全ての元凶
まともに生きている者など、一人としていない城の玉座の間でユリアス・アークスは自分こそがこの国の王であるかのように堂々とした態度で玉座に座っている。
ユリアスは俺達が目の前にいるのにも関わらず、立ち上がる気配も見せずに、こちらを見据えていた。しかし、戦うつもりが無いというわけではないようで、ユリアスを真っ赤な鎧を身にまとい、抜身の剣を片手に持った戦の装いをしていた。
「頭が高ぇよ」
ユリアスが座る玉座は俺達が立っている場所より高い位置にあるため自然と見下ろした形になる。
俺としてはユリアスに見下ろされている状況というのは面白くないので、さっさと引きずり下ろしたいところだ。
「お前に頭を下げる筋合いが感じられないんでな」
見下ろされるのも嫌だし、偉そうなことを言われるのも嫌だよね。
これから、ぶち殺す相手に気を遣うのもおかしいし、それ以前に俺はユリアスが好きじゃないんだよね。だって、これまで戦ってきた中で滅茶苦茶に殴られてきたわけだし、自分を痛い目に遭わせた奴を好きになるのって結構難しいことだと思うんだ。
まぁ、もっと単純に生理的に嫌とか、もしくは運命的に相性が悪いとか、そういうのがあって本能的に嫌ってのもあるかもしんない。
「まぁ、それもそうか」
どうやら、俺が頭を下げない理由を納得してくれたようです。いやぁ、良かった良かった。
思っていたより話の分かる奴かもしれないので、もしかしたら、仲良くできるかもしれんぞ。
とりあえず、色々と話し合って歩み寄りが果たせたら、無抵抗で死んでくれるように頼もう。それが無理そうなら、相手が気を許した瞬間に騙し打ちを決めてやろう。
俺の直感がユリアスに関してはぶっ殺す以外の選択肢が無いって教えてくれてるんだし、その勘に従うのが良いよな。
「別に俺もお前らに頭を下げてもらいたくもないからな。どのみち殺すわけだし、死ぬまで好きにしていたら良い」
どうやら、向こうも俺らを殺す気満々のようです。お互い気持ちが通じ合っていて何よりですね。
これはもう最高にコミュニケーションが取れてるって言って良いよな。
「戦う前に聞いておきてぇんだけどよ」
お互いに始めようかって空気になっている中で、オリアスさんが水を差すように俺とユリアスの間に割って入った。
聞くようなこととかあるか? 俺は無いね。話し合いより、さっさと殺し合いを始めようぜ。
「雑魚の言葉を聞くと耳が腐るし、雑魚に話しかけると口が腐るんだが?」
ユリアスは露骨に嫌そうな顔を自分に話しかけてきたオリアスさんに向ける。しかし、そんな表情を向けられてもオリアスさんは気にせず、自分が抱いた疑問をユリアスに問いかける。
「レブナントとはいえ、どうして自分の国の奴らを殺した? 殺す理由が俺には分からねぇ」
廊下の壁に磔になってた奴らのことかね?
俺も分からんけど、どうでも良いです。別にたいした理由じゃないと思うしさ。
「なんでって言われてもなぁ。お前らに上手く説明できるか分からんから、話すのもどうかと思うんだよな。残念ながら、お前らみたいな低能の雑魚に物事を上手く説明できるような素養を俺は持ち合わせていないんだ」
それって、俺らが駄目ではなく、お前が駄目なんじゃなかろうか。
「あぁ、一応言っておくが気にしないで良いぞ、こういうことは無能に有能が合わせてやらないといけない事柄だからな。それが出来ない俺に対して、お前らは自分たちの低能っぷりを棚に上げて、俺を批判しても良い。無能からの謂れなき批判という、これも優れた者が負う宿命だ」
自分を高いところに上げて、ひたすらにこっちを見下してきやがるね。
さて、どうしたものか、さっきの一瞬、仲良くできるかもとか思ったけど、これはやっぱり無理ですね。この野郎とは一瞬だって仲良くできない気がするぞ。
「……で、結局、何で殺したんだ?」
おっと、オリアスさんは全く気にしていない様子です。
つーか、オリアスさんも実際の所、質問自体はどうでも良いんでしょうね。ユリアスに話しかけている最中にも、オリアスさんは魔法の発動の準備をしているみたいだし、とりあえず時間稼ぎで話しかけているんでしょう。
「そんなん決まってるだろ。邪魔だったんだよ」
邪魔だから殺すとかひどい奴だなぁ。まぁ、俺も何かやろうとしている時に邪魔されたら、ぶっ殺してやろうかって気になりますからね。それで殺ってしまったことも無きにしも非ずなわけで、それを考えると俺もユリアスには偉そうなことは言えないのかな?
