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ヴェルマー侯爵軍

 農業のことは俺は良く分からないんだけども、麦の穂が実って来たってくらいは見ただけで分かります。結構ギリギリかなぁって思っていた土地の開墾とか種蒔きもレブナントが土地自体は耕していたから、最低限の整備で使える畑とかが残っていたのが助かったね。

 食糧を外から買ってこなくても、領民が飢えない程度には収穫が見込めるらしいし、それ以外にも魔物の牧場も何とかなっているみたいだから、これで領民が食事に困るってことは無くなったらしい。もっとも、それはこのまま全部上手く言ったらの話で、ここから収穫までに何か問題が起きたら、どうなるかは分からないとか。

 まぁ、その辺りはヨゥドリとかエイジ君とかエリアナさんに任せておきましょう。俺が口出ししてもロクなことにならなそうな気がするしさ。


 そういえば、俺が雇った学園の卒業生は無難に働いてくれているようです。別に死ぬほど熱心に働いてもらう必要もないんで問題ないと思う。必死になって働いてもらわなきゃいけないほど困ってはいないしさ。

 逆に考えると行政が必死になって働かなきゃいけないって、それだけマズい状況だとも思うんだよね。なんとなく流れ作業で日々の仕事をこなしていて問題がないなら、それはそれで適当にやっていても上手く回る程度には領内の状況が良いってことだと思うんだわ。そういうわけで、俺は無難に仕事をこなせているだけなら特に言うことは無いね。

 そうそう、学園の卒業生を雇っていたら、学園の方から感謝状と卒業証書が届きました。ついでに俺が名誉理事になったってお知らせも来ました。

 なんでも、俺が卒業生をいっぱい雇ったおかげで学園の卒業生の就職率も上がって、一応は名門である学園の面目が保たれたから、そのお礼なんだとか。

 それと学園に入ると、ヴェルマー侯爵領へ仕官することが出来るみたいに思われていて、そのせいで入学希望者が増え、希望者の親からの自分の子供に色々と配慮してほしいっていう御願いと一緒に渡される寄付も増えていて、学園の経営がうまくいっているから、そのお礼もあるんだってさ。

 別に卒業証書とかいらないんだけどね。まともに授業を受けた記憶も無いし、そんな俺が貰うのってどうなんだろうなって思うしさ。まぁ、貰えるって言うなら、勿体ないから貰っておくけどさ。


 話は変わるけど、最近は兵士も募集していたりする。

 グレアムさんとモーディウスさんが常備軍の増強の必要性を事あるごとに強調してくるので、仕方なく兵士を増やすことにした。

 今までは兵士を集めた所で、それを率いることのできる奴がいないから諦めていたのだけれど、雇った学園の卒業生の中から、何人かは武官にもなってくれる奴らもいて、そいつらに任せようという話になり、兵士の募集を行うことが決定されたわけだ。


 学園のカリキュラムで学んだ程度でも指揮官として教育されている奴がいるのは良いよね。冒険者あがりの連中は普通の兵士を率いるのに向いていないってことも分かったしさ。

 冒険者あがりはパーティーでの戦闘経験はあるんで、ある程度の能力がある奴らでチームを組ませれば、良い働きはするけど、そこらから徴兵してきた奴らを率いるのは苦手な感じみたいなんだよね。

 冒険者あがりと一般兵は戦闘能力が違い過ぎるから、弱い奴らに合わせて動くと本来の動きが発揮できないようだから、無理して一般兵を指揮させるのは止めて、それは学園の卒業生にやらせようって感じです。


 侯爵領には農地になりそうな土地がいっぱいあるんで、開墾して農家でもやれば良いのにと思うけど、兵士を募集すると、想像していた以上に集まってビビった。アドラ王国からガルデナ山脈を越えてまでやってくる奴もいるくらいで、その情熱が俺には理解できない。

 兵士になって一旗あげようって感じなのかな? そういうことをしたければ、冒険者になった方が良いと思うんだけどね。兵士なんて、戦争が無い限りは地味な仕事だぜ? 冒険者の方が派手な生活が出来ると思うんだけど、なんで兵士なんかやりたがるのやら。

 兵士の募集を聞きつけてやって来た奴らをちょっと見てみたけど、殆どが田舎臭い若者で村一番の力持ちとかそういう感じの奴らなんだろ、それ以外は傭兵崩れのゴロツキと、昨今のアドラ王国の不景気とかの影響でクビになったと思しき騎士崩れのオッサンたち。


