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魂に刻み込まれたレベルでクズ

 目が覚めると、そこは知らない場所でした。まぁ、そういうこともあるよね。なんか一面見渡しても真っ白だし、俺は理解できないけど、ハイセンスだね。


「いや、動じろよ! なんでそんなに余裕!?」


 おや、人がいますなぁ。はっはっはっ、こんな何も無さそうなところにいるなんて、よほどの暇人かおバカさんなんでしょうな。可哀想に。


「なんで、自然な感じでディスるんだよ! 自分を棚に上げるな! ブーメラン突き刺さってんぞ!」


 よく見ると、うっすい顔立ちですね。こんな彫りの浅い顔とか、生まれてくる時になんか事故でもあったんだろうか。


「いや、無いから! なんで、息をするようにディスるの!? 人の顔のことをあげつらうとか無茶苦茶失礼だから!」


 うるせぇなぁ、なんだよコイツ。気でも触れてんのか、発情期の猫の方がまだ静かだよ。


「どんだけ、失礼なこと考えてんだ! つーか、ここまでで何か、おかしいことがあるって気づけよ!」


 おかしいのはお前の頭と顔だろ? お前がおかしいってだけで完結してるじゃないか。つまらんことを言うなよ。


「いや、俺、お前の心、読んで話してっから! 一言も声を発さずに会話が出来てるってところで、おかしいって気づけよ!」


 え、なんだって! ごめん、聞いてなかった。


「お前、いい加減にしろよ。それ、ホント止めろ! マジでムカつくから!」


 なんですかね、この人。怖いんですけど。さっきから怒鳴り散らしてますよ。やっぱり、気でも触れてるってことでしょうね。良く見ると、服も何か変ですし。個性が感じられない襟が詰まった感じの黒い服、制服ですかね。まぁ、どうでもいいんですけど。


「もういい! とにかく、聞けよ。ここは、お前の住む世界とは違う場所だ。俺はお前の意識だけをこの場所に連れてきた。その理由は、お前に重要な話をするためだ」


 どうせたいした、話じゃなさそうだし、真面目な顔して聞いてるフリだけしてよっと。


「心を読んでるっていったよな!? 丸わかりだからな! ていうか、動じろよ!なんで、平気な感じなんだよ!」


 え、あ、はい、聞いてますよ。


「嘘だ! 絶対、聞いてないだろ!」


 まぁまぁ、そんなことは、どうでもいいじゃないですか。早く続きを聞かせてくださいよ。楽しみにしてるんですから。


「つーか、さっきから、なんなのお前! なんで、俺の方が必死になって喋ってんの! 空気読んで心を読まれていることを警戒しながら話せよ。なんで、お前が口を使わない方になってんだ。そういうのは、上の立場の奴がやる役なんだよ!」


 まぁ、なんか、彫りの浅い人はひとしきり騒ぐと、落ち着きました。やっぱり、気が触れてるみたいです。あまり関わりたくないが、それも可哀想だし、少しは話を聞いてやるか。


「もういい。俺は聞き流すことにする。とにかく、俺はお前に伝えなければならないことがあるんで、聞いてほしい。まず最初に、俺の事を教えておく。俺はハルヨシ。名前は、善く治めるって字を書く。役職は管理者代行だ。分かりやすく言うと、この世界の神様みたいなものだ」


 え、なんだって? 聞いてなかった。


「台無しだよ! ホント何なんだよ、おまえ! 話が進まないだろうが! いい加減にしろ!」


 なに、キレてんですかね。頭おかしいなら、家に帰って一生引きこもって、誰にも迷惑かけないように、静かにひっそりと、死んでくれませんかね。


「ああ、もう! なんなんだよ、こいつ! 実際に会うと想像以上にウザい! あの野郎、一番めんどくさいの、押し付けやがった!」


 なんだか、頭を抱えて悶えていやがる、いやぁ普通に気持ち悪いな。貧相な顔でやるから、余計に滑稽だぜ。


「もういい、とにかく俺は神様みたいなもんだ。話があるから聞け。もう、お前が理解してるとか、どうでもいい、とにかく、俺の仕事は事情の説明だけだ」


 なんか、キリッとしだしたよ。そういう表情はキミには似合わないと思うぜ。そういうのは顔の良い奴がするから似合うんであって、キミには無理だ。さっさとお家に帰りなさい。


「無視だ無視。もう絶対にツッコミはしない。とにかく話すぞ」


 もったいつけていらっしゃる。どうぞ、お話ください。どうせ、たいした話じゃないでしょうけど。


「実は、この世界はゲーム……って言っても分からないか、まぁ、とある物語を下敷きに作られた世界だ」


 へぇ、凄いですね、それで?


「いや、もう少し、何か反応が欲しいのだが。こう世界の成り立ちを知ったんだから、もう少し驚きが欲しいんだけど。なんか、これだと俺がスベった感じなんだが」


 いや、関係ないから。別に世界がどうとか関係ないだろ。俺って極めて平凡な男の子ですし、世界とか言われても、どうでも良いです。そもそも世の成り立ちとか、この世の真理とかに興味がないです。消えてください気持ち悪いんで。つーか、アンタ誰だよ。なんで訳知り顔に、そんな話してんの?


