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魔法:2 彼が彼女への恋心に気付いた理由(わけ)

今回は少ないです。

「拓海さん、此処に引っ越してくる事に異存は無いのですが、今月分の家賃がもったい無いので、今月一杯夜は彼方で寝る事にしますね。」


光が変な事を言い出した。

解約手続きは済んでいるが、確かにあの部屋は今月一杯は光の部屋だ。

家賃の事を考えるなら、今月末に引っ越してくるのが良かったのだとは思うが……。

あの鍵も碌々かから無い部屋部屋に、そんなに拘るとは……。


「光、学校から帰って寝るまでの間を、あの部屋で過ごして、寝るのは此処で寝れば良いんじゃないか?」


あの部屋で寝泊りは、出来ればやめて欲しいのだが…………。


「いえ、少しでも長い時間を、苦痛なく過ごすには、寝て過ごすのが一番なんです!」


もう、光が解らない。

そこまでして、家賃の元をとらなければいけないのか?

「あの部屋で過ごすのは苦痛」って言ってるのに、あそこで過ごす事は辞めないとか、何の罰ゲームなんだろうか?

まぁ、あと10日程度の事だし、光がどうしてもと言うなら、それで良いか…。




と、言う事で。無事に光の荷物は、布団以外俺の部屋に運ばれ、引っ越しが完了したのであった。


これって、人生初の同棲だ。

高校時代は寮に入ってたけど個室だったし、そう考えれば、初めての家族以外との共同生活なんだ。


なんか俺、順調にリハビリが進んでるんじゃないか?

この調子でいけば、直ぐに女性恐怖症も治りそうな気がする。

それを隆文や父に言えば、ぬるい笑顔付きで「そうだなぁ。まあ、うまく行けば結婚して子供は作れるかもなぁ……」っと言われた。笑顔が温かったのは気になるところだが、諦めていた結婚や子育てもできるかもしれない事に、夢と希望が膨らむ!


俺の未来に希望が出来たのは、全部光のおかげだから、俺は俺に出来ること全てで光の幸せを応援したいと思う!

あの日、人生の絶望の中から救い出してくれたのも光だったし、本当に光には返し切れない恩が出来た。

俺の一生を掛けて、光だけは幸せにしてみせる!


俺の決意を家族に語って聞かせたら、母親は泣いて喜んでくれた。キット、「立派になって」的なやつだろう。

親父と隆文は、「囲い込みに失敗しない様、万全の体制を敷くんだぞ?」「勿論です。友人は押さえていますし、彼女もかなりの鈍感系なので、気付いた時には網の中ですよ!」とか、黒い笑顔で笑い合っていた。


「あの女のせいで、我が家は危うく大切な長男を壊されるところだったが、仕事も順調に回り出した年齢でこんな運命が待っているとは、人生とは解らないものだな。」

「本当に……。どれだけ僕と沙織の責任が重くなるのか考えたら、ゾッとしましたよ。アイツはタダでさえ打たれ弱いのに……。」


黒い笑顔の後は、染み染みと会社の将来について話しているが、まあ、そっとして置こう。





光がウチに引っ越してきて、夜だけ別居状態になって今日で3日目。

部屋まで送って、中に入るまで見届けてから踵を返すと、部屋から悲鳴が聞こえてきた。慌てて部屋に駆け込むと、下半身裸のおっさんが、光の布団の上で◯慰をしていた。

吐き気が込み上げてきて、グロッキー寸前になってしまったけど、部屋の隅で震えてる光を見ると、不思議なパワーが湧いてきた。

先ず、親父の汚いイチモツが見えなくなるように、布団で簀巻きにして、その上に馬乗りになって、警察へ通報する。

実家にも電話して、直ぐに人を手配してもらい、人員が来次第押さえ役を代わってもらった。次に部屋の隅で怯えてる光を抱きしめるように、みんなの視界から隠してやる。

警察で軽く調子を受け、また明日落ち着いてから改めて話を聞くとの事で、帰らせて貰った。

今晩は俺の家に戻り、1組しか布団はないし、光が怯えているので2人で一緒に寝る事にする。

お互いパジャマに着替えて、背中合わせで布団に入る。人の気配がすると寝られない筈の俺は、この日あっという間に寝てしまい、さらには目覚めたら、光は俺の腕にスッポリと収まって寝ていた。

小さいけれど、確かに存在する2つの胸の膨らみが、俺の胸腹部に押し当てられているが、ちっとも気にならない。

何時もなら鳥肌が立って、蕁麻疹が出てる位の状況だ。

俺の女性恐怖症は、どうやら神速で改善しているようだ!明日のカウンセリングで報告だな!!

その前に、また沙織ちゃんで実験させてもらおう!隆文が許してくれれば良いが……。




隆文に今朝の事を話し、沙織ちゃんに協力を依頼したいと頼めば、二つ返事でOKしてくれた。俺なら絶対に安全だから、問題はないそうだ。

3人でラグの上にコロンと転がって、沙織ちゃんを真ん中に先ずは俺と沙織ちゃんが、背中合わせでくっ付いてみた。なんだか背中がぞわぞわして、鳥肌が立ってきた。


「何故だ!?こんな段階で鳥肌が立ってたら、胸なんて当てられたら、吐いてしまう!いや、血を吐くかも知れん!!」

「なんか、沙織に失礼だから、謝ってくれるか?」


驚愕の事実に打ちのめされていたら、眉をピクピクさせた隆文に脅された。

確かに善意で協力してくれている沙織ちゃんに対して、さっきの俺の言動は失礼すぎたので、誠意を込めて謝っておこう。


「沙織ちゃん、スマン!でも、君だから、この程度の反応で済んでるんだ。他の女が相手なら、発狂してると思う!!」

「解ってますよ。拓海お兄ちゃんとは長い付き合いですし、それくらいで傷ついたりしないですよ、タカ君?」


本当に沙織ちゃんは、隆文には過ぎた許婚だと思う。


隆文もベタ惚れしてるし、結婚を待たずに子供を作るんじゃないかと、ずっと言われているほど仲も良い。

俺のリハビリがもし、うまくいかなくても、海堂家は安泰だな!



