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西部へ

 


「オレイバルガス領、炎上! オレイバルガス領、炎上!」


 なんだか、お外が凄く五月蠅いです。炎上ってなんやねん、燃えてるわけでもあるまいに。他に言いようが無いのかね。凄く馬鹿っぽいよ? まぁ、俺には関係ない話だし、無視してお茶をズビー。


「アロルド殿はおられるか!」


 なんだか、俺を呼ぶ声がする気けど気のせいでしょう。俺はお茶を飲んでマッタリと過ごしてるんです。俺が相手しなくても、エリアナさんかジーク君が相手するでしょうし、待機。


「あの、凄い剣幕で師匠を呼べって怒鳴り散らしてるんですが……」


 人のヤサに上がり込んできて、怒鳴り散らすとか最低だな。俺の知り合いにそんな無礼な奴はいないので、知らない人だろう。知らない人と会う必要はないので、無視。


「おい、なぜ出て来んのだ!」


 なんか、俺の部屋に入ってきました。誰ですかね? えーと、確か王国騎士団の副団長だったかな。まぁ、知らない人ですね。無視して、お茶をズビー。


「貴様、その態度はなんだ!」


 さっきから、怒鳴りっぱなしですよ、この人。落ち着いた方が良いと思うんだけどな。


「まぁいい、私の用件は国から貴様ら冒険者ギルドへの依頼を伝えることだ。それが終われば、こんなところに長居するつもりはない」


 そうっすか。それで、用件というのはなんなんでしょうかね。えっと、なんか言っていたような気がするけど、なんだろうね。


「国からの依頼は一つだ。既に貴様も知っているだろうが、王国西部のオレイバルガス領が魔物の襲撃を受けた。冒険者ギルドは、速やかにオレイバルガス領に向かい、同地の魔物の討伐にあたるようにとのことだ」


 はぁ、依頼ね。それだったら早くそう言ってよ。というか、依頼なら受付でやってくれませんかね。でもまぁ、あれなのかな、受付が混んでたとか? 最近、探知一号が受付の女の子と話し込んでて鬱陶しいから、その影響も出てるのかもしれんね。


「何を黙っている? まさか怖気づいてしまうというわけではあるまい? 普段、あれほど偉そうにしているのだから、魔物ごときの相手など苦ということも無いだろうしな」


 別に魔物の相手は構わないんだけどね。ただ、遠そうなのがなぁ。西部ってどこよ、王国の西の方ですか?遠いところだったら、田舎だし行きたくないんだけどね。でもまぁ、頼まれたし行くことにするか。


「問題は無い。すぐに向かうとしよう」


 ん? 請け負ったのに副団長さんは凄く嫌そうな顔してるね。まぁ、俺が気にすることでも無いから、無視するけど。


「言い忘れたが、オレイバルガス領を襲った魔物の群れの中に、大黒竜ゾルフィニルを見たとの報告もある。考え直すなら今の内だぞ? 一国を滅ぼしたとも言われるゾルフィニルの相手は貴様らのような、ならず者共には荷が重いだろう。我ら王国騎士団が、その任を代わってやってもいいのだぞ?」


 大黒竜ゾルフィニル? なんですかね。まぁ、魔物ごときとか言ってたし大丈夫だろ。


「問題は無いだろう。それに、そちらも魔物ごときと言っていたではないか」


 副団長さんは代わりに行きたい感もあるみたいだけど、俺達にも行ってもらいたいようだね。まぁ、その必要には及ばないよ。だって、副団長さんて王都の治安を守る必要があるし、外へ行ったら駄目だと思うんだよね。


「そもそも、そちらは王都に籠っている方が合っているんではないかな?」


 なんか、俺の言葉を聞くなり、副団長さんの目が釣り上がりました。怒らせるようなこと言ったかな? 仕事を考えると騎士団は外へ出たら駄目だと思って言ったんで、怒らせるような言葉は無かったと思うんだけど。


「ほう、随分と我らを侮っているようだな」

「そんなことを言ったかな? 俺はそちらの能力に相応しい場を言っただけだがな」


 だって、外へ出て戦うとか苦手でしょ? 俺、騎士団の人が王都の外で戦ってるとこ見たことないし。


「……その傲慢さを、何時か償わねばならぬ時が来るぞ……」

「そうか、それは大変だな。気をつけさせてもらう」


 また未来予知系の人の登場ですか? なんで、こういう人たちって将来何が起きるとか言うんだろうね。まぁ、色々と理由があって言ってるのかもしれないから、切って捨てるようなことはしないようにしときますよ。けど、言ってたことは忘れるとは思うけど。

 とりあえず、将来とか言われても、怖くもなんともないからね。すぐさま何か起きるなら怖いけど。そのうちの未来に何が起きるとか言われても現実感薄いから、怖くありません。

 おや、副団長さん、お帰りですか? まぁ、なんかあったら、そのうち来てくださいね。次は本気で居留守を使いますけど。


 とりあえず、出かけることになったし、エリアナさんに話しをしとくか、大黒竜ゾルフィニルだっけ? なんか良く分からんけど、どうせドラゴンだろ。なんとかなるんじゃないかな。できれば、俺が行かなくても済むと楽なんだけど。