「それは、この国を手中に収めるのに邪魔だったという意味か?」
「そんなわけあるかよ、アホ。こんな死人同然の奴らしかいない国なんかどうでも良いっつーの」
まぁ、そりゃあね。俺だって、こんな国いらんわ。住人がレブナントだけの国なんて手に入れても何も楽しくないし、それなら土地と建物だけもらって、他は全部、焼き払うほうが良いって。
「俺にとって邪魔と感じたのは奴らが自分のことを強いとか思ってたからだよ。〈能無し〉にならずに意識を保っていることに妙な自信を持ちやがってさ。自分は特別だとか思ってやがる奴らばっかりだったのさ。お前らが見た磔になっているレブナント共は」
ユリアスが過去に思い出し、ウンザリしたような溜息を吐く。
「お前らは特別じゃねぇ。特別なのは俺だけだ。お前らは強くない。強いのは俺だけだ。お前らが自分を特別だと思うのは許せねぇ。お前らが自分を強いと思うのは許せねぇ。俺だけが特別で、俺こそが最強だ。そんな俺の立ち位置を侵害しようとする奴を俺は絶対に許せねぇ。思うだけ、考えるだけでも駄目だ。『こいつら、自分が強いと思ってるんじゃないか?』という、そんな疑いを俺に抱かせるだけでも駄目だ」
ユリアスの目つきがヤバくなってきているんですが、もう帰ってもよろしいでしょうかね。ここまで来るのは大変だったし、ここで帰ったら大変な損失を被りそうだけど、それはまぁ、後で頑張って取り返せば良いし、今日の所は帰っても良いんではなかろうか?
「俺の『最強』に近づくんじゃねぇよ、ゴミども。俺は『最強』であるだけで充分だ。それ以外はいらねぇし、それ以外の物は全部お前らにやるって言ったのに、奴らは俺の領分に無遠慮に無神経に無作法に入り込んで来やがった。だから、全員ぶち殺したってだけの話だ」
いやぁ、何を言っているか全くわかりません。
これは俺だけでしょうか? もしかして、俺以外の人はユリアスが何を言っているのか分かるのかな。
話は分からないけど、ユリアスの殺気がヤバいくらいに膨れ上がっているのは分かるんだが、これはどうしたもんだろうか?
