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教会だったり、美人さんだったり、幽霊だったりの四日目

整合性を取るために後々修正が入るかもしれません。

 家から追い出されて、四日目。


 仕事を探しに出かけた俺だけれども、そう簡単に仕事が見つかるわけはありません。思わず敬語になってしまうほど自分を情けなく感じます。敬語の使い方なんて知らないけれども。

 まぁ、それは置いといて、そもそも俺は就職活動なんてしたこともないし、仕事の見つけ方すらわからないんだよね。

 だからというわけじゃないけど、午前中は結局、王都の下町をぶらついているだけで終わりました。王都に俺の実家はあるわけだけれども、実家にいた時は、基本的に引きこもって学園と家の往復だけだったから、王都のことは何も知らないんだよね。


 なんとなく、ぶらついていたら、教会っぽい建物があったので、その敷地の中に入ってみる。好奇心故です。

 ちゃんと教会に入るのって、生まれて初めてなので、ワクワクした。アドラ王国は聖神さまという神様を崇めている聖神教というのが国の宗教らしい。らしいというのは、俺は宗教行事を、この人生まで無視して生きてきたので、まったく知らないからだ。

 

 まぁ初体験ということで、教会の敷地内を探索していたのだけれども、特に面白いことはありませんでした。あったことと言えば、教会の裏にある墓地にゾンビっぽい魔物が何匹かいたので、近くに転がっていた石を拾って投げつけて、ゾンビの頭を吹っ飛ばしたことぐらい。

 そしたら、ゾンビっぽい魔物のそばにいたシスターさんが、お礼を言ってくれました。シスターさんは金色の髪で清楚な感じの可愛い女の子でした。たぶん俺と同じぐらいの歳でしょう。こういう子に限って、男を騙したりすると言いますから、気をつけた方がいいのだろう。

 でも、可愛い女の子は目の保養になるし、精神的な豊かさを得るためには重要だし、まぁ見るだけなら構わないだろうから、ジッと見つめていました。

 その結果、シスターさんは顔を真っ赤にしてしまいました。視線が露骨すぎたんだろうね。「この人、私をいやらしい目で見るんです!」とか叫ばれたら叶わないので、逃げようとしたのですが、タイミング悪くおじさんに呼び止められてしまいました。

 

 俺を呼び止めたおじさんは、この教会の司祭さんのようです。司祭って何?という感じで、俺の対応は適当でしたが、司祭さんはシスターさんを助けたお礼だと言って銀貨が入った袋をくれました。

 たいしたことをしていないのに、お金を貰うのも悪い気がしたので、泊まっている宿の場所を曖昧な感じで教えた。曖昧な感じの訳は俺が宿屋の場所を覚えていないからだ。とりあえず、なんかあったら来てくれとだけ言って、教会からはお暇しました。


 仕事を探して街を探索する俺は、美人さんを見つけました。ベンチに座っていた、その女の人は綺麗な銀髪に白い肌で服の上からでも、おっぱいが大きいと分かる女の子でした。雰囲気はおとなしそうでしたが、顔は人形みたいに整っている美人さんだった。

 そんな美人さんが、物憂げな表情をしていたら声をかけたほうが良いに決まっているので、俺は躊躇わず声をかけました。


「何か困りごとか?」


 まぁ、こんな風に短い言葉で声をかけたわけだが、やっぱり話すのは苦手だと痛感してしまった。それでも美人さんは、嫌な顔をしなかった。代わりに驚いた表情をしていた。

 よくよく考えると当然だ。急に話しかけるなど変質者のすることだ。驚いても無理はない。そう思っていると、美人さんは


「アロルド様?」


 俺の名前を言った。どうやら、俺を知っている人のようだ。俺は、この美人さんのことは何一つ知らないのだけれども。知らないので、「きみは誰だ?」と素直に尋ねた。


「私はエリアナ・イスターシャ。イスターシャ公爵家の娘です」


 まいった。知らない人だ。知っている人かもしれないが、全く記憶にないので知らない人で良いだろう。記憶力が壊滅的な俺は人の顔や名前などは、まったく憶えられないので、いつものように誤魔化すことにした。

 ちょっと真面目な表情になって、何も言わずに頷くのだ。こうすると、いつもなんとかなるので、この方法を使う。


「あの、アークス伯爵家のアロルド様ですよね?どうして、ここに?」


 うーん、俺の名前を知っているみたいだが、まったく誰だか思いだせないぞ。それに質問の意味が分からない。

『どうして、ここに?』と言われても、何を指しているのか分からないぞ? 仕事を探して歩いていた、と言えばいいのだろうか? いや、それではあまりに短絡的すぎはしないだろうか?いやいや、話しかけてきた理由を遠まわしに聞いているのかもしれない。いや、それも違うかもしれないぞ。もしかしたら、『どうして、ここに?』ではなく言外に、

『どうして、ここにいるの? 邪魔だから消えて欲しいんだけど。そもそもアンタみたいなゴミクズが私に話しかけてくるとかどういうつもりなのかしら?』

 という、怒りを込めた質問を略したものなのかもしれない。これは困った、どうにも答えようがないぞ。だったら、いつもの方法を使おう。


「まぁ、色々とあってな」


 真面目な顔して、こう言うとだいたい何とかなるのだが、エリアナさんの表情は曇ったままだ。憂い顔も美人さんで素敵です。

 まぁ、それはどうでもいいとして、このエリアナさんなんだが、おっぱいデカい、髪キレイで、なんだか好きになってきてしまったぞ。こういう子と、お付き合いしたいなあ、なんかいい匂いするし。こういう時は、こう言うのが一番だ。


