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だいたいスラム

 城に居ても、俺の仕事は無いんで、城下町に視察に出ることにしました。

 エイジ君に頼んだ手紙は無事に書き終わり、手紙を届けるために俺の手下も出発したようです。

 そのうち手紙を見て誰かが遊びにやってくるだろうけど、それまでに城も城下町も綺麗にしておきたいよね。


 そんなことを考えながら、俺は城を出て、貴族街へとやって来た。

 貴族街は城のすぐ近くの区画で将来的には偉い奴らとか金持ちを住まわせようと考えてるんだけど、今はスラムです。


 ちょっとねぇ、家捜やさがしを頑張らせすぎちゃったせいで、街区のあちこちにある屋敷の扉はだいたい蹴破られてるし、そこに住んでいたレブナントの首を切り落として門の飾りにしてたりするから、マトモな感性の人間が住むには今はきつい感じです。

 でもまぁ、遊ばせておくのもどうかと思ったんで、ロードヴェルムに攻め込む手伝いをしてくれた奴らの中で、それなりに有力な奴らに屋敷をあげておきました。

 俺の領地で代官をやってくれてる奴とかにね。俺の領地で代官をやってる奴らとかは、アドラ王国の並みの貴族以上の広さの土地を俺の代わりに治めてくれてるわけだし、ちょっとは優遇してやらないとね。

 まぁ、そいつらの殆どは戦が終わると同時に、代官をしている土地に帰っていったんで、屋敷は使われていないけどさ。

 なので、貴族街は閑散としてる。今はレブナントの死体がそこら中に転がってるだけのゴーストタウンなんで、人が増えてくれると嬉しい。


 貴族街を歩いていても特に面白いことが無いので、俺は貴族街を出て騎士街へと向かった。

 将来的には下級貴族とか役人、もしくはそれなりに裕福な奴らを住まわせようって話になってる騎士街だけど、今の所はスラムです。


 なんていうか空気が悪いんだよね。通りを歩いている奴らがだいたい荒んだ感じ。


 原因は娼館とか酒場のせいだと思う。

 ロードヴェルムを攻め落とすってことで軍を率いてきたけど、その時に兵士相手に商売しようって商人や娼婦もくっついてきていたんだけど、戦が終わってもそいつらは帰らなかったんだよね。

 それどころか、俺達が戦闘で疲れてる隙を狙って、いつのまにか騎士街の良い場所に住み着いてる始末で、気づいたらちょっと追い出しづらい程度には、兵士たちの憩いの場になってやがった。