「そこに転がっているアホもそうなんだが、なんだってどいつもこいつも俺を放っておいてくれねぇんだろうな。俺が最強であるってことを尊重してくれればいいだけなのに、それってそんなに難しいことか?」
不意にユリアスが剣の切っ先を謁見の間の片隅に向ける。
その場にいた全員が、その動きにつられて、切っ先の向けられた先を見ると、そこにはボロ布にくるまれたゴミが転がっていた。
「それがこの国の王様。動き回られると面倒だから手足を切り落とし、騒がれると鬱陶しいから喉を潰し、それでも大きくて邪魔だから、ぶっ壊れないように丁寧に肉を削いで小さくししたヴェルマー王国の国王陛下さ。生かしておいたのは、そいつがいないとレブナント共に指示が出せないからっていう理由なだけで、別に苦しめようとか考えて、そんな姿にしたわけじゃないぜ? まぁ、俺の言うことを聞いてもらわにゃならんから、従順になってくれるように躾はしたけどな」
ヴェルマー王国の国王は呻くことも出来ずに転がっている。流石にアレは俺でもやらないよ。つーか、レブナントに命令するための道具としてだけ生かしておくって発想も理解できないんだが。
「何か恨みがあって、苦しめようとでもしなければ、そんな姿にはしないと思うがな」
どうにも気になってしまったんで口を挟んでしまいました。
自分の命令を聞くだけの道具にするって言ったって、もう少しスマートなやり方があったろうし、そういうことに思い至らなかったとか考えられねぇんだけど。
「恨みねぇ……無くはねぇかな。そこのゴミが、どこぞのクソ悪魔を召喚して国民全員をレブナントにするアホ儀式をしたってのは今でもイラつくな」
玉座のユリアスが部屋の隅に転がっている、ヴェルマー王の成れの果てを睨みつける。
「俺の人生設計では、俺は最強のまま老衰で死んで伝説になっていたはずなんだ。俺はそれで充分だったんだ。俺が死んだ後の未来に、どれだけ強い奴がいようと伝説上の人物である俺には敵わないって言われるんだぜ? 未来永劫、俺が最強であるためには、俺は伝説にならなきゃいけなかった。それなのに――」
ユリアスが指を動かすと、何処からか飛んできた剣がヴェルマー王の成れの果てに突き刺さる。
「そこのアホのせいで全部台無しだ。ヴェルマー王国はどうでも良いが、俺のことは忘れ去られた。その上、この先ずっと俺の意識がある限り、俺はゴミクソ以下の雑魚共から俺の『最強』が汚されないように守り続けなきゃならなくなった」
すまん、何を言っているか分からんのだが。
最強ってそんなに大事か? 話を聞いていると頭の病気としか思えないんだが。
「ガキが死んだくらいでイカレやがって。こんなことなら、王子を殺すんじゃなかったぜ。そう思うよな?」
「何を言っている?」
「なんだ、ヤーグから聞かなかったか? この国の唯一の王位継承者を戦場で偶然を装って、ぶち殺したのは俺だってのをさ。ちょっとした出来心で殺ってしまったんだよ。王子が俺より強いとかいう噂が流れてたしな。それと、俺が本当に最強なのか自分で自分を試してみたくなったって奴? 俺が本当に最強なら、王子を殺した犯人として追われても問題ないだろうってのを確かめたくなって殺ってしまったんだ」
ちょっと待って欲しい。一体全体、この野郎は何を言っているんですかね?
「まぁ、俺が殺したってのはバレなかったんだけどな。ヤーグ辺りが隠ぺい工作をしてくれたんだろう。あの野郎は王子じゃなくて、王女を王位につけようと色々と画策してやがったし、俺が殺したってバレると何か困ることでもあったんだろうな」
怒涛のネタバレなんですが、大丈夫なんですかね? みんな、この野郎が何を言っているか分かる? 俺は良く分かんねぇ。
とりあえず、目の前にいる野郎がイカレてて、ヴェルマー王国に関する厄介ごとの全ての原因だってことだけ分かれば良いと思う。
