旅の始まり
ギルドマスターになったわけだが、実際に何をするんだろうね。良く分からんよ。そんなことを思っていたら、エリアナさんが提案してきた。
「各地を旅して、冒険者とギルドの存在を広めていきましょう」
エリアナさん曰く、色んな所で冒険者として活躍して、冒険者と冒険者ギルドというのはどういうものかを周知させ、ギルドの運営が開始された際の利用者の増加と、冒険者に対する印象を操作するということ考えているそうだ。あと、最終的にはアドラ王国の全域にギルドの支部を作りたいというのがエリアナさんの目標らしく、そのための下準備もするらしい。
ギルドの宣伝の旅というものには、どうやら俺が行くらしい。エリアナさんが言うには、ギルドの代表だし、一番腕が立つからだそうだ。まぁ、旅行はしてみたいし、それも良いかと思い、了承。
そういうわけで旅に出ることになった俺、なんか同行者にはエリアナさんとカタリナが付くようだ。あと、エリアナさんが連れてきた男たちも一緒らしい、そいつらは俺を『お頭』とか呼んでくるんだが、これはなんなんだろうね。オリアスさんもついてきたがったそうだが、あの人は、しばらく魔石の研究と魔石製品の開発に従事するらしいので、同行はしないそうだ。まぁ、いなくても構わないんだけど。
準備は大変というわけでもなかった。同行者に旅慣れたものがいたので、そいつに金を渡して必需品は用意させた。俺が準備したのは、服と武具くらいだ。いい加減、俺の剣もくたびれてきたし、服も傷んでいるので、思い切って新調しようと思って、色々と店を回った。服は裾の短い黒革の上着と黒革のズボンで揃えてみた。
そういえば、武具店に行った時、俺の剣を見た爺さんの店員が大声を出して俺に掴みかかってきた。なんか、俺のことを知っていたようだけど、俺は知らなかったので、適当に相手をした。面倒くさかった。その店員は『儂の作った剣を貴様は~!』とか怒鳴っていたが、何を言っているのか分からんかった。
とりあえず、俺の剣が欲しかったようなので、鞘ごと渡しておいた。渡すなり、すぐに剣を抜いて店員は、俺の剣を眺めるが、顔色が赤くなったり、青くなったり、忙しそうだった。最終的には顔が真っ白になったが、相手をする気にもならんので、適当に店内を物色して、前々から欲しかった鋼鉄製の手甲と脛当てを見繕った。その間、店員はブツブツと何か言っていたが、あまり興味は無い。
『儂の剣が、こんな姿に……』『いったい、どんな使い方をしたら、こんなボロボロになるんじゃ……』とか言っている声が聞こえた、俺は別の剣を探すのに忙しかったので無視。そろそろ新しいのにしようと思っていたので、その剣はくれてやってもいいので放っておくことにした。気に入っていた剣だが、子供の頃に賭けで、どっかの爺から巻き上げたものなので、無くなっても別に構わない。
というわけで、商品を渡したのだが、反応は芳しくなかった。どうやら、俺が選んだ剣が気に食わなかったらしい。『儂の最高傑作を使っておいて、そんなナマクラを選ぶとは――』とか言われ、俺が選んだ剣はひったくられ、投げ捨てられた。なんなんですかね、この爺は。とか、思ったものの、爺は『研ぎなおす、いや、打ちなおす。五日待て、そうすれば、元の切れ味を取り戻してやる』とかなんとか、まぁ、剣はどうでも良いので、適当に頷いて、手甲と脛当てだけ買って帰りました。ついでに、剣は帰り道に適当な店で買った。もとの剣はまだ爺の所にあるだろう。
そんな風に、旅立ちの準備だけをしていたわけじゃない。他にもいろいろとやった。まぁヤってはいないが、エリアナさんやカタリナと一緒にお出かけしたりもした。どこで聞いたか記憶が無いが、どうやら二人とも、俺の事が結構好きらしいので、こう微妙にイチャイチャしてみたり?
