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城門を開けて

 

「おっと、見つけた見つけた」


 俺はレブナントの兵士を貫き、投擲した勢いのまま壁に縫い留めていた大剣を見つけて手に取る。流石に、ユリアス対策で作った剣をユリアスと戦う前に無くすのは良くないよね。

 城壁内に侵入を果たした俺達は、侵入者を排除しようと襲い掛かってくるレブナント共を殴り殺したりしながら、城壁の中を探索しつつ、城門を開ける装置を探している感じです。


『流石にあの大きさの門を人力で開閉するのは不可能だろうから、何か門を開ける装置があるはずだ』


 俺と一緒に壁をよじ登って城壁内に侵入した兵士の中に賢い奴が一人だけいて、そいつが何か装置があるみたいなことを言っていたんで、そいつの言葉を信じて、城壁内を探索しているんです。ちなみに、そんな賢い提案をした奴は真っ先に死にました。

 城壁をよじ登るために武器や鎧を捨てて身軽になっていたから仕方ないって言えば仕方ないけどね。でもまぁ、死んだのはソイツだけで、他の奴は丸腰でも完全武装のレブナント共に突撃して素手で殴り殺して武器を奪っていたりするんだけどさ。


「ぶち殺せ!」


 通路を塞ぐ敵に向かって奪った剣や、そこら辺にあった物を棍棒にしながら、雄たけびを上げて俺の兵士が突撃していきます。一応言っておくと、身軽ならないといけなかったから、みんな上半身裸で俺も上半身裸なんだよね。

 まぁ、防具が無いからといってビビるような性根は持ってないんで関係ないんだけどさ。とはいえ、槍衾を構えている相手に躊躇なく突っ込んでいく蛮族感丸出しの戦い方は如何かと思います。


「あまり無駄死にさせるな」


 真っ先に突っ込でいった兵士が通路を塞ぐように隊列を組んだレブナント共に槍で突き殺されていきますね。

 でもまぁ、ただで殺されるような奴らじゃないんで、体を貫いた槍を掴んで自分の体から引き抜かれないように踏ん張ってくれています。そのおかげで、次に突っ込む奴らは槍を食らわずに済むわけで、それを考えると無駄死にではないのかもしれないね。


「とはいえ、この先もあるからな」


 俺は大剣を担いで、通路を塞ぐレブナントの集団に向かって突撃。一気に距離を詰めて大剣を横薙ぎに降り抜き、敵の集団に叩きつけた。すると、四体か五体くらいのレブナントが俺の一撃が生み出した衝撃に耐えきれず木っ端微塵に砕け散り、砕け散ったレブナントの肉片が舞い上がって通路中に降り注ぐ。


「斬れない武器も悪くないな」


 前に使ってた俺の剣だとスパッと切れすぎて、こんな惨状は作れないからな。

 そんなことを思いながら、もう一度大剣を振り回す。今度の一撃は六体を巻き込んで、一気に粉砕した。

 やっぱりデカい武器は良いよな。適当にぶん回してるだけで敵を倒せるからな。


「侯爵様に近づくな! 巻き込まれるぞ!」


 まぁ、味方を巻き込みかねないって問題もあるんだけどね。つっても、それは戦っている場所が狭い通路だからって理由もあるんだけどさ。

 でも、だからって俺が剣を振らないとなると、こっちの被害が大きくなるからね。ここから先もあるんだし、ここで全力を使うわけには行かないんで、なるべく損耗は少なくしないとね。


「全員、散れ。城門を開けてこい」


 俺は目の前にいたレブナントを蹴り飛ばして、隊列のド真ん中に叩き込む。そして、後ろを振り返り、俺の兵に命令をしました。

 こんな所でゴチャゴチャと戦っていても仕方ないしね。さっさと城門を開けて市内に入り込んだ方が良いと思うんだ。


「蛮族相手に何をしている!」


 おっと、何だか許せない言葉が聞こえたような気がしますね。

 俺達は上半身裸で血まみれですけど、都会っ子の集まりなんですよね。それなのに田舎者扱いされるのはちょっと許せないぞ。

 俺は怒ったので声がした方を睨みつけながら、その方向に向けて剣を担いで走り出す。

 視線の先では、ちょっと豪華な感じのする鎧を着ている奴が通路の奥でレブナント共に守られながら偉そうに指示を出している。


「俺を蛮族扱いとは良い度胸だな」


 俺は隊列の前衛に向けて剣を横薙ぎに降り抜く。槍衾を組んでいても関係ない。俺が振るった大剣が構えられた槍を弾き飛ばし、敵の前衛を粉砕する。


「俺のどこが蛮族だ。言ってみろ?」


 俺は目の前に立つレブナントの頭を握り潰しながら、後ろで指示を出していると思しき奴に尋ねる。しかし、返答は無かった。

 俺に斬りかかってきたレブナントの足を蹴り折って、跪かせるとそいつの頭を引き千切り、隊列の後方に投げ込み、返答を促す。ついでに頭が無くなったレブナントの脚を掴んで振り回し、俺を攻撃してこようとするレブナント共に叩きつけながら、敵の隊列を突破していく。