つーか、この野郎。自分の国の王様をイカレてるって言ってたけど、自分が一番狂ってるじゃねぇか。
「話を聞いて分かったと思うんだが、俺も被害者なんだ。同情してくれても良いぜ?」
するか、アホが! 全部の厄介の原因はこいつじゃねぇか、ふざけんじゃねぇよ。
俺は怒鳴りつけてやろうとユリアスを睨むが、そんな俺よりも怒りを露わにする者がこの場にはいた。
「あぁあああぁぁぁぁぁぁ!」
まともな声も出せずに呻くだけだが、謁見の間の片隅に転がるヴェルマー王の成れの果てがユリアスへの怒りを露わにする。だが――
「うるせぇよ」
ユリアスが軽く手を振る動作に合わせて降り注いだ大量の剣や槍がヴェルマー王の成れの果てを本当の残骸へと変える。
「そういえば、そこのアホには俺が殺ったってことは言ってなかったな。急に騒ぐから驚いてぶっ殺してしまったよ。一体どうしてくれるんだ? これじゃ、レブナント共に命令を出せなくなってしまうじゃないか」
困ったようなことを言っているが、ユリアスの口調と表情に危機感は感じられず、言葉とは裏腹に余裕を感じさせる雰囲気を身にまとって俺達を見据えている。
何があろうと自分には何の問題も無い。何故なら自分は最強だからとか思っているんだろう。これまで奴と戦ってきたせいか、なんとなく奴の考えていることは理解できる。もっとも、なんとなく止まりであって全てを理解できるわけじゃないんだけどさ。
「でもまぁ、もう必要ないか。争いを引き起こし、アホ共が俺を討ち取ろうと乗り込んでくるような状況を作れたんだから、それで充分だな」
ユリアスが玉座から立ち上がり、俺達に向かってゆっくりと近づいていく。
乗り込んできたくはなかったけどな。でも、レブナント共に家の周りを日常的に荒らされるとか我慢できねぇし、その元凶を始末しないと平穏な生活が送れねぇんだよ。
俺らのことなんか放っておけば良いじゃねぇか。別にお前に迷惑を掛けてねぇだしさ。
話聞いてる限りじゃ、ヴェルマー王国自体どうでもいいみたいだし、結局の所は自分が舐められてる感じがするのが気にくわねぇってだけじゃん。
「いい加減、ウンザリだ」
マトモな戦いだと思っている奴います? 全然、マトモな戦いじゃないからね?
「俺が最強だ!」って言っているアホが、最強の自分を敬わない奴はぶっ殺すっていって絡んできているのを俺達が仕方なく相手にしてるってのが、この戦いの根っこだぜ?
目の前にいるキチガイが自分の世界に閉じこもっていてくりゃ、それで済む話なんだよ。俺らはテメェのことなんか知らねぇし、興味も無いんだから放っておけよ。
「最強に拘る理由が分からねぇし、そういう強さを誇るなら勝手にやってくれ。こっちに迷惑をかけない分なら、俺らはお前を最強と認めてやるし、お前を尊重してやるからさ。金や物が欲しいなら貢ぎ物でも何でも、お前にやるから、俺らに関わるんじゃねぇよ」
自分でも気づかない内に、相当イラついていたんだろう。思ったより強い言葉が出てしまった。でも、仕方ないと思うんだ。
だって、コイツさえいなければ、俺らは今頃お家でノンビリゴロゴロ出来ていたんだぜ?
そんでもって平穏に俺の領地を開発して、一攫千金とはいかないだろうけど、それなりの額を時間をかけて稼いで、ちょっとした金持ちになっていたはずなんだ。
そんな予定が、ユリアスとかいうキチガイのせいで全て台無しになっちまったんだから、俺がイラついても仕方ないだろ?
無意識に怒りがこもっていた俺の言葉を聞いたユリアス。その反応はというと――
「はぁぁ」
ユリアスはウンザリしたように大きく溜め息を吐いた。
その態度に俺のイラつきも増していく。こっちがイラついてて、そういう感情を露わにしたのに、そんな態度は無いんじゃないですかね?
