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ギルド運営と脱税

 ようやく王都に帰って来れた俺ですが、ここ一か月は完成したギルド本部の自室に籠って仕事をしています。ギルド本部って言っても、俺が泊まっていた宿屋を、俺達がしばらく留守にしていた間に改築しただけのものですが。

 宿の持ち主ですが、もともとお客さんもいなかったようで、エリアナさんが交渉したら、あっさりと譲ってくれることになったそうです。もちろん、お礼は多めに包んでおきました。あと、宿屋の娘さんはギルド受付として働いています。誰にでも出来そうな仕事なので、場末の宿屋の娘でも余裕でしょう。

 俺がいない間に冒険者が増えたようなので、大変そうでしたが、まぁ頑張れるでしょう。



 ああ、そういえば、以前に会った武具屋の店員がしょっちゅう押しかけてくるようになりました。


『こぞおぉぉぉぉぉっ!』


 王都へ帰ってきて、すぐに武具屋の店員が怒鳴りこんできて五月蠅かったのを覚えています。俺を知っているようでしたが、俺は知りません。

 武具屋の店員はザランドという名前の鍛冶師だそうですが、そんな人は知りませんね。記憶にないです。人違いだ消えろ。と思ったのですが、ザランドは俺との出会いを滔々と語り出しました。

 昔はそれなりに有名な鍛冶師だったザランドですが、ある日、俺に会って、勝負を挑まれたとか。『俺が勝ったら剣をくれ』とか、昔の俺は言っていたそうですが、記憶にないね。

 ザランドの方は子どもの遊びだと思って、乗ったらしい、自分が負けるわけはないだろうと思って、油断していたそうだ。まぁ、その結果、思いっきり負けて、俺に最高傑作の剣を奪われたとか、ちなみに殆どかっぱらわれたような感じ、剣を奪い取って、俺はすぐさま走り去って逃げたとか。

 うん、俺じゃないね。そもそも、俺の使ってた剣は、親切なおじさんに貰った物だしね。でも、ザランドさん、完全に俺が奪ったと思っているようで、困った。否定しても聞きそうにない、完全に頭がおかしいんだと思う。頭のおかしい人には親切にしてあげないといけないので、優しくしてあげた。ついでに、俺が罪を被ることにした。これで、ザランドさんの気が少しでも晴れるならと思ったら、ザランドさんに剣を渡された。


『儂の最高傑作、『鉄の玉座(アイアン・スローン)』じゃ。悪いと思うなら、ずっと使え。儂は自分の剣は最高の使い手に持ってもらいたいのじゃ』


 俺が以前に預けた剣が、新品同然になって戻って来た。つーか、これなら早く渡してくれませんかね、俺が南に行く前に渡してくれれば良かったと思うんですけど。まぁ、良い剣を貰えたので、我慢しますよ。もともと俺の剣ですが。


 で、それで終わりかと思ったのですが、このザランドとかいう爺さん。すっごく図々しかったです。


『貴様の手下の冒険者どもは随分と情けない装備をしておるのう。儂の剣を持つ男の手下が情けない装備では格好がつかん。儂が冒険者の装備を作ってやろう」


 なんか、そんなことを言って、ザランド爺さんは冒険者ギルドの一員になりました。ついでに、エリアナさんから予算を貰って、魔物から取れる素材を使った武具の開発に着手しました。良くは知らないですが、俺の手下の探知一号が、いつの間にか入手し装備していた、蛇の牙で作られた短剣と蛇の革の軽鎧を見て、開発意欲が高まったとかなんとか。

 そういえば、鍛冶屋の次男とかいう冒険者は、蛇の牙と蛇の革をどう扱ったんだろうか? まぁ、どうでも良い話か。

 俺としてはザランド爺さんは、そんなに必要でもないと思うのだけど、エリアナさん的には結構良い人材だったようだ。

 まぁ、魔物を使った製品が増えるのはギルドの収入が増えることにも繋がるからかな。現状、魔物とか魔石に関しては、ギルドが独占状態という感じだし、今後もそうなる可能性が高いしね。世間の人達の多くは魔物に関わるのを穢れた行為とか思っている感じだし。