「少し話しをしないか?」


 そうした結果、色々と話すことができた。話の内容? 殆ど憶えていない。記憶力が壊滅的な俺に、そんなことを期待するのがおかしい。記憶にあるのは、エリアナさんは悲しそうな表情をしていても、すっごく美人だったこと、声も綺麗だし素晴らしいね。

 あと、どうでもいいことだけれども、分かったことは、エリアナさんはウーゼル殿下から婚約破棄されて、その後に家から追い出されたらしい。家から追い出されたのは、ついさっきらしい。うーん、こんな美人さんを捨てるとか、見る目が無いなぁ、殿下も。

 ついでに、ウーゼル殿下の新しい恋人は、俺の婚約者だったイーリスらしい。初耳のはずだが、聞いた記憶があるのが不思議だった。それに関しては俺の記憶力は壊滅的なので、忘れていただけだろう。

 まあ、イーリスも可愛いし、可愛い子を好きになるのは仕方ないね。俺もエリアナさんが、好きになってしまったし。

 俺は見た目だけなら、断然エリアナさん派だなぁ。イーリスも可愛かったけど、ちょっと田舎臭いのがマイナスだね。その点、エリアナさんは高貴な雰囲気が溢れてて、超好み。


「――――それで、お恥ずかしい話ですが、この後、どうすればいいのか途方に暮れてここにいたんです」


 あ、ごめん。途中から、話を聞いてなかった。えーと、たぶん、家を追い出されて、住むところがなくて困っているんだという話だと思う。美人さんが困っているのを見捨てられるほど、俺は男が枯れていないので、とりあえず、手助けすることにした。


「俺と一緒に来い。寝床ぐらいは用意してやる」


 そう言ったら、エリアナさんは肩を震わせました。やってしまいましたなぁ。女の子は、男の言葉の些細なところに気がつくらしいので、誘い方が良くなかったらしいです。でも、言ってしまった以上、どうしようもないですね。

 うん、ここで変な弁解をしてもしょうがないので、シンプルに「ついて来い」と言ってやった、別の意味でやってしまった感がしたけれども、俺が歩きだすとついてきたので、結果オーライというやつなのだろう。


 まあ、そういう感じで、俺が泊まっている宿に到着しました。宿の名前は憶えていません。だって忘れるし、憶えていても仕方ないじゃん。

 そういう感じで、宿の名前は憶えていないけれども、とりあえず、エリアナさんを宿に誘いました。宿屋の女の子がすごい顔で俺を睨んでいました。凄く怖いけれども、エリアナさんを紹介することいしました。


「住むところが無いので、困っているようだ。泊めてやってくれないだろうか。宿代は俺が何とかする」


 うーん、そう言ったら、宿屋の女の子の目がグンと釣り上がった。そりゃ、そうだ。宿代もマトモに払えていないのに、同居人を連れてくるのはマズいよね。

 なので、少ないとは思いながらも教会のおじさんから貰った銀貨の入った袋を渡して、さらに頭を下げて誠意を示す。すると、女の子は了承してくれた。ちょっとチョロすぎやしないだろうか、赤の他人だが、俺も心配になってしまう。

 頭を下げたくらいで、無茶な頼みを了承するなど、商売人としてまずそうだが、部屋は借りられたという感謝の気持ちもあるので、余計なことを言って不快にはさせないために黙っていることにした。そうしたら、


「部屋は別にしますね」


 うーん、しくじってしまいました。全然チョロくありませんでした。部屋を二つにして、俺から搾り取るとは、なんという策士だ。これで、俺はエリアナさんの宿泊費も払わなくてはいけなくなってしまったぞ。明日からはちゃんと仕事をしないと、エリアナさんも路頭に迷うことになってしまう。美人さんに辛い思いをさせるわけにはいかないので、きちんと仕事を見つけないといけない。


 なので、明日から、頑張ろうと思って早い時間に寝ました。夜中に誰かが俺の部屋に入って来たようですが、たぶん幽霊だと思います。

 幽霊が服を脱ぐ音がします。どうやら戦闘態勢のようです。漢同士の一騎打ちは上半身裸でやるらしいので、ここに俺と幽霊の一大決戦が繰り広げられる予定だったのかもしれませんが、俺は眠かったので拒否しました。戦う気は無いので、こう言います。


「そんなつもりは無い」


 そう言うと、幽霊は部屋から出ていきました。昔、実家に出てくる幽霊をボコボコにしたうえで絞め落とした経験があるので、たぶん幽霊には勝てると思うけれど、幽霊は倒そうとすると物凄く五月蠅いので、幽霊と戦うのは嫌だ。

 なので、帰ってもらうつもりで言ったら、幽霊は消えました。話の分かる幽霊はありがたいと思いつつ、寝た。


 特に何かあったわけではない。エリアナさんという美人に会えただけしか収穫はなかったが、エリアナさんという美人さんに会えただけで、幸せなので、仕事は見つからなくても満足。

 ただ、きちんと仕事を探さないと、エリアナさんが宿に泊まれなくなってしまうので、頑張って仕事を探そうと思った。そんな、感じで、エリアナさんと初めて会った日は終わったわけになる。


 予想外の展開で養う人が増えたわけだけれども、まぁ明日から頑張ろう。そういえば、宿屋で出される俺のごはんの量が少なかった。宿屋の女の子は特に何も言ってなかったので、気のせいかもしれない。しかし、エリアナさんの方が俺と比べて量が多いようにも見えた。まぁ、誤差の範囲内だろうと思いつつも、ちょっと空腹だった。



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