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冒険者ギルドができそう

 

 朝起きて、食堂部分に降りてみると、なんだか空気が重かった。なんでしょうかね、これ? 俺はお腹空いたから、ご飯食いたいんだけど。

 まぁ、気にしてもしょうがないと思い、とりあえず席に座る。すると、カタリナがお茶を用意してくれました。なんで、俺に出すのか理由は分からないけど、出されたものは貰う主義なので、飲んでおきます。うん、美味い。

 席を見てみると、エリアナさんと顔の怖いオッサン。カタリナに司祭のおじさん。オリアスさんに、ババアと貧相な感じの女の子が座っています。皆さんはどういう集まりなんだっけ? まぁ、俺の知らない所で仲良いんでしょうね。俺だけのけ者かよ、死ねよ、こいつ等。

 

 はぁ、なんか憂鬱だ。気分悪いかもしれん。なんか体バキバキだし、なんだろうね。あの黒野郎……悪魔だっけか、あれをぶち殺して、寝て、起きたら調子が良くないって、どういうことなんざんしょ。まぁ、理由はどうでもいいんだけど、調子悪いせいで、やる気起きんわ。

 なんか、みんな黙ってて、空気悪いし、俺の知らない所でやってくれませんかね。もう、はっきり言ってやろうか。お前らどっか行け、もしくは俺がどっか行くぞ。

 というか、ご飯はまだ出て来ないんでしょうか。俺、注文したよね? あれ、注文してないかも? そりゃ来ないね。まぁお茶でも飲んで気を取り直して、グイッと。おや、無くなりましたね。

 あら、カタリナさん、おかわりもくれるんですか? なんでお茶を注いだ後、仕事をやり遂げたって顔してんだろ? お茶出しウーマンになっちゃったんだろうか? 人はお茶だけじゃ生きていけないから、固形物も出せるようになったほうが、生き方の幅も広まると思うよ。


 おっと、司祭さんが何か話していますね。どうせ大した話じゃないでしょう。まぁ、聞いてない感じを出すのも悪いので、俺は貴族スタイルで優雅にお茶を飲みながら、聞いている感じを出しておこうっと。


「――革新派は、事件を揉み消そうとしたようですが、どうやら無理だったようで、事を穏便に治めるために捕縛していた守旧派の者たちを解放したようです。全ては死んだ司教の独断専行ということにして、責任逃れをしようとしていますがね。危害はまだ加えられてはいなかったので、ちょっとした誤解で済まそうとしているようです。私とカタリナにも革新派に属する枢機卿の一人が謝罪に来ましたよ。ついでに、司教の地位も与えると言われましたが、断っておきました。もう、この年で厄介ごとは御免なのでね」


 なんか事件があったんでしょうかね? まぁ俺は関係ないからいいか。それよりも、司祭さん、お友達が捕まっていたのか、言ってくれりゃ助けに行ってやったってのに、水臭い奴だなぁ。まぁ、終わったことみたいだし、別にいいか。


「いやはや、私も疲れましたよ。今回の件に巻き込まれた、守旧派の者たちは、厄介ごとに巻き込まれたくないようで、政治や派閥争いに関わらないことにするようです。まぁ、私も孫のカタリナも同じ気持ちですが、信仰を胸に慎ましく日々を過ごそうと思っています」


 さようですか。というか、おじいちゃんなのね、司祭のおじさんて、まぁ老けてるような感じもするし、若いような気もするけど、まぁいい歳なんでしょ。どうぞご自由に隠居してくださいって、隠居とか言ったかな? まぁ、いいか。


「気楽でいいね、そっちは。アタシはこの馬鹿弟子が、教会の奴ら相手にとんでもないこと大立ち回りを繰り広げたって噂を聞いて気が気でないってのにさ」


 なんか、ババア喋り出しましたよ。まぁ、俺には関係ない話なので、お茶でもズズーっと。おや、オリアスさんがババアに首根っこを掴まれています。仲良いですね。俺はババアとは仲良くなりたいとは思わないんだけど。


「しょうがねぇだろ、師匠。あそこで手を貸さなかったら、人として間違ってるぜ。無実の罪で裁かれようとしている奴がいたら助けるのが、人として正しいってもんだろ?」


「アンタは人としての正しさよりも、人生の正しさってものを追求しな! 二十代も半ばを過ぎて、未だにちゃんとした職につかず、日がな一日研究ばっかり。それに揉め事を起こしていい相手の区別もできない。どうすんだい!? 教会なんか敵に回して、古式魔法の使い手が揃って異端者扱いされたら!」


 なんだ、オリアスさんダメ人間じゃないか。定職に就こうよ。まぁ、それはそれとして、この婆さんは大袈裟だな。俺も教会の奴らと喧嘩したけど楽勝だったぞ。あんな程度の奴らだったら、俺は百人までは余裕だね。