 そういうわけで、騎士街には酒と女を求めてやってくる兵士どもがたむろする場所になっています。


「テメェ、ぶっ殺してやる!」

「やってみろ、ゴラぁっ!」


 歩いていると、きったねぇ声が聞こえてくる。

 見たくないので、目を反らして歩いていると、人間の頭が俺の目の前を通り過ぎ、坂道を転がっていきます。


「やりやがったぞ、この野郎!」

「もういい、ぶっ殺せ!」

「おい! うるせぇぞ! 死にてぇのか!」

「関係ねぇ奴は黙ってろ!」

「それは俺に言ってんのか! 上等だ、クズどもが!」


 あぁ、嫌だ嫌だ。世の中には荒っぽい奴が多すぎるぜ。

 皆殺しにしてやろうか? 俺の街にこんなアホ共が住んでるとか耐えられなくなりそうなんだけど。


 クソどもの怒鳴り声が聞こえてくる方を見ると、兵士どもが武器を抜き放って殺し合いをしていた。まぁ、回復魔法があるから、やりすぎなければ大丈夫だよな。


 俺は関わり合いになりたくないから、どっか別の所に行こう。

 そう思って立ち去ろうとすると、入れ違いにグレアムさんが率いる治安維持部隊がやって来た。

 グレアムさんの姿を見るなり、暴れていた兵士ゴロツキどもは顔を青ざめさせ、武器を手放す。

 俺としては、その選択は良くないと思うんだけど、何を思ってこいつらは武器を捨てたんですかね。


「撃ち殺せ」


 グレアムさんが連れてきた治安維持部隊は即座に銃を構え、銃口を暴れていた兵士たちに向けると、号令に合わせて引き金を引いた。

 撃たれた兵士たちは慌てて逃げるが、その内で鈍い奴は銃弾を食らって、その場に倒れる。


「逃げた奴は追わなくていい」


 逃げられる奴は能力が高いから生かしておこうねって話らしい。

 ちょっと一斉射撃を食らった程度でやられるような奴はゴミなのでいらんらしい。


「こいつが一番悪いってことで良いんじゃないかねぇ」


 グレアムさんがその場に転がっていたゴミの一人を鞘に収まった剣で突っつく。すると、治安維持部隊はそのゴミの体を起こしてグレアムさんの前に座らせる。


「とりあえず治安を乱したということで死刑」


 グレアムさんの剣が閃き、ゴミの首が飛ぶ。

 弁解の余地も無く、即殺が治安維持部隊の治安維持方法らしいです。


「このアホの首はそこら辺に飾っておいてね」


 グレアムさんが命令すると、部下たちが動いて首をどこかに持っていきました。

 きっと、罪状を書いた紙と一緒に広場に飾るんでしょうね。なんでわかるかというと、ついさっき、そんな状態になっている生首を見たからです。


「いやぁ、今回はヤバかったぜ」

「全くだぜ、こういう時は飲みなおすに限る」


 グレアムさんと治安維持部隊がその場を立ち去ると、逃げた兵士たちが戻ってきた仲良く酒を飲みだした。

 さっきまで、殺し合いしていたわけだけど、仲良くなったみたいです。一緒に逃げたことで仲間意識が芽生えたのかな?


 こんな風に兵士たちはグレアムさんに取り締まりを受けているわけだけど、特に不満は無いみたいです。


「だって、悪いことしてるのは俺達だし」

「俺らは口で説明されても何が悪いことか分かんないし、ぶん殴られたりする方が、『あ、悪いことしたんだな』って分かりやすい」

「死ぬ奴がいる? そりゃ死ぬ奴が悪いよ。向こうは手加減してるんだから、逃げられない奴が駄目なだけだって」


 こんな感じです。俺も別に良いかって思ったりするけど、ヨゥドリはこのままじゃ駄目だって言って、必死に規則を作ってます。とりあえず、ぶっ殺すって方針が改まるのはそれが終わってからかな?


 騎士街も特に面白いものが無かったので、平民街に出てみました。

 平民街は特に誰を住まわせるとか決めてないんだけど、まぁ今はスラムです。

 ロードヴェルムを攻める時に結構な勢いで火が出たり、ロードヴェルムを制圧した後のレブナントの残党との主戦場が平民街なので、戦いの爪痕ってのが生々しく残ってるわけです。


 歩いていると、あちこちから銃声やら何やらが聞こえてくるね。

 ついでに通りのそこかしこに人間だったりレブナントだったりの死体が見せしめなのか吊るされてたりするのが、街の景観を彩っている。レブナントの〈能有り〉共の間で流行っている人間の血で描く壁画も街の個性って奴かな。


 見るからに脱走兵って感じの奴らが俺の姿を見るなり、逃げ隠れするのもこの街だけの特徴だね。

 ちなみにレブナントの〈能有り〉共も俺にはちょっかいをかけてきません。明らかに〈能有り〉の動きをしている奴が俺を見るなり〈能無し〉の動きをしだすし、どうやら俺は嫌われているようです。


 平民街の主な住人は〈能無し〉のレブナントとか来るのが遅れて騎士街に入り込むタイミングを逃した商人とか、それとロードヴェルムは住みやすいと騙されてノコノコとやって来た奴ら。