「お前、ふざけんな、さっき自己紹介しただろうが! つーか、真面目に聞けよ。この世界、おかしいんだからよ!」


 知るかよ。消えろ、鬱陶しい。いちいち叫ぶな、気持ち悪い。

 そうやってリアクションを大きくするのはお前の芸か? 随分と安っぽい芸だな。それだったら、犬の吠え声でも聞いていた方がマシだな。叫ぶお前と、吠える犬を見世物小屋に並べたら、犬の方が金が取れるだろうな。いや、悪い悪い、お前の方が金取れるな。お前みたいなツラの奴はいないから、物珍しさで金が取れるだろうよ。良かったな、ツラの悪さがプラスに働くぞ。お前の人生で顔の価値が認められる、数少ない機会だ。喜べよ。


「マジで、その脳内罵倒やめて。静かに話すから」


 じゃあ、さっさと話してくださいよ。めんどくさいぁ。俺が真面目な顔して黙って頷いているんだから、進めてくれれば良いのに。


「心読めてるって言ったよな!? 全部聞こえてるから! お前の考え丸わかりだって言ったよな!」


 なんか、それからも、彫りの浅い人はひとしきり叫んでいました。何を言っていたか? 俺が憶えているはずがないじゃないですか、やだなぁ、もう。


「とにかく、この世界はある物語をモチーフにして作られた世界だから、色々とおかしいのは分かるか?」


 分かんないです。


「いいか、この世界は物の単位がメートルとかグラムだし、体格良いとは言っても、お前の身体で、数百キロある岩とか持ちあげるのは常識的に生物として考えたら不可能だからね。ちょっとは疑問に思おうな。正直、俺スゲーイラついてんだよ、こういう雑な設定の世界とか我慢できないし」


 俺に関係ある話になったら、起こしてください。


「お前にも関係ある話だからな? とにかくこの世界が物語をもとに作られた世界である以上、この世界の人間は、その物語の登場人物になる。そして、アロルド・アークス。お前も、その登場人物だ」


 へぇ、そうなんだ。すごいね。で、なんの話してましたっけ?


「ハッキリ言うと、お前の存在がこの世界が作られた理由だ」


 そうっすか。


「ゲーム、いや物語の中のお前の行動に我慢が出来なくなった、とある神が本気でキレた結果、この世界が創られた。物語は決まった展開しかないからな、神様でも変えようがなかったから、物語に似た世界を創って、そこで物語の中の登場人物達の幸せを確保しようとしたわけだ」


 え、なんだって? 聞いてなかった。


「まぁ、その神も相当に俗物だったから、自分に都合の良い物語に似た世界に人間として降臨して、色々と良い思いをしたかったみたいだけど。なんだかんだで、神様っていうのも、直接チヤホヤされることって少ないし、その不満を解消したかったんだろう。そのために、お前らが言う〈新式魔法〉なんて用意したみたいだし、あれって、全く努力しなくても魔力の量次第で努力しなくても、余裕で使えるしな。システム周り凄まじく雑だけど。お前の世界に自然発生した〈古式魔法〉みたいに、難しくて面倒なのは嫌だったようだな。それに、手こずるのも嫌だったようで、登場するはずの魔王なんか、存在を抹消されてるし」


 いつ話が終わるんですかね。聞いてないんで関係ないかもしれませんが、耳に雑音が入るってのも、嫌なんですけど。


「まぁ、そういう色々を準備した上で、その神は一番の不安要素というか、一番許せない存在を物語から、事実上の排除をするために、ある男に呪いをかけた。神から、呪いをかけられた存在、それがアロルド・アークス、お前だ」


 俺の名前が聞こえた気がするけど、気のせいでしょう。あ、続きどうぞ。


「流石に人間を殺すのは自重したようで、頭が悪くなる呪いをお前にかけた。その神は、それで安心だと思ったんだろうな。これで余計なことをされる心配がないって感じに。いや、俺も仕方ないかとは思ったよ、俺の世界には、その神がやったゲームはなかったから、事情を知るために、取り寄せて、そのゲームをプレイしてみたんだけど。お前が鬼畜外道で人間のクズすぎて、擁護のしようが無かった。これを世に出したメーカーは頭がおかしいとしか思えなかった、マジで。だからまぁ、お前が呪われたほうが、この世界は幸せになるんじゃないかと思ったんだけど――――」


 俺は呪われていないんですけど、人違いじゃないですかね?


「なんか駄目で、その神は諦めた。お前の行動がヤバすぎて、神様も匙を投げたわけだ。まぁ、物語っていう空想の話じゃなくなり、現実になったせいで色々とイレギュラーが生じるとは、頭の片隅にあったようだけど、それでもお前は酷過ぎた。気づいた時には、色々と修正不可能になっていた。頭が悪くなったら、色々と行動が抑制され、クズさも抑えられると思ったんだろうけど、全くの無駄だったようだ。それで、その神は気づいたわけだ。これはもう『魂に刻み込まれたレベルでクズ』だってな」


 それって、俺に関係ある話なんですかね?


「その神は、お前がいるこの世界に見切りをつけて、同じような世界を創った。当然、最初っから、お前の存在は消してな。その神は、お前のいない世界で、今は無双チートして楽しく過ごしている。そういうわけで、この世界に興味のなくなった神は、俺の上司にこの世界の管理権を譲渡して、俺はその上司から、管理の代行の仕事を頼まれて、ここにいるわけだ。分かったか?」


 全く分からないっていうか、話を聞いてませんでした。分からないと言うのも恥ずかしいので、分かったふりをして頷いておきましょう。


「全部、聞こえてんだよ! お前、ふざけんな!」


 なんか、この人、無茶苦茶、五月蠅いんですけど。なんなんですかね。というか誰でしたっけ?


「お前、どんだけクズなんだよ!」


 それから、俺は延々と怒鳴られました。全く聞いていなかったので、別にどうでも良いんだけどね。



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