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酒乱令嬢とギルドの方針

 


 兄上に会ってから数日。勇者って奴を探さなきゃいけないような気がしているのだけれど、探す手段が無いので、待機中の俺。まぁ、それはどうでも良いんだけど、ちょっと気になることがあるんだよね。なんだか、兄上に会った、次の日からエリアナさんが元気ないようで、ちょっと心配。

 なんか、気分の変わるようなことでしてあげた方が良いかな。うーん、せっかくだし飲み会でもやってみようかな。エーデルベルトさんの所から、お土産として貰ってきた、お酒が余ってるし、パーッと消費して、これまでの頑張りを労うのもありだと思うんだよね。

 

 というわけで飲み会をやることに決めました。エリアナさんが元気になってくれると良いんだけど――



◆◆◆



「ちくしょー! ふざけんなー!」

「ひっ」


 お酒の瓶が宙を舞い、ジーク君に向かって飛んでいきます。それをジーク君は間一髪で回避し、瓶はジーク君の奥に座っていた探知一号の頭に直撃して、探知一号がぶっ倒れました。

 ちなみに投げたのはエリアナさんです。いやぁ、元気になって良かった良かった。


「量産型貴族令嬢がお高く止まって、私を見下しやがって、ぜってー許さねー!」


 エリアナさんは絶好調です。酔えば元気になると思って、しこたま飲ませたのが効いたようだね。王国の西部産の火酒があったので、葡萄酒に混ぜたり、解毒薬で割ったりして飲ませたら最高に調子が良いようです。


「きいてんのか、おらー」


 エリアナさんが手に持った酒瓶で俺の頭を、ぶん殴りました。いやぁ痛いね。まぁ、蚊に刺されたようなもんだから、たいしたことないけど。


「うう、わらしだっへね、じふんから、こうなったわけらないもん。ぜんぶ、わたひいがいのひとがわるいんらー!」


 おうおう、そうですか、そうですか、大変なんだね。よしよし頭を撫でてあげよう。ほら、えらいえらい。


「えへへ、ひざまくらー」


 はいはい膝枕ですか? 良いですよー、どうぞどうぞー。


「カタリナおっぱい触らせて! キリエはお尻触らせてよ!」


 おいおい、エリアナさん凄いですね、超自由ですよ、この子。ん? なんで、他の奴らは目を逸らしてんだろうか。見てはいけないものを見たって感じが凄いね。エリアナさんが美人さんなのはいつものことなんだし、そんなに変なものとかあるかな?


「くわー! カタリナとキリエどこいったー!」


 おや、さっきまで居たような気がしたんだけどね。なんか料理でも持ってきてくれるんじゃないか。だから、落ち着いてくださいよ。ほら、なでなで。


「うう、優しくしてくれるのはアロルド君だけだ、わたし泣いちゃう。うわーん!」


 おいおい、泣きだしてしまったよ。可哀想だから、ハンカチを貸してあげましょう。って鼻をかむんじゃねーよ、ぶち殺すぞ! ああもう、どうすんだよ、ぐちょぐちょじゃんよ、俺のハンカチ。クソ、俺も飲んで忘れようっと。

 お酒はええっと、東部産の葡萄の火酒、北部産の芋の火酒があるな。高いのは葡萄の火酒だから、こっちを飲もうっと。ガラス瓶だし見るからに高級品っぽいしね。さて、お味は……いやぁ、強い強い。けど、甘味と一緒に口の中にふわりと広がり鼻に抜けていく柔らかで奥深い香りはいいね。


「ちくしょー、おまえみたいに、家でただぼんやりと過ごしてる女とは違うんだよ私はー! なにが女の務めは子を為し、家を守ることだ馬鹿やろー! こっちは家ねーんだよ! 馬鹿にしてんのか!」


 おお、荒れていらっしゃる。まぁ、それはそれとして、他の人は何をしていらっしゃるんでしょうね。


『俺が南部自慢の鶏料理を御馳走するよぉ!』

『へぇ、揚げ物か』

『南部は綿が取れるんで、ついでに綿実油も作ってるんです。油が一般家庭でも安く手に入るんから、揚げ物が豊富なんです』

『たっぷりの油に鶏をぶち込む、それで、完成さぁ。とりゃあ!』

『おい、油が跳ね――うわ引火した! どうすんだ、これ! とりあえず水か!?』

『水は駄目で――うわああああ、火事だぁー!』


 なんだか、楽しそうですね。グレアムさんとオリアスさんとジーク君が何かやってるのかな。あの三人、そのうち、とんでもないことやって死にそうだよね。その時は俺を巻き込まないでほしいものだ。