『なかなか鍛えがいのありそうな連中ですな』


 俺はクソの役にも立たなそうな連中にも見えたんだけど、モーディウスさん的にはアリだったようで、兵士を希望してきた奴らは、ガルデナ山脈のナバル峠にある訓練場に送られていきました。そこで、奴らは兵士としてモーディウスさんが念入りに訓練を施し、兵士として使えるようにするんだとか。

 もとから即戦力を期待していたわけでもないし、戦力が今すぐ必要ってわけじゃないから別に問題は無いね。


 とりあえず、俺の率いるヴェルマー侯爵軍もこれで形にはなるみたいだ。

 グレアムさんとかモーディウスさんの見立てでは、現状、俺が自由に動かせる戦力は4000人くらいらしい。これは補給部隊とかの後方支援の連中を除いた戦場の最前線に立てる奴らの中で、俺の一存だけで動かせる連中らしく、実際にはもう少し動かせる可能性もあれば、これよりも少ない数しか動かせない可能性もあったりする。


 4000人の内の100人くらいが俺の直接率いる連中で一応は近衛兵ってことになってる。全員が冒険者あがりの上、冒険者ギルドの設立当初から俺に従ってくれている古参の連中だ。西部での竜退治にも南部の戦争の時も常に俺と行動を共にしてくれていたので、人格も信用できるし腕も立つと思う。


 他の兵士はグレアムさんが管轄なんで俺はあんまり関心が無い。

 とりあえず、冒険者あがりの歩兵と騎兵が合わせて1000くらいだったかな?

 歩兵の中で銃兵はヨゥドリが50人くらい選抜して狙撃兵に育てていて、戦闘の際もヨゥドリが指揮するって話になっていて、それ以外にも50人くらいが偵察を専門とした専任偵察隊として組織されている。

 残りの歩兵の指揮に関しては、全体への命令はグレアムさんが出すけれど、グレアムさんは騎兵部隊の直接指揮も担当しているので、戦闘の際には兵士同士で何人かのチームを組んで、チームのリーダーの判断に任せるってことにしてる。

 冒険者にはパーティーでの戦い方ってのが染みついているわけだし、チームで動いてもらった方が能力を発揮しやすいみたいだしさ。つっても、好き勝手にチームを編成されると困るんで、チームの人員にはある程度の制限はあったりする。

 前衛は何人までとか決まってたり、斥候が出来る奴を必ず一人は入れないといけなかったりとかそういうルールがあったりして、チームごとの戦力にバラツキが生じないように配慮しているらしい。


 魔法が得意な連中は冒険者あがりだとか貴族出身だとか関係なく、オリアスさんとヤーグさんの指揮下に入ってもらっていて、その数は800くらい。

 その中でオリアスさんが指揮するのが、魔法を使っての戦闘をする魔法兵が200人くらいと、土木作業やらを魔法で行う魔法工兵が400人くらいに、回復魔法とかで怪我した奴を治したりする衛生兵が100。

 残りの約100人は学園を卒業した貴族達で、その内で新式魔法がある程度使える連中をヤーグさんが率いるって話になっている。ヤーグさんは現在のアドラ王国で主流の新式魔法の発明者を自称しているので、実戦での運用も任せて良いだろう流れで指揮官になってしまったわけだが、大丈夫なんだろうか?


 残りの兵士に関してはコーネリウスさんにお任せすることにしました。数は2000人とちょっとくらいかな?

 基本的には以前にユリアスにボコボコにされた貴族とその私兵連中の軍を再編して使い物になりそうな奴らを残した物なんで、ある程度、貴族的として格がある人じゃないと言うことを聞かなそうな恐れがあるんで、一応は大公家のコーネリウスさんにお願いしたわけです。

 学園の卒業生で武官志望の奴らと募集した兵士もこの集団に編成していたりする。

 新兵が多い上、戦場の花形って言われる騎兵も少ないけれど、歩兵の装備に関しては、歩兵の六割は銃を装備した銃兵だから火力はあるし、装備の質だけならアドラ王国でも五本の指に入るとか。

 ちなみに一番はケイネンハイムさんの所らしい、兵士は弱いけれど、それを補うために装備に関しては莫大な額を使っているみたいで、関係者のヨゥドリ・ケイネンハイムもその通りだと言っていた。