「何も分かってねぇなぁ。金? 物? 尊敬? 畏敬? 俺はそういう物は別にいらねぇんだよな」
そりゃ良かった。お前みたいな野郎に何も渡さなくて済むなら、そっちの方が良いからな。
「物事に対する価値観ってのは人それぞれだ」
なんだか神妙な顔になりましたよ、このキチガイ。
なんか語るみたいだけど、みんな聞かなくて良いぞ。どうせ、頭のおかしいことしか言わねぇからな。
「奪えば手に入る物なんかに俺は価値を見出せなくなった。俺が欲しいのは、天の星のように永久に輝く栄光だけだ。だが、それはどれだけ手を伸ばしても掴めず、掴んだと思っても砂のように零れ落ちちまう。だから、俺は星を手にするという瞬間を、せめて夢で見ることで自分を慰めるんだ。それだけが俺の人生の救いだった」
ユリアスが剣を構え、俺達に殺気をぶつけてくる。
口調は穏やかで、表情は今までに見たことないほど優しげだが、今までにないくらいのヤバい雰囲気を全身から発している。
「俺には何もなかった。物心ついた頃には俺が欲しかった全ては予約済みだった。クソ田舎のゴミ貴族が自分の才覚だけで手に入れられて、誰もが羨むような物は強さだけしか残っていなかった。
だから、俺はそれを俺は目指した。『強さ』だけが俺の手に入れられた唯一の宝だ。それを奪おうとする奴、汚そうとする奴は許せねぇんだよな。
気付いているか? お前らが俺と戦って図々しく生きているってだけで、俺の最強を奪い、汚してるんだぜ?」
ユリアスの視線が俺に向けられる。
今までは隠していたのか、その眼にはこれまでには見えなかった、俺に対する明確な敵意があった。
別に敵意を向けられても、どうってことはない。俺もユリアスに敵意のこもった眼差しを向けてるわけだしな。
「色々と話を聞いたんだが、今のアークス家って伯爵なんだって? 家柄は充分すぎるくらい良いよな。その上、学校にも行ってったって? 恵まれた子供時代を送ってるなぁ。それに将軍になって一軍を率いたとかも聞いたぜ。そして今は侯爵って話もな。美人の嫁さんを何人も貰ってるって話を聞いたし、ほんとに良い御身分だ。そんでもって、嫁の一人は公爵家の出身らしいな? すげぇじゃん、その嫁さんの血筋とかを利用したら、もしかしたら王様にだってなれるかもな」
急にどうしたんですかね? そんな俺のことを話して何が言いたいんだろうか。
まぁ、知られても困らないことだから、ユリアスが知っていることはどうでもいいだけどさ。急にそんなことを言いだす理由が分からない。
「俺と違って、何でも持ってるってのがイラつくよ。これが俺の直系の子孫だったら、感じ方も違うんだろうけど、お前は俺の弟の子孫なせいなのか、あまり好意的な気分にならないんだよなぁ」
「なんだよ、嫉妬か」
特に何も考えずに瞬間的に言ってしまいましたが、正解ですかね?
外れてたなら、否定してくれても良いんですが。
「そうかもしれないし違うかもな。まぁ、俺がお前にどういう感情を抱いているにせよ。俺は、俺が最強という夢を平穏に見続ける邪魔をする奴らを、俺の宝を否定し、汚そうとする奴らを絶対に許さないってことは確かだ」
要するに絶対に殺すってことね。グダグダと、どうでもいい話をしやがって。
お前のことなんか知ったことか、ゴチャゴチャ抜かす暇があったら死んでくれよ、頼むから。
「俺に頭を下げるんだった見逃してやっても良かったんだがな。交渉決裂だな」
「最初から交渉する気はなかったけどな」
そうか、俺は交渉する気があったよ。だって、戦うと痛い目に遭いそうだし、話し合いで解決できるなら、そっちの方が俺としては良いんだよね。でもまぁ、駄目なら駄目で仕方ない。
別に交渉の方が良いかもってだけで、交渉以外の手段を取るのが無理ってわけじゃないしな。
交渉以外の手段はなにかって? そんなもん決まってるだろ。
「話し合いが無駄なら、これ以上お喋りをする必要も無いな」
話し合いで解決できないなら、殺し合いで解決するだけだ。
最初から、こうしておけば良かったか? 流石にそこまで野蛮人では無いです。
文明人なら話し合いをするポーズくらいは取らないとね。最初からぶち殺すつもりでも、そういう雰囲気は出さないのが文明人という奴ですから。
「殺せ」
俺の命令を果たすために、兵士たちが武器を構える。
「殺ってみろ」
もう言葉を交わす必要も無いな。向こうも殺る気満々だ。
ユリアスは俺から奪った長剣を手に持ち、構えを取ることも無く、広間の中央に立つ。
じゃあ、お言葉に甘えて殺らせてもらおうか。
俺は大剣を担ぎ、待ち構えるような態勢のユリアスに向けて一気に距離を詰め、大剣を振り下ろした――