「異端者になった奴がどうなるか――――」


 なんかババアが過去話と不幸自慢をしてました。余所でやってくれませんかね。興味ないんで。まぁ、なんとなく分かったのは、なんかババアの旦那が異端者と認定されて教会の奴らに連れていかれたらしいということ。

 教会の奴らは、異端の人間も見捨てないらしく、厳しく教育して、正しい道に戻すらしい。まぁ、その際に鉄の棒やら何やらで、身体を滅多打ちにするとかなんとか。なんだ、その程度かって俺は思うんだが、なぜにみんな深刻そうな顔をしているのだろうか。


「心配はごもっともですが、おそらく協会は今回の件に関わった者に対して、どうこうしようとは思わないでしょう。今の所は、世間の目も厳しいのに迂闊には動けません」

「だと良いがね。アタシら魔法使いは世間と関わらず研究が出来りゃ、後はどうだっていいんだよ」


 司祭さんがババアになんか言った。俺は全く興味がない。それより、なんかオリアスの隣に座っている貧相な女の子が俺を見ていますよ。何見てんですかね、この貧相さん。


「そんなじゃ駄目だろ、師匠! そうやって世の中と関わらないでいるから、俺らの立場がドンドン悪くなるんだ!」


 おやおや、オリアスさんが大きな声を出しています。なにか興奮するような話題あったかな? ほとんど聞き流して理解してなかったの、許してお願い。というか、貧相さんがずっと俺を見てるんですが、なんですかねコイツ。


「魔石を使った技術が確立できれば、俺たち古式魔法使いも再評価されるようになる。世間の目から隠れて惨めに生きる必要もなくなるんだぞ!」

「アンタはまだ、そんなことを言ってんのかい。アンタが魔石と呼ぶそれが世間では、どう呼ばれているのか知っているかい? 『不浄石』だよ、魔物の腹を掻っ捌いて取り出すような石なんて、誰も利用したがらないし、仮に利用できるようになったとしても、『不浄石』なんて呼ばれてるものを取り扱う魔法使いは、どのみち嫌われるだろうよ」


 なんだか、面倒くさい感じだね。まぁ、人間食ったりしてるような魔物の体の中から取り出したものって汚そうだしね。つーか、俺も嫌かも。魔物をバラして中身を取るとか、結構俺も引くし。なんかほら、俺ってお坊ちゃま暮らしだから、不潔なものとか嫌なんだよね。病気になりそうだし。まぁ、好き嫌いは個人によるし、俺は我慢できるんで、どうでもいいんだけど。


「そうだとしても、このまま、何もしないわけにはいかねぇだろうが! ずっと隠れて生きていけるわけじゃねぇんだぞ! 好きで魔法使いになった奴はいいが、そうじゃない奴も大勢いるんだ! そいつらにも隠れて生きろって言うのかよ!」


 なんか、五月蠅いんで注意しときます。


「落ち着け」


 俺が言ったら、オリアスさんは大人しくなりました。人望って奴かな? なんか、オリアスさんが、ため息を吐きました。


「悪いな。ここで揉めるつもりじゃなかったんだ。本当は、色々と話し合ってから来れば良かったんだが、それよりも、お前の人となりを知ってもらった方が、話は早いかと思ってな」


 何の話なんでしょうかね。


「アロルドに頼みたかったのは、俺たち魔法使いの後ろ盾になってほしいって話しだ。アロルドは実質、下町を仕切っているわけだし、性根も悪くない。俺らが庇護を求めるには良い相手だと思ったんだよ。今のまま隠れて生きるよりかは、誰かの下についたほうが良いと考えてな。もちろん、見返りは用意するつもりだった。気づいていただろうが、だから魔石の利用法なんかを見せたんだ。それで、俺たちの利用価値は分かってもらえたと思う。アロルドが俺らを守ってくれるなら、俺らはアロルドの利益になることをするつもりだ。最終的には俺ら古式魔法使いの立場を向上させてくれるって約束してくれるならだが」


 悪いが、話が全然分からない。まぁ、良く分からないが俺の手下になりたいってことだろうか? 断る理由はあるんだろうか、あるのかもしれんけど、まぁ別にいいか。約束もしても良いんじゃないって感じ、守れるときは守るけど守れないときは無視するもんだろうし、約束って。


「俺の下に付きたいというなら、拒否はしないさ、約束も守ろう」


 守れる範囲でだけど。って、なんかババアが俺を睨んでいるんだけど。なんですかね、怖いね。無視して、お茶をズズー。


「アタシは信用できないんでね。こんな話をアタシに何も伝えず、勝手に進めようとした弟子も、何を考えてんだか分からないアンタもね。時間を無駄にした。アタシは帰らせてもらうよ。行くよ、キリエ」


 なんか、すっごく機嫌悪そうにババアは帰ります。俺は悪くないと思うんだけど、どうなんだろうね。たぶん、オリアスさんが悪いんじゃないかな。おっと、ババアと一緒に貧相さんも帰りました。ゆったりした感じの服のせいで、身体のラインが分からない貧相さん。いまいち興味が湧きませんね。帰って結構ですよ。