「化物――」


 敵を突破して、豪華な鎧を着ている奴の前に立つなり、いきなり暴言を吐かれました。

 誰が化物だ。お前らの方が化物だろうが。レブナントに化物扱いされるとか流石に腹が立ったので、俺は何も言わずに大剣を振り下ろして始末する。俺の振り下ろした剣を防ぐことなど全くできずにレブナントは粉々に砕け散った。

 まぁ、発言には気を付けようねって話です。


「もういい、さっさと城門を開けるぞ」


 俺の悪口を言う嫌な奴の相手をしていたら時間を食ってしまいました。

 こんな所にいたら、また嫌な思いをさせられそうなんで、さっさと終わらせようと思い、後ろを振り返ると誰も居ませんでした。

 俺の兵がいるかと思ったけど、俺の命令を受けてどっか行ってしまったんだろうね。俺は侯爵様だから、俺の命令に従うのは当然だけど、俺のことを構ってくれる奴を残しておくのも大事だと思うんだよね。


 一人だけボーっとしているのも良くなさそうなんで俺も城門を開ける装置を探しに行くことにする。

 城壁の内部なのに上の階からも下の階からも、爆発音と怒号が聞こえてくる。爆発音は爆弾か魔法で、怒号は俺と一緒に来た兵士が暴れまわっている声だろうね。ただ、声の数がスゲー多くなっているんですが、どういうことなんでしょうか? 俺たち以外に侵入に成功した奴がいるのかな? 


 ちょっと確認しようと通路の窓から外を見ようと顔を出したら、銃撃を食らいました。

 当たってはいないけど、俺の顔面スレスレを弾丸が通っていたんで、あと少しずれていたら死んでいたと思う。

 これは迂闊に顔を出した俺が悪いのか、外から銃撃を行っている奴が確認もせずに乱射しているのが悪いのかどっちなんだろうか? 俺は恐る恐る顔を窓から顔を出して、もう一度外の様子を確認すると俺を撃った兵士が味方に殴り殺されている真っ最中なのが見えました。

 俺を撃った奴は気づいてなかったけど、その隣の奴は俺を撃ったことに気づいたんだろうね。俺を撃ったのが誰かハッキリさせておかないと隣にいた自分が撃ったと思われるかもしれないから必死だよね。


 まぁ、そんなことはどうでも良いとして俺は外の様子を確認すると、いつの間にか魔法工兵が作ったのか石の階段が出来ており、それが城壁の中へと繋がっていた。

 でもまぁ、それを使えば楽に城壁の中に入れるかっていうとちょっと違う感じで、石階段の上は血の海って感じで大量の死体が階段に転がっており、階段こそが地獄へ一直線に向かう道といった有様。

 そりゃあそうだよね。敵側からしても、そこを通るって分かってんだから攻撃を集中するよね。でもって、戦闘の奴がやられると階段を転がって後ろの奴を邪魔するから、思うように進めなくて集中攻撃を受けまくる感じだし、階段の段差のせいで俺の兵士は良く躓くし、死んだ奴の血が足元を流れているせいで滑りやすくて、よく転んでいるのが見える。

 石階段は幾つかあるけど、どこもそんな感じで思ったより攻め込めてないみたい。とはいえ、全く駄目ってことも無く死にかけながら城壁の中に駆け込むことに成功する奴も結構いるようだ。


「突撃! 死んだ奴、動けない奴は蹴り飛ばせ!」


 グレアムさんが剣を片手に指揮してるのが見える。

 そんな所でゴチャゴチャやってないで、さっさと城壁の中に突入してくれると助かるんだけどね。

 まぁ、今すぐには無理かと思って俺は城壁内を歩き回る。


「何か良い物はありませんかっと」


 城壁内の通路をブラブラと歩いていると、レブナントに遭遇するので大剣で首を刎ねたり、殴り殺したりする。剣で首を刎ねようとする威力がありすぎて上半身が消えてなくなるは愛嬌ってもんだろ。

 城壁内にも銃声が響いてくるようになったので、結構な数が城壁内に入り込んでくれているようなので、城門が開かれるのも時間の問題だろう。

 俺が頑張んなくてもよさそうな感じがしてきたので、ちょっと金目の物は無いかどうか探してみようかなって気分になってくる。


「貧乏は辛いぜ」


 借金がヤバいんで、少しでも稼がないといけないのが世知辛いね。

 俺は遭遇したレブナントの頭を引き千切り、身に着けている物を調べる。生意気にも金の指輪なんかしてやがりますよ。レブナントに指輪とかいらねぇし、俺が貰ってやった方が良いよね。