まぁ、本当の所はどうだか分からないので、ちょっとこうお触りをしてみたりとか、とは言っても、おっぱいとかお尻とかは触っていませんよ。偶然を装って、指に触れたり、手を撫でたり、肩を抱いたり、髪を触ったり、匂いを嗅いでみたり?いやぁ、楽しいですねぇ。
結構、二人とも違う物で、エリアナさんなんかは、身体の接触があると、それまで余裕だったのが、急にガチガチに緊張にするのに対して、カタリナの方は身を預けてくるって感じ。
手とか指は、エリアナさんは柔らかくてすべすべしてて、芸術品みたいで頬擦りしたくなりそうだけど、カタリナの方は肌の感じはすべすべしているけれども、手のひらは微妙に硬くて、なんというか家庭的な感じ? こう頭を撫でてもらいたくなるような。そういう手だったね。
肩を抱いてみた感じも、結構違って面白いね。なんとはなく肩を抱いてみたものの、二人とも拒否はしなかったけど、反応は違っていた。エリアナさんの方は肩を抱いた瞬間、一瞬凍りつくんだけど、その後、段々と俺に身を寄せてくる感じで、カタリナの方は最初っから俺に身を預けている感じというか、自分のほうが寄ってくる感じ。
そういえば髪だけれど、二人の髪の触り心地は中々のものだった。エリアナさんの銀色の髪はしっとりとしていて、艶やかで柔らか、髪の中に顔突っ込みたくなるようなものだった。それに対して、カタリナの金色の髪はサラサラと指を滑っていくもので、延々と手の中で髪を弄んでいたくなるような肌触りだった。
という感じ色々と楽しかったわけです。まぁ、こういうことやってたら嫌われるかもしれないけど、その時はその時だよね。どうせ、ああいう美人さんたちは、他に良い男を見つけて去って行くだろうしね。嫌われたとしても、去って行くのが早くなるか遅くなるかの違いしかないだろうし、好きにやることにしたわけです。
まあ、そうやって本命になる人が出てくるかもしれないことを考えると安易にはヤれないので、現状は他愛もない行為で済ませてるってわけですが。まぁ、実際は後々のことを考えると手が出せないだけですがね。俺は処女じゃなきゃヤダってこともないけど、世の中には処女じゃないと嫌って人もいるわけだし、まだ見ぬエリアナさん達の彼氏や旦那のことを考えると、安易に行為に及べないわけです。そういうわけで自重している俺。
という感じで、エリアナさんとカタリナがらみで色々あったけど、それに関しては、まぁ、そのうち。
カタリナが過去話とかしていたけど、別にどうでも良いよね。今は美人さんだし、俺としてはそれでいいんだけど、それだけじゃ駄目なんかね。めんどくさいよ。
他にも、どこぞの貴族のお坊ちゃまと喧嘩になったけど、たいした問題はなかったね。殴り倒して、さっさと、その場から逃げた。その貴族のお坊ちゃんは俺の事を知っていたみたいだけど、俺は知らないので、どうでも良いと思って喧嘩したわけです。
その後、夜中に街をほっつき歩いていたら、黒ずくめの男たち十人ほどに取り囲まれ大変だったけど、武具店で買った剣を抜いて、応戦。
なんか、剣の切れ味が悪かったせいで、相手を真っ二つに斬り裂くということはできなかったものの、俺の剣が当たると、骨やら肉やらが押し潰れて千切れたり、砕け散ったりするので、特に問題はなかった。まぁ、なんというか頭がおかしいのか、死ぬ気でかかってくるものだから、俺も手加減せずに剣を振ったら、十数人分のバラバラしたいが出来上がってしまったわけで、これには少し困った。靴に血が付いたし、剣も汚れた、それに臭いのが、気に入らない。もう少し、死んだ後の臭いというものも気にして生きて欲しいものだと思ったわけです。
そういう色々はあったものの、俺は無事に出発の日を迎える。準備は誰かがやってくれたが、やってくれるんだったらお任せって感じだった。
どうやら、どこかの商人の輸送隊に護衛として付いて行くらしい。エリアナさんが冒険者という存在を売り込んで、護衛の契約を取ったという。枕営業とかしたのかな。まぁ、その辺りは、お好きにとしか言えないね。誰かの股の事情に首を突っ込むような野暮な人間じゃないし、俺って。
そういえば、出発前にオリアスさんから、色々と試作品を貰ったけれど、たいしたものじゃなさそうだし、気にしてもしょうがないね。
まぁ、そういう感じで、俺としては流れに身を任せるような感じで、旅に出たわけです。旅の目的は、冒険者の知名度を上げるだっけ? まぁ、何でもいいや。適当にエリアナさんとかに任せて、俺は旅行を楽しみましょう。
……ところで、目的地ってどこですかね?