「悪いな。こうなるはずじゃなかったんだけどな」


 まぁ、オリアスさんてバカっぽいし、色々とミスることもあるんじゃないかな。状況を全く掴んでないけど、色々あるんでしょうね。まぁ、黙って頷いておきましょう。当然、全部分かっている風を装いますがね。


「アロルド様、よろしいでしょうか? ご報告したいことがあるのですが」


 おや、エリアナさん、いらっしゃったんですか。どうぞどうぞ、お話しください。俺は聞きますよって感じで頷いて、お茶をズズーっと。おや、無くなりました。でも、カタリナがすぐに注ぎます。いや、いらないんだけど。まぁ、出されたものは飲みますよ。そのうち。


「アロルド様が以前、おっしゃていた『冒険者』と、それを管理する『冒険者ギルド』に関して、準備が進んでいることをお伝えしようと思い――」


 うん、理解しようとしませんでした。ごめんなさいね。聞いてはいたんですよ。右耳から入って、邪魔するものなく左耳に抜けていく感じで聞いていたわけで、それなのに全く頭に入らなかったというか、なんというか。とりあえず、人から頼まれたことをすればお金が貰えるということは良く分かりました。それで、なんか、俺は『冒険者ギルド』の偉い人になるらしく『ギルドマスター』という役職だそうです。良く分かりませんが、運営に関しては、エリアナさんは頭が良いみたいだし、任せても良いかな。


「運営に関しては任せる。金が必要だったら、これをやるから好きなように使え」


 とりあえず、司教さんから貰った金貨の入った袋を渡した。死んだ人の金だし自由に使っていいよね。俺はすっからかんだけど、その冒険者っていう仕事をやれば、お金は貰えるんだし、別に渡して構わんはず。いやぁ、俺も定職も持ちですか、何をやるのかは分からんけど、頑張るぞっと。


「ありがとうございます、アロルド様。期待にお応えできるよう、努力いたします」


 なんだか、エリアナさん。嬉しそうですね。いやぁ、美人さんに喜んで貰えるのは嬉しいね。そう言えば、俺の隣のカタリナはどうなんでしょうかね。とりあえず、横を見るとカタリナもなんか幸せそうでした、カタリナも美人さんなので、幸せそうな顔を見ていると俺も嬉しくなるね。お茶出しウーマンとしては、お茶を注いでいたら幸せなんだろう。安易に幸せを得られる人生とか羨ましいわぁ。


 なんか、そんなことを考えていると、エリアナさんと司祭さんとオリアスさんで話し合いをしていました。俺は相槌を打ったり、なんか聞かれた時に頷いたり同意したりするだけの存在として、参加していました。


「冒険者の安全を確保するために聖職者の方にも冒険者になっていただきたいのですが、可能でしょうか?」

「革新派は嫌がるでしょうが、守旧派の者たちならば、喜んで参加するでしょう。人のために尽くすのは神の教えにも則していますし、守旧派は聖職者が市井の人々と共に働き、糧を得ることを否定していませんので。それにお恥ずかしい話ですが、守旧派の者たちは皆、懐が寂しい身ですので、人助けをして、金銭を得られるのならば、是非もなく冒険者というものになるでしょう。私もそれなりに弟子を持つ身ですので、声をかけますよ」


「魔法使いの方にも参加をお願いしたいのですが」

「ウチも大丈夫だと思う。やっぱり金に困っているのは多いからな。つっても実戦向きは少ないかもな、研究メインの奴も多いし。それに人と関わりたくないってのも結構いるから、そんなには集まらないかもしれん」

「研究を主としている方でも構いませんよ。将来的には研究部門を用意したいので、そちらをお願いすることなると思いますが、当面は現場で働いていただくことになるかもしれませんが、研究部門を創設することが出来た際には、そちらへの異動も確約します。それと、オリアス様のおっしゃていた魔石の研究も、協力いたします。手始めに冒険者が魔物を討伐した際には魔石の回収を義務付けさせ、魔石の大量確保から始めれば良いでしょうか?」

「至れり尽くせりで悪いな。その方向性で頼むよ。数があれば、研究が捗ると思う。何らかの成果が出たら、冒険者ギルドに還元すれば良いか?」

「ええ、それで構いません。実際に冒険者ギルドが出来上がり、冒険者が活動を行えるようになるまでには、まだ時間がかかると思いますので、皆さんは、お二方はそれぞれお知り合いで、冒険者となっていただけそうな方に、お声掛けください。このようなことで、よろしいでしょうか、アロルド様?」


「ああ、構わない」


 まぁ、なんか色々と話していたようだけど、エリアナさんが頑張っているので、俺は関知せず、とりあえず返事だけをしました。まぁ、それで正解だったようですね。みんな頷いて、何か分かったような感じです。頑張ってください。


 ところで、『冒険者』って言葉は誰が言いだしたんでしょうね。全く記憶にないんだけど。



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