 でも、その割には魔物から取れる魔石を使った回復薬とか冷却箱は売れてるんだよね。製品になってりゃ関係ないとか都合の良い考えだな。どうでもいいけど。


 世間の人からは、魔物関係の製品を作るのは嫌われる行為だと分かったので、王都近くの寂れた集落を生産拠点として確保した。

 見えるところでやらなきゃ、文句ないだろ!って勢いでやったが、結果として、めんどくさい周囲からの声は消えた。まぁ、その集落にあまり人が近づかなくなったが、そこは気にしても仕方ないだろう。色々と言われたとしても、結局、必要になるものだから、時間が経てば人々も寛容にもなってくるはずだ。


 生産拠点の集落の運営は、俺がヴィンラント子爵領で引き取った奴らに任せた。もともと辺鄙な農村出身だったので、そいつらの多くは動物を捌いたりするのになれており、魔物を一体丸ごと運ぶことが出来れば、綺麗に解体してくれた。まぁ、魔物を一体運び込むほど余裕がある冒険者は少ないので、そういうことは滅多になかったが。

 急に人が増えたせいで、もともと、その集落に住んでいた人達は肩身が狭い思いをしているそうだが、そんなことは、俺が気にすることではないので放置。


 あとは、魔物関連だと魔物食が少しずつ広まってきている。俺が南部へ連れていった冒険者が、王都周辺に戻ってきても、討伐した魔物を勿体ないからという理由で食べ始めたのが広まり、冒険者の間で魔物を食うことが普通になってきた。

 もともと、王都の周辺では人口に対して、食肉の供給が十分ではないらしく、魔物といえども肉は貴重なものだとか。今では、冒険者以外でも結構な人数が魔物の肉を口にするようになったようだ。そのわりには、魔物は穢れた存在で、魔物に関わるものも穢れた存在だという認識は消えていないが。

 魔物の肉も生産拠点とした集落で大量に加工するようになったが、やはり集落に対する人々の感情は良くない。散々、肉食ってるってのにな。ついでに冒険者の方も、魔物と関わりが強いって理由で避けられているようだが、冒険者が役に立っているのは確実だし、そのうち解決するだろうから、あんまり考えても仕方ないね。


 とりあえず、現状のギルドの収入源は、依頼の仲介料と魔石製品と魔物製品に魔物肉の売り上げだ。他にも細かく、お金が入るらしいが、そんなに細かいことは俺には分からないので、放置。


 現状、困っていることと言えば、税金の取り立てくらいだろうけど、それも解決法はある。新規事業を始めた際、初回は利益の五割を納める必要があるんだとかなんとか、まぁそんなことをエリアナさんが教えてくれた。ついでに月ごとに利益の三割が税金として取られるらしいが、ちょっと取りすぎだと思う。

 なんで、こんなに取られるかというと、冒険者ギルドには偉い人の後ろ盾が無いから、取れるだけとってもいいと考えているのだろうとエリアナさんは言っていた。権力って凄い。

 正直、払う気がしなかったので、脱税することにした。適当な商人に投資という名目で金を預けて、徴税官には、投資に失敗したとか言って誤魔化しておこう。バレたら、組織を畳んで夜逃げすれば良いし。いっそ真っ向から戦ってもいいだろう。

 というわけで、俺は脱税することにしました。投資という名目で預けた金は、すぐに回収できるように手筈を整えています。商人にはお礼を包んでおいたので完璧。

 そして、徴税官を迎えた俺も余裕でした。すっごく疑ってましたが、すぐに証拠は集められないので、その日は帰っていった。この手段を使えるのも数回って感じだと分かったので、もっと上手い脱税の方法を考えなければならない。


 まぁ、時々脱税の方法を考えるということをしていますが、普段の俺の仕事は別にたいしたものじゃない。依頼料の相場を考えたり、素行の悪い冒険者の処罰を考えたり。今後の事業内容を考えたり、予算の使われ方が正しいかを見たり、まぁそんな感じです。デスクワークって奴だね。普通のこと言って、普通にサインしたりしてれば、大丈夫な感じで、すっげー簡単だし。座ってるだけで、お金を貰えるとか楽ちん極まりないね。


 ほんと、ギルドマスターになって良かったよ。



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