 俺は拝借した指輪をポケットの中に突っ込む。もう少し大きい革袋か何か持ってくれば良かったと思いつつ、城壁内の探索を再開する。


「外道どもが!」


 銃声に加えて爆発音も増えてきた中で、誰かを罵倒する声が聞こえる。

 俺が声の方に向かうと、そこでは俺の兵士達とレブナントの騎士が武器を手に向かい合っていた。


「殺っちまえ!」


 俺の兵士が組織だった動きで一斉に襲い掛かる。

 一人が魔法を放ち、騎士の視界を封じ、その隙に接近した一人が足を払い体勢を崩すと、残りの兵士が騎士に組み付き、引き倒して床に転がす。そして最後は全員で滅多打ちである。


「おい、まだ殺すんじゃねぇぞ」


 魔法を使った兵士が騎士を滅多打ちにしている兵士たちをたしなめると、その言葉に従って兵士たちは攻撃の手を休め、騎士を立たせる。


「蛮族どもが、ヴェルマー王国に攻め込んできたことを後悔させてやる」


 騎士が何か言っているけど、俺の兵士は特に何も思わないようで、淡々とした様子で騎士の胸鎧を外し、肌を露わにする。


「な、何をするつもりだ」


 魔法を使った兵士はナイフを手に無表情で騎士に詰め寄る。


「何って魔石を貰うんだよ。魔法を無駄に使っちまったからな」


 淡々と告げつつ兵士は騎士の胸にナイフを突き立てる。当然、騎士は暴れて逃れようとするが、騎士を拘束する兵士たちがそれを許さない。


「色々と試した結果、生きている奴から抉り取った鮮度の良い魔石が魔力を回復しやすいって俺達の間じゃ、もっぱらの噂なんでな」


 兵士はナイフを使い、騎士の胸から魔石を抉り取る。

 レブナントはゾンビの仲間みたいな物で魔石があるのは広く知られているし、それを使うことは多いけど、レブナントの意識があるまま抉り取るってのは見たことが無いな。

 生きている奴から取るのって面倒くさいと思うんだけど、わざわざそんなことをする理由ってなんなんだろうか?

 疑問に思いつつ見ていると、魔法を使った兵士がレブナントの騎士から抉り取った魔石をいくつかの小さい欠片に砕くと、その内のひとかけらを口に含み、飲み込んだ。


「結構、良い質だ。おまえらもやれよ」


 魔石の欠片を受け取り、他の兵士達もそれを飲み込む。

 そういえば、魔石を食うと魔力が回復するんだよね。俺もちょっと前にやったことがあるよ。

 ただ、俺が食った魔石は普通の魔物の物だから、ちょっと感覚が違うかも。

 だってレブナントの魔石って、奴らからすると、人間の心臓みたいなもんなわけで、それを抉り取って食っちゃうとか、なんかヤバい感じがしませんかね?


 レブナントの魔石食いは見た目がヤバいから、止めた方が良いって言うべきだろうか? ……まぁ、別に良いか。下手にやめさせて魔力を回復する手段が減る方が良くないもんな。


 そんなことを考えていたら、不意に外から鈍い音が響き渡って聞こえてきた。

 一体何事かと思い、窓の外を見ると、グレアムさんを先頭に俺の兵が一斉に城門の方へと駆け出しているのが目に入る。


「城門が開いたぞ! 全軍進め!」


 どうやら城門が開いたようです。城壁内に侵入した他の奴が頑張ってくれたみたいです。

 いやぁ、俺を金目の物を集めている最中に申し訳ないね。


「閣下、城門が開いたようです。ここから脱出して、ヴィンラント将軍に合流しましょう」


 さっきレブナントの魔石を抉り取って食っていた兵士たちが俺に気づいたようで、声をかけてきた。

 正直言って助かるね。俺は城壁の出口が分からんしさ。ちなみにこいつらが言っていたヴィンラント将軍ってのはグレアムさんのことね。いつの間にか、将軍ってことになってたんだよ。


「うむ、案内しろ」


 俺が頼むと兵士たちは俺に敬礼をし、すぐさま俺の先導を務める。

 職務態度が立派なので、さっきのレブナントの騎士から身ぐるみを剥ぎ取っていたことは見なかったことにしてやろうと思う。


 ほどなくして、俺は案内してくれた兵士たちと一緒に城壁を脱出し、城壁の出口から王都へ侵入。そして、同様に城門をくぐり抜けて王都への侵入を果たしたグレアムさん達と合流を果たす。

 兵の数は少し減ったかもしれないけど、まだまだ大丈夫そうに見える。とはいえ、これを何回もやらないといけないとなると、結構きついかもしれないけど。


「この先の工業区画で一旦、体勢を整える」


 グレアムさんがマジな顔で提案してきたので許可します。俺の方にはそれを却下する理由も無いしね。

 どういう感じで体勢を整えるのかは分からんけど、とりあえず当初の予定通り工業区画に進むとしましょうかね。






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