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アロルドの日常

 


 アロルド・アークスです。なんと十八歳になりました。みんなに、そのことを報告すると、驚いた表情をされました。


『え? ああ、エリアナさんも十八だもんね。うん、十八歳に見えなくてさ……』

『……老けてんな……』

『流石アロルド様です。お若いのに落ち着いた雰囲気で素晴らしいと思います』

『……大人っぽいのも……良いと思う……』


 疑問半分、称賛半分といった感じだったね。年齢を明らかにするだけで、どうしてこんなに驚かれるんだろう、不思議だね。まぁ、それはそれとして、俺も一歩成長したわけですから、大人になろうと思います。なんていうか、こう思慮深く行動してみたりね。

 少しずつ立派な大人になれるようになっていこうと思う次第です。


 そういえば、俺が十八歳だからエリアナさんも十八歳なんだよね。婚期は大丈夫なんだろうか?アドラ王国だと、貴族の娘さんは学園に通う人もいるから婚期が少し遅めなんだよね。だいたい二十代前半ぐらいに結婚するだったけかな? まぁ、その前に婚約とかしてるんだけどね。

 エリアナさんは十八歳だから貴族基準で見たら余裕だけどさ、平民基準だとどうなんだろ? 平民の暮らしなんか俺は知らないので良く分からないね。もし、行き遅れみたいなことになったら大変だよね。噂だと平民の場合は職場の上司が結婚相手を探してくるらしいし、これって俺が探さなきゃいけないのかな? めんどくさいけど可哀想だから頑張って探すよ!

 まぁ、それはそれとして、最近ギルドの奴らのエリアナさんを見る眼が生暖かいんだよね。まぁ、俺が気にすることじゃないんだけどさ。エリアナさんも落ち込んでるみたいだし、どうしたんだろ? 元気全開だった時に戻ってもらいたくて、お酒飲ませるけど、ほどほどで止めちゃうせいで、元気な姿を見せてくれないし、俺は心配だ。まぁ、俺が心配したって仕方ないんだけどね。


 話が良く分からない方に飛んだけど、とにかく大人っぽく行動しようかなと思い、思慮深くなろうと努力している次第です。で、ここから先が俺が頑張って思慮深く行動しようとした最近の日常になるのですが、まぁ、大丈夫だったと思いますし、明らかにしていこうかなと思います。



 ◆◆◆



 ある日のことです、グレアムさんが俺に言いました。


「最近、人を斬ってないんだよねぇ」


 そう言えば、俺も斬っていませんでした。定期的に人を斬らないと感覚が鈍るので、グレアムさんも、そのことを心配しているのでしょう。俺もまぁ、多少ですが不安でもあったので、グレアムさんに提案しました。


「人斬りいこうぜ」


 まぁ、人を斬ると言っても、そこら辺を歩いている一般人を斬るわけにもいかないので、俺とグレアムさんは盗賊やら山賊のアジトに赴いて、そこにいた奴らを皆殺しにしてやりました。悪党だし、生かしておいてもしょうがないよね。ああ、そいつらのアジトにあった宝とかは俺達が貰いました。持ち主の悪党は殺してしまったし、持ち主がいないなら、俺達が持ち主になって、有効に使った方が宝とかも浮かばれると思います。

 いやぁ、俺とグレアムさんは人を斬れて幸せ、世間の人達も悪党が死んで幸せ、ついでに俺達の懐も潤って幸せ、人を斬った結果、みんな大喜びの結果になって良かった良かったって感じだね。



 別の日、街を歩いていたら、どこぞの貴族が何だか良く分からないけど、店員らしき人に難癖をつけていたので、蹴り飛ばしました。

『儂を~~家の~~と知っての狼藉か!』とか言っていましたが、そんなのは俺の知ったことではないので、その貴族の護衛もろとも、ぶちのめしました。

 店員とか客に逆らえない相手をイジメるとか男のする真似ではないので、これで性根が真っ直ぐになると良いんですがね。道のど真ん中で倒れていて、みんなの注目になったから、恥ずかしいかもしれないけど、結果的には良い薬になるんじゃないかな?