 住んでいるメンツから分かるように平民街が実は一番平和なんだよね。たまに起こるレブナントと治安維持部隊の戦いに巻き込まれなければ、何事も無く暮らせる街です。


 乱暴な人種が少ないから治安維持部隊も優しいよ。

 今も街の通りで喧嘩が起きたんだけど。治安維持部隊がやって来て話を聞いて、ちょっと説教をするだけで済ませてました。

 説教で反省しない奴は騎士街行きだっていうと素直になるらしいね。悪党を気取ってる連中でも騎士街にだけは行きたくないみたい。


 平民街の一画にはレブナントが住む不死人街って場所がある。

 レブナント共とは今も殺し合いをやってるわけだけど、俺達と仲良くしたいって奴もいて、そういう奴らは不死人街ってとこで暮らしてる。


 俺らだって敵対する意思が無い奴らまで殺し尽くしたりはしませんよ。俺の言うことを聞くって約束したレブナントはそこ住むことを許してます。

 他のレブナントからすると、そこに住んでるレブナントは俺の側に寝返った奴らなわけだから、敵対状態になってるみたいだね。逆に平民街の連中とは良い関係を築くことが出来てるみたい。騎士街の連中の評判は悪いけどさ。


 こんな風に色々と街中を見てみたんだけど、俺は気付いたことがあります。

 何に気づいたかというと、街を歩く人についてです。


「女子供が出歩いてねぇんだよなぁ」


 城を出て平民街まで歩いてきたけど、女性と子供の姿を見ていません。


 家に隠れている? 治安が悪いからしょうがないね。

 そういう理由だったら、良かったんだけど、全く違うんだよね。そもそも、女も子供もいないんですよ。

 女はまぁ、娼婦がいるけど、一般女性って奴? そういう人がいないんです。

 ロードヴェルムを攻め落とした時の兵士とかが居ついているだけだから、軍についてこなかった女性も子供いないのは当たり前なんだけどさ。


 ヤバいよね。男女比率で男が9割以上とかさ。そんな街って控えめに言っても地獄じゃねぇ?

 ついでに成人男性率も9割越えてるんだぜ? むさくるしいことこの上ないよ。

 もう、街中が雄臭い。この空気が街の雰囲気を荒ませてるんじゃないかって俺は思う。

 掃除は女性の仕事だとまでは言わないけど、一般的に男よりも綺麗好きが多いわけだし、女の人が多い方が清潔になると思うし、街中を華やかに保ってくれそうじゃない?


 じゃあ、女の子を連れてくる?

 どうやって? 自分から、こんな街に来るかよ。

 来てって頼む? 俺は頼みたくないぜ?

 エリアナさんとかに来てって頼みたくないですよ。


 もう当たり前すぎて、いちいち気にしてたら正気が保てねぇから無視してたけど。

 街の中がくせぇんだよ! クソとかゲロとか腐乱死体があちこちに転がってるから、やべぇんだよ!

 もう、街自体が汚物だからな。


「汚物は消毒」


 そう言って、ロードヴェルムを燃やしたいくらいだぜ。マジでさ。

 だけど、せっかく手に入れたんだし、そういうわけにもいかないのがマジでつらい。


 いっそ、ここは誰かに預けてトゥーラ市で暮らそうかな。

 つーか、一回帰っても良いんじゃない? ロードヴェルムを制圧してから帰ってないわけだし、それを考えたら、トゥーラ市に戻ってエリアナさん達に無事を報告しに行くことも大事だよな。


 そうと決めたら、さっさとこんな肥溜めから逃げよう。

 後のことはヨゥドリとかエイジ君に任せときゃいいさ。




今日(1月25日)はキングダムハーツ3の発売日ですね。

皆さんは買いましたか?僕は買いました。


それはそれとして言ってなかったけど、本作は最終章に入ってます。

3月中には完結するんじゃないかなって思います。

もうちょっと真面目にやってたら1月中に終わったんだろうけど、それは無理でした。



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