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閑話 邪神は受け入れる

 俺はお前がどんな選択をしようが構わんよ。

 俺にとって面白い面白くないは当然あるが、自分の思い通りにならなかったからと言って腹を立てるほど子供じゃない。

 そもそもが神だからといって何もかもが思い通りになるわけでは無いってのは承知済みの事なんで今更だ。


 俺は最初から言っているだろう?好きなようにしろってな。

 その理由はなんてことは無い。結局の所、正解か間違いかなんてのは誰にも決められないからだ。

 月並みなセリフだがこれに尽きるのさ。


 何千何万と人間を見てきた。その中には魔王を倒す勇者や悪の怪人を倒すヒーローなんかもいた。

 そいつらは世間一般では正しい選択をするが、正しい選択をしたからといって幸せにその後を生きていけるわけじゃない。

 物語のように敵を倒したから終わりと行かないのが人生の難しさって奴でな。世間一般で正しい選択をした勇者が、その後はロクでもない結末を迎えるなんてよくあることだ。

 じゃあ、世間一般では間違った選択をすれば幸せになるかとも言えば、そっちだって良い結末になるわけじゃあない。末路としては大概はそっちの方が悲惨になりがちだな。


 どっち選んでもダメじゃないかって思うだろ?

 まぁ、そういうわけでもない。どっちも全員が全員、不幸せになったわけじゃない。

 中には運よく幸せな結末を迎えた奴はどっちにもいるさ。


 どうやってそいつらは幸せを手に入れたか気になるか?

 別にたいしたことじゃない。単にそいつらの才覚が優れていただけさ。

 勝つ奴はどんな選択をしようが勝利し、幸福を手に出来る。幸運に恵まれていたとか、そういうのを抜きにしてどんな状況でも勝つ奴ってのはいる。


 まぁ、そういうのを見てきたから、俺は好きにしろとしか言えないのさ。

 どんな選択をしたところで負ける奴は負けるし、勝つ奴は勝つ。

 選択の正誤は問題じゃない。結局は選ぶ奴がどうかって話なんだよ。


 だから、お前は好きに生きろ。

 お前が勝つ奴なら何をしようが勝利は手に出来る。


 他人に言われたようにしても勝つことは出来るだろうし、幸せも手に出来る。

 だが、俺に言わせれば、他人の生き方に口を出し、さかしらに正しさを語る奴は傲慢だと思うがな。

 人生を一度も生き切ったことが無い道半ばの人間の癖に何を以て正しいと語れるのかが俺には分からんね。


 人間てのは死ぬまで試験の最中みたいなもんだ。死んでようやく答え合わせが出来る。

 試験途中の奴が正解だと言って答えを口にしたところで、それが本当に信用に値するか?

 お前の生き方に口を出す奴はそんな奴らだ。相手にしても良いが、信用には値しないということを覚えておけ。

 そして、お前の生き方に口を出す奴は誰もまだ答えを知らないってこともな。答えを知らんくせに知ったように偉そうに口にするのは傲慢以外の何者ではないと俺は思うね。


 とまぁ、こんなことを言ったわけだが、俺の言葉も簡単には信用しない方が良いな。

 受け入れるのは良いが、鵜呑みにするな。俺が言いたいのはそれだけさ。


 邪神の癖に優しいって?


 それは逆だな。邪神だから優しいんだよ。

 俺が人間だった世界では神様ってのは試練を与える存在でな。悪魔とかの邪悪とされる存在の方が人に利益を与える。

 どうして人に利益を与えるのか。その理由は人を堕落させるためだ。労せず利益を得られたり、身に不相応な物が手に入るのは人間として堕落するんだとさ。悪魔とかは人間を堕落させるために様々な物を提供する。それによって人を堕落させるわけだ。


 そういう観点で言ったら俺は結構簡単に力やら何やらを与えてるから邪神てことになるわけだ。

 努力はさせるけれども、努力すればそれだけで実になるってのは人を堕落させる行為って判定されてるんでな。

 結局の所、才能が無い奴とかは、その運命を認めて自分に相応しい生き方をすることを促すのが正しい神様の役目ってことなんだろうな。

 それに反しているから俺は邪神というわけだ。人間に身の丈にあった生き方をさせず、やがては神殺しにすらなる奴らを大量生産しているわけだから、そう言われても仕方ないとも言えるけどな。


 おっと、つまらないことを話している内に、そろそろ時間のようだ。

 まぁ、結局の所、俺が言いたいのはいつものように好きに生きろということだ。俺はお前がどうしようが許すよ。

 これから先も色々あるだろうが、お前は自分の思ったようにやると良い。

 それがどんな結末になるかは俺にも分からんが、誰かに従ったところでそっちの結末も分かりはしない。

 だったら自分の人生だ。自分にのみ従って生きるほうが諦めもつくだろう。それがどんな結末になろうともな。


 では、起きると良い。

 起きれば、また何かが始まるだろう。

 始まれば、終わりに向かうだけだ。


 決着は遠いかもしれないが遠すぎはしない。

 いつかは訪れる、その覚悟だけはしておけ。







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