 これまた別の日、とある貴族が俺にドラゴンの剥製が欲しいとか依頼してきた。なんでも知り合いの貴族が地竜の剥製を手に入れたとかなんとかで、自分もそれに負けない物が欲しいとかなんとか。人の物が欲しくなる気持ちは分からないでもないんで、俺はその依頼を受けました。

 ワイバーンとかいう翼竜が住んでいるとかいう切り立った岩山へと向かい、その山に生息していた魔物を手当たり次第に殺しまくって、邪魔するものがいなくなった山を悠々と探索しました。

 ワイバーンは……まぁ、雑魚でしたよ。ブレスを吐けるわけでもないですしね。基本的に突っ込んでくるしかできませんから。俺は、突っ込んで来たのを受け止めて、そこいらの地面に叩きつけ、動けなくしてから、最後に首をへし折って仕留めました。

 殺してからワイバーンとドラゴンってもしかして違うのかななんて思ったけれども、まぁ大丈夫だろうと思って持って帰りました。大きさ? 十五メートルくらいじゃないかな。良く覚えてないけど。別に憶えておく必要があるほど苦戦した相手でもないし。

 苦戦と言えば、持って帰ってからのほうが苦戦したかな。俺に依頼をした貴族がワイバーンを仕留めた手柄を自分の物にしようとしやがったの。なんか、七面倒くさい理屈をこねていたけど、難しい話は俺には理解できないし、どんな理由があっても俺の手柄を横取りしようとしているのは明らかなので理解する気も無かった。

 腹が立ったので、狩ってきたワイバーンの尻尾を掴んで、その貴族の屋敷の中で振り回してやった。いやぁ、爽快爽快。あれって最初に動かす時は重いけど、一回振り回せば、その勢いで延々と振り回してられるのね。

 とりあえず、屋敷をぶち壊し回ってやったら、泣いて反省してきたので、二度とふざけた真似はしないってことを約束させ、ワイバーンの死体を置いていった。


 またまた別の日、その日はノンビリとお茶を飲みつつ、読書をして過ごした。兄上が実家に置いてある俺の本を送ってきてくれたからだ。意外だと言う奴もいるが俺は読書家だ。本を読んで静かに過ごすことは嫌いじゃないので、久々に優雅に時間を潰した。

 エリアナさんやカタリナにキリエが、俺とお茶をしに来たので適当に話をしつつ、彼女たちの姿を見て、心を癒した。やはり美人だったり可愛い女性を見ると、心やら何やらが豊かになるね。王都で人気の菓子店の菓子を振る舞ったら、喜んで貰えたし、やはり女性は甘い物が好きだね。こうやって、細かいところで印象を良くしていくとか大事だと思うんだよね。


 そして、別の日。街中を歩いていたら、どこの誰か分からないが、貴族の男が俺に難癖をつけてきた。理由は分からないが『ついて来い』とか言ってきたが、行きたくなかったので嫌だと言った。俺が、そんなにホイホイ知らない奴について行く男だと思ってんのか? 俺を誘うんだったら、茶か菓子か酒を御馳走するとでも言わなきゃついて行かないぞ!

 俺が拒否したら、貴族の男の護衛が斬りかかってきたので、俺も斬り捨てた。殺す気でかかってくるんだから、俺も殺すつもりで相対した。

相手は十人くらいいたけど余裕でした。俺の剣は当たるけど、そいつらの剣は当たらないんで、楽勝だった。大通りのど真ん中だったんで、野次馬がいっぱいいたけど関係ないよね。

 護衛を全員斬り殺して、最後に貴族をぶった切った時、王国騎士団がやって来た。領主付き騎士じゃなくて、王家に忠誠を誓うとかなんとからしい王国騎士団は王都周辺の治安維持もしているんだとか。でも、俺みたい奴には関係ないよね。しかし、関係ないのに、俺の事を敵視してくるんだよね。鬱陶しいんで、こいつら死なねぇかな。