隆文とあった後、講義が終わる光を迎えに行き、そのまま警察へ向かい事情聴取を受ける。

どうやらあの男は、光を男だと思い込んでいたホモのストーカーで、最近光が俺とよく一緒にいる事から、嫉妬して犯行に及んだらしい。


なんだそれ?

すげぇ、怖いじゃないか!


俺は鳥肌立ちまくりなのに、何故か光は平然としていて、「そうだったんですね。女だとばれていたのかと、ドキドキしましたよ」とか、訳のわからない事を言っている。

その上、警察から帰って来る時、昨日の布団を返して欲しいとか交渉し始めたので、「新しい、もっと良いやつを買ってやるから、アレは諦めろ!!」と言って、辞めさせた。

更には、まだあの部屋で寝るとか言うし……。

しょうがないから、俺も一緒にあの部屋で寝る事にした。


外で夕食を食べた後、質の良い羽布団を一式買って帰り、一緒の布団で寝る。

朝晩は冷える季節の所為なのか、背中合わせで寝ても、気づくと光を抱きしめて寝ている。それがちっとも嫌じゃなくて、寧ろ心地良いのがとても不思議だ…。

光も、嫌がってはいないようで、起きた時に驚いてはいるが、「人肌って、眠くなりますよね。二度寝の誘惑が凄い……」とか言ってる程度だ。





翌日、カウンセリングで最近の出来事を話して、リハビリが上手くいっているようで、中々進まない話をしたら、先生に「おめでとう」って言われた。

上手くいきそうな事を褒めてくれてるんだな!

一応「ありがとうございます。これからも頑張ってリハビリを進めていきます!!」と答えたんだが、変な顔をされて、その後「あ、そうか!」とニコニコ笑われた。


「二階堂さん、どうして、たった1人にだけ身体が違う反応をするのか、考えてみてください。それを、次回までの宿題にしますね」


と、微笑ましそうな顔で言われてしまった。

理由なんて、光が恩人で特別だからに決まっているが、先生はその理由じゃ足りないって言うんだよ。もう「一歩心の奥へ進んで考えてみて?」って、いわれてもなぁ……


困った俺は、隆文に相談してみる事にした。


隆文に電話すると、丁度この後は講義がないからと、俺のマンションに来てくれた。このマンションは光の大学にも、沙織ちゃんの高校にも近い。

沙織ちゃんの授業が終わって迎えに行くのに、丁度良い距離なんだよな。

で、だ。俺は早速、今日のカウンセリングで出た“宿題”について話をした。


俺の見解である“恩人で特別だから”と言う事と、“そこから一歩進む”というのがどういう事なのかを、隆文に問いかけた。


「兄貴って、初恋いつ?ってか、女の子好きになった事あるの?」


不思議な事を聞いてくる。それが何か関係あるのか??

初恋………。うーん…

少し考えてみよう。アレは確か……。

そう、小学4年生の時、隣の席のみゆきちゃん、だったか?

ツインテールが良く似合う、笑顔の可愛い女の子だった。授業中、落した消しゴムを拾って貰って、「はい、落したよ?」と笑顔で手渡された時に、胸がときめいたのを覚えてる。


「小学生の時だな。隣の席のみゆきちゃんだ」

「じゃあ、その時の気持ちを思い出しながら、光さんの事思い出してみて?」


隆文が何を言わんとしているのかは解らないが、取り敢えず従っておこう。

そう思って、みゆきちゃんの顔を光に変えて、思い出を再生させてみた。


俺が落した消しゴムを拾って、「はい、拓海さん。落しましたよ?」と微笑みながら手渡してくれる光。


………。何故だ?トキメクぞ??


「トキメクものを感じるな」

「じゃあ、次は…。そうだな、沙織で同じ事やってみて」


素直に伝えると、次は沙織ちゃんで想像しろと言われ、やってみる。


俺が落した消しゴムを拾って、「拓海お兄ちゃん、落したよ!」と笑って手渡してくれる沙織ちゃん。


うん、なごむ。


「和むな。アメをあげたくなる」

「その感情の違いだよ。俺なら、同じ想像をしたら…。確実に沙織を押し倒してる気がするから!」


そう言われても、いまいち良く解らん……。

一度落ち着いて、整理してみようか…。


確かに、光だとときめいて、沙織ちゃんだと和むって事は、2人に対する俺の感情が違うって事だ。それは理解した!

そして、初恋のみゆきちゃんに感じたのと、光に感じた気持ちは、少し違う気もするが、同じ種類の物だった。

………と、言う事はだ。

俺はもしかして、光に“恋”してるってことか?


隆文に思考の果てに至った結論を告げると、「やっと恋愛脳との回路が通ったか!」とか、失礼なことを言われた。

でも、“恋”した事と、光には触れる事の関係は一体何なんだ?

その疑問をぶつけたら、隆文にも沙織ちゃんまでにも“残念な子を見る目”を向けられてしまった。お兄ちゃん、ちょっとショックだぞ……?


「その理由は、ゆっくり理解していけば良いよ。取り敢えず、光さんに恋してるって気付けただけで、大分進歩したと思うしさ。まぁ、ゆっくりいこうぜ?兄貴」



隆文にそう言われたので、今はそれで良いかと思い、一旦、思考を放棄する事にした。

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