 なんだか、飲み会に参加していた一般冒険者もグレアムさん達の方を気にしてるようだったけど、気にする必要は無いって止めておいた。ジーク君は子供だけど、グレアムさんとオリアスさんは大人なんだし、何とか出来るでしょ。


「アロルドくんアロルドくん。あのクソ女を見返すために、お兄さんをぶっ倒してきてくださいよ。アンタの旦那より、私の男の方が凄いって思い知らせてやりたいんです!」


 エリアナさんはまだ元気なんだね、よしよし良い子だね。ほーら、なでなで。いやぁ、髪が柔らかくて気持ちいいなぁ。エリアナさんの髪触ってるだけで、酒の肴になるよ。ホント、いくらでも飲めちゃうね。髪をサワサワ、お酒グイって感じ。


 いやぁ、俺も酔ってきそう、というか、酔っぱらっちゃったかな。ああ、カタリナとキリエ、良いところに来たな。こっち来い来い、こっち来いってな。


「かたりなー、きりえー、おっぱいもませてー! おんなどうしなんだからいいじゃないー!」


 おいおい、エリアナさん、すごいなぁ。欲望全開だよ。何がどうなってこうなったんだろうね。エロいことを口走るエリアナさん。エロいエリアナさん。エロ、エリアナを略すと……うん、ここから先は何か表現的に良くないね、仮にも女性をそんな呼び方したら駄目だよね。


「すみません。私たちは厨房の方が大変なことになっているようなので、そちらの手伝いに向かいます。エリアナさん、明日ちゃんと、お話しをしましょうね」


 すっごい冷たい顔してたんだけどカタリナ。キリエも感情の無い顔してたよ。何やったのエリアナさん。


「うえーん。やっぱり皆つーめーたーいー。私の友達はお酒しかないんだー!」


 おいおい、膝枕されてる状態で酒飲むなよ。ガンガンこぼれて俺のズボンにかかってるんだけど。というか、口の周り汚いから拭きますよっと。


「うぐぐぐ、こうなったら世界征服をしてやる。手始めは、この国だ。私とアロルド君がいれば何とかなるよ。ねぇ、お願い私を助けて」

「しょうがないな。美しい女性の頼みを断るわけにはいかないしな」


 綺麗な女の子に頼まれたら、ハイって言っちゃいますよ。俺も男だからね。まぁ、頼みを聞いたとしても、それが上手く行くかは別の話だよね。


「ハイ、言質イタダキマシター! ありがとございまーす!」


 うわ、急に起き上がって、どうしたのエリアナさん。


「よーし、みんな聞いてー。はい、みんな聞いてねー。今さっき、アロルド君から、この国を乗っ取るために頑張りたいって話を聞きましたー。というわけで、これから冒険者ギルドはアドラ王国転覆も視野に入れて行動を起こしまーす」


 起き上がったのは良いけど、めっちゃフラフラしてるよエリアナさん。もう寝た方が良いんじゃない。つーか、俺も眠くなってきたんだけど。


「とりあえず、王国の西部に手を伸ばそうと思いまーす。王国西部は穀倉地帯だけど、同時に魔物が多いことでも有名なので、冒険者ギルドの仕事は間違いなくあると思います。西部で真面目に働いて地盤を整え、冒険者ギルドの王国西部での地位を確立させていきましょう。穀倉地帯で影響力を持つことは将来、必ず利益になりまっす!」


 はぁ、そうっすか。良く分かんないけど。分かった顔して頷いておこう。


「熱烈歓迎戦国乱世って気概をもって仕事に励みましょう。目指すはアドラ王国アークス朝の樹立! そうなれば、ここにいる皆も王侯貴族。この世の全てが思いのままだー! みんな頑張るぞ。おー!」


 すいませんね。エリアナさん。誰もエリアナさんの勢いについていけてません。というか、エリアナさん。そろそろ倒れそうだよね。倒れると危ないから、受け止めるね。

 おい、何を見てんだよ。なに? 俺が何か言わないといけない感じですか? えー面倒くさいな。もういいや、エリアナさんの言う通りってことで。


「エリアナの言う通りに進めていこう。ただし自重しながらな」


 後でエリアナさんに『私の思っていたのと違う』とか言われないように、ほどほどに様子見ながら進めていこうね。


「……まぁ、そのまま続けていてくれ」


 飲み会の途中だしね。みんな固まってないで、飲んで食ってやってていいよ。で、俺はエリアナさんを抱えているわけだけど。これから、どうすれば良いんだろうかね? 面倒だからカタリナに預けとくか。エリアナさんのことは良いとして、まだ飲み足りないんだよね。というわけで、お酒グイー。


 いやぁ、美味しい美味しい。やっぱ飲み会開いて良かったようだね。エリアナさんも元気になったようだし、万事が万事良い結果に収まった。



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