「大黒竜ゾルフィニルは伝説のドラゴンです」


 伝承に詳しいというカタリナが皆の前で説明し始めた。今は、俺を含めたギルドの主要メンバーが一堂に会し、西部へと向かう前の打ち合わせをしている最中だ。


「元は人間であったとも言われていますが、憎悪によって、人から竜へと転身したと伝えられています。その力は強大で、山のような体躯、鋼を超える硬さの鱗、村一つを焼き尽くすといわれる炎のブレス、鎧をものともしない爪と牙を持つドラゴンだと伝承にはあります。ゾルフィニルの心は人と神への憎悪に染まっており、この世の全てを滅ぼすためだけに生きているという伝説もあります」


 なにそれ、すっごい怖い。え、それをなんとかしないといけないの? 無理じゃね? やっぱやめようぜ。


「良く分からないけど、なんで急に、そんなのが人里に現れたんだい?」


 流石のグレアムさんも、ちょっとビビり気味ですか? いやぁ、他の誰かがビビってると、かえって冷静になりますね。


「ゾルフィニルは天災のような物で数百年に一度目覚め、目につくものを粗方滅ぼすと、眠りにつくといわれています。おそらく、今年が目覚める年だったんだと思います」


 なんだかタイミング悪いね。百年後ぐらいに起きてくれりゃ良かったのに。はぁ、面倒だなぁ。まぁ、頼まれたから、頑張るけどさ。しかし、何百年も寝てたのか、働かなくていい奴は羨ましいね。あ、でも、そう考えるとゾルフィニルってのは、何百歳とか何だよね。って、考えると――


「そんな年寄りに負ける可能性は無いな」


 ん? なんだか、皆さんの俺を見る眼が変なような。だって爺だよ? 俺達のような若者と本気で戦って勝てるわけがないじゃないですか。


「ゾルフィニルには誰も勝てなかったという伝承があり――」

「そんな何百年も前のことなど関係ないだろう? 時代が違うんだ、こちらは進歩して、あちらは昔のままなのだから、勝敗は明らかだ」


 昔の時代と比べると平均身長とか体格も違うしね、武器だって良い物になってるし、何百年も前の感覚の奴に負けるとは思えないんだけど。

 みんな爺の昔の武勇伝に恐れすぎだからね。実際、今の若者の方が凄いから。


「伝説の時代の奴らと比べて、今の俺達が劣っているとは思えない。ゾルフィニルがどれだけ強いのかしらんが、所詮は過去の遺物だ。やってやれないことはないだろう」


 とりあえず、俺はぶっ殺せそうな自身があるんだけど、皆さんはどうですかね? ……うん、ジーク君以外、大丈夫そうだね。ジーク君も自信を持った方が良いと思うよ?


「ゾルフィニルの相手はアロルド君に勝算があるみたいだから置いとくとして、オレイバルガス領には魔物が大量発生してるんだよねぇ。これは、どうするんだい?」


 さぁ? どうするんでしょうね、グレアムさん。って具合に質問してきたグレアムさんに質問を返したいんだけど。


「同時に処理するしかないと思います。オレイバルガス領を含めて西部は王国の穀倉地帯ですから、守らないと王国自体が傾きますし、今後の西部での活動を考えると、彼らの土地を守って恩を売っておくのは悪くないかと。ですけど、冒険者の数が足りるかどうか……」


 微妙に調子を戻しつつあるエリアナさんが俺の代わりに質問に答えてくれました。え、なんで、俺を見るんですか、なんか俺に言えって?


「足りないなら、現地の奴らを冒険者にすればいい」

「素人を冒険者にしても役に立つとは……」

「だったら、教導役に何人か王都の冒険者も連れていって実戦の中で経験を積ませればいい」


 一度か二度死にかければ、戦えるようにはなるんじゃないかな。大事なのは気合だし、実戦を経験して覚悟が決まってくればいけるだろ。

 グレアムさんとかオリアスさんに鍛えてもらえば、なんか戦えるようになりそうな気もするし、というか、俺が鍛えても良いんじゃないかな。俺って、ジーク君で育成経験あるし、良い師匠になると思うんだよね。


「食料や装備が足りなくなる可能性がありますが、それらに関してはどうしますか?」

「食料は魔物を食えば良い、装備はザランドとザランドの弟子でも連れてくれば良い」

「魔物を食糧にするにしても、その加工を出来る者がいないと――」

「だったら、エダ村の奴らを連れていけばいい。タダが嫌なら、金を払って連れてくれば良い。かかった費用は依頼者に経費として請求すれば、問題ないだろう」


 面倒くさいから出来る奴をどんどん連れてっちまおうぜ。せっかく、国から依頼を受けたわけだし、報酬はいくらでも貰えるだろ。お金払うとなっても、俺らの代わりに国にお願いしようぜ。


「……それでしたら、もっと大規模に計画を練った方が良いかもしれませんね」


「民間人を連れてくとなると、その護衛も必要になるから――」


「魔法道具を作れる奴も必要になるだろうから――」


「怪我人も多くなりそうなので、回復魔法が使える僧侶も――」


「不在の間の業務は――」


 なんか皆で相談が始まりましたね。もう、俺は黙ってても良いかな? とりあえず皆に任せようと思います。俺って細かいこと考えるのは苦手だし、邪魔になりそうだから何も言わないようにしますね。


「全員で協力して準備を進める。一週間で出発できる態勢を整えるぞ」


 待ってるの苦手だから、早くしようね。あと、全員で協力って言ったけど、俺はさっき発言したから、もう良いよね。俺は協力完了したんで、他の全員で協力して頑張ってください。じゃあ、よろしく。





 そして一週間後、俺は総勢二百名を超える集団を率いて、オレイバルガス領を目指し西へと旅立つのだった。











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