよ。」



 どうやら僕の長ったらしい話で寝てしまったらしい。彼女の青白い頬をそっと撫でる。唇の紅がよく映えている。



「全く、ここで寝てしまうと風邪ひくよ?」



 僕は彼女の顔を抱きかかえる。ふと窓の外を見てみれば雪が静かに降っていた。まるで僕たちが永遠に結ばれたことを祝福してくれているようだ。



「あーあ、勿体ないな。今寝ているなんて実に勿体ないよ。」



彼女と一緒に布団に入り込む。それでもまだ少し寒かった。



「おやすみなさい、よい夢を。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