 騎士団の奴らが俺に事情を尋ねてきたので、全部、俺を襲ってきた貴族が悪いと言っておいた。俺の事を疑いやがったので、俺は野次馬に俺が何も悪いことはしてないことの確認を取った。流石に野次馬は俺が悪くないと分かっているので、俺の無実をちゃんと説明してくれた。

 それなのに、騎士団の連中は俺を疑い続けているので、俺も伝家の宝刀を抜くことにした。


「俺に何か文句があるなら、セイリオス・アークスに言うんだな」


 後ろ盾ってのは、こういう時に使うんだよね兄上って思いながら、そう言うと。騎士団はすごすごと去って行きました。騎士団の奴らの敵意がこもった視線が忘れられません。つーか、そんなに気に入らないんなら、俺に斬りかかってくれば良いんじゃないかな。睨みつけるだけとかショボすぎるし、男の振る舞いじゃないよね。


 そう言えば、その後、騎士団長が兄上に会いに行ったらしい。なんか騎士団の副団長とかいう人が俺の所に、そんなことを報告しにきた。で、その騎士団長が兄上の所に行ったきり行方不明なんだとか。王都の闇は深いね。で

 も、それって俺に言う話じゃないよね。兄上の所に行ってきなよ。なんで俺に言いに来るわけ? 兄上にビビってんだろうか? なんか、こいつ等ホントにヘタレだなって思いました。もう面倒なんでハッキリと言います。


「そんなに文句が言いたいなら、冒険者ギルド全員で相手になるぞ?」


 もう、俺の手下全部使って喧嘩してやるぞってつもりで言ったら、副団長はビビッて帰って行きました。本当にヘタレだぜ。


 ◆◆◆


 まぁ、そんな風に色々とあったわけです。なるべく思慮深く行動しようと思った結果がこれです。よくよく考えてみたら、何が思慮深い行動なのか、俺は基準を定めていないことに気が付きました。でもまぁ、たいして困ってないし、問題は無いと思いますよ。


 ジーク君が何か言いたそうにしているけど無視しました。

 ジーク君も、ちょっと大人になってきたから小生意気に大人ぶったことを言うようになったんだけど、あんまり聞いても仕方ないんだよね。なんか、修行を頑張らせた結果、成長はしたんだろうけど、頭の働きと精神の働きのバランスが悪くなってて、見てて気持ち悪いし、そういう状態の奴に何か言われてもねぇ。まぁ、ちょっと大人っぽく振る舞いたい年頃なんだと考えると微笑ましいんで、俺は何も言わないけどさ。

 ただ、時々ついていけない話をされて困る。昨日見た夢の話とかされてもコメントのしようが無いし、夢の中に出てくる人の話とかされてもねぇ。なんかヲルトなんたらとかいう名前らしいけど、どうでもいいかな。まぁ、夢の話は良く分からないけどさ。あんまり夢の事を気にしてんのも良くないと思うんだよね。

 ただでさえ、最近、細かいことを気にするようになっているし、もう少し自由に生きた方が正解だと思うんだよね。まぁ、何をもって正解かは全く分からないんだけどさ。なんていうか、今の世界の雰囲気的に正しくないような気がするだけなんだけど。

 まぁ、俺がグチャグチャ言うことでもないので、何も言わないけどさ。ただ、なんか幸せにならなそうな気がするし、気をつけた方が良いんじゃないかなと思ったりもするわけです。


 そんな風に、微妙にジーク君の心配をしたりしながらも、つつがなく日々を過ごしていた俺。このまま、何事もなく一生を終えるのかなぁ、などと思っていた俺ですが、俺にそんな平穏が訪れることも無く、事件はある日唐突にやってくるのでした。








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― 新着の感想 ―
[一言] >人斬りいこうぜ そんなモン◯ンみたいにいうなやwww
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