 二番目はウチかと思いきや、北部の大公家が地味に装備が良いらしい。北部は良質な鉄が取れるから、良い武具を兵士に与えているし、鉱山の利益でケイネンハイムさんの所と俺の所から大量の銃を買い、兵に与えているとか。

 そのため、歩兵は基本的に銃を持っているのが前提で、そこから更に役割も持たせた編成を取っているっていう話を聞いたりもしている。その上、王家や軍部と仲が良いらしく、イグニス帝国との戦争の際に鹵獲した大砲を秘密裏に譲り受けて、研究をしているっていう話もあるし、既に実用化して量産しているなんて噂もある。

 流石、お金持ちの上に権力を持っているだけあって、東と北の大公家は軍備にもお金をかけているみたいです。じゃあ、西部と南部の大公家はどうなんだろうね? ショボかった記憶しかないし、実際にそうなんだろうね。


 まぁ、装備の話は置いといて、俺が自由に動かせる兵士に関しては4000人が限界だけど、ヴェルマー侯爵領内のあちこちに代官が治めている土地があるので、代官の私兵を動かすこともできる。

 ――ぶっちゃけると代官というか領主なんだけどね。だって、治めている土地の大きさとか普通に○○男爵領とかの名前が付きそうな大きさだしさ。

 それに、ちゃんと税を納めるなら、後は好きなように統治して良いよって言ってるしさ。俺の代わりに領地を管理する代官って感じの職権に収まらない範囲の仕事を任せて、土地ごとの自治をやってもらっているわけだし、それくらいの自由度を与えた方が仕事もしやすいだろうしね。

 俺の立場がアドラ王国の貴族だから、その下にいる奴に勝手に爵位とかを与えられないってだけで、俺が王様だったら、代官をやってる連中には速攻で爵位をあげてしまうんだけどね。

 その代わりに兵士とか借りるけどさ。まぁ、代官連中は冒険者あがりで、俺に従う奴らしかいないし、兵力は貸してくれるんだけどね。ただ、領地の管理もあるから、そんなには借りれないけど。



 まぁ、実際には色々と問題が無くもないけど、俺のヴェルマー侯爵軍はある程度、形になりました。初めて領主軍を編成したにしてはマシだろう。

 とりあえず、整理するとこんな感じかな?


ヴェルマー侯爵軍(約4000人):総大将アロルド・アークス

 近衛兵(約100人):指揮官アロルド・アークス


 第一大隊(約1000人):総指揮官グレアム・ヴィンラント

   騎兵中隊(約300騎):中隊長グレアム・ヴィンラント

   歩兵中隊(約600人):総隊長グレアム・ヴィンラント

     歩兵小隊(約500人)

       歩兵分隊(5~6人編成)×10

     選抜銃兵隊(約50人):隊長ヨゥドリ・ケイネンハイム

     専任偵察隊(約50人):同上


 第二大隊(約2000人):総指揮官ニーズベル・コーネリウス

   騎兵中隊(約200騎)

   歩兵中隊(約1800人)


 魔法大隊(約800人):総指揮官オリアス

   古式魔法隊(約700人):総隊長オリアス

     魔法兵(約200人)

     魔法工兵(約400人)

     衛生兵(約100人)

   新式魔法隊(約100人):隊長ヤーグバール・テルベリエ


 まぁ、こんな感じか。大隊とか中隊とか適当に名前つけたけど別に良いだろ。厳密に決めると面倒くさいし、上から大中小って感じで規模を分ける程度だけど問題ないはず。

 本当はもっと細かい組織図みたいなのをエイジ君が整理してくれたんだけど、良く分かんなかったし、この程度で充分だと思うんだよね。


 しかし、改めて見ると本当に人材いないよな。グレアムさんの名前とか三回も出てるしさ。文官は増えたけど、頼りになる武官というか指揮官が足りないのはどうにもならないね。冒険者が組織の中核を担っているせいか、どうしても最前線での殺し合いが得意な奴らが多くなっちまうんだよな。

 モーディウスさんが、そこらの能無しレブナントと同じように、ガルデナ山脈から動けないっていうクソみたいな縛りがなければ第二大隊の歩兵を任せられるんだけどね。


 まぁ、別に今すぐ戦いがあるわけじゃないし、焦って何とかする必要があることでもないか。組織の骨組みは出来たわけだし、これからノンビリと形にしていけば良いか。

 とりあえず、俺の領地の軍――ヴェルマー侯爵軍がそれなりの形になったってだけでも満足しておくべきだよな。







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