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夜道

息が切れる。すぐに追いつかれるだろう。

追いつかれたらどうなるんだろう。死ぬのかな。最悪。

クロックス脱げたし、足痛いし、息苦しいし、訳わからないし。


ほんと、ここどこだ。

後ろから聞こえる男達の声と、耳元で鳴るよく知った音楽が変に混ざる。





ほんの少し前、私は普通に夜道を歩いていた。目的は犬の散歩。夜道と言っても8時前だ。暗いと言えば暗いが、街灯もあるので真っ暗ではない。

夏休み中の私は半袖短パンで片手にリードを持ち、片手にポケットに入らなかったスマホを持っていた。イヤホンを片耳にしながら音楽を聞いていると、虫の声がうるさいくらい鳴いているのがわかる。


ぐいぐい進む犬が草むらで匂いを嗅ぐ。

トイレ済ましたら帰ろうと思っていた私はまだかな、と目を閉じた。


目を開けて見えたのは、森。



は?

声も出ない。なんだこれ、どうなってんの。

手に持っていたはずのリードはない。携帯は手に持ったままで、変わらず片耳から音楽は流れている。途切れることなく流れる音楽以外で聞こえる音はない。

森とかどこだここ。周りを見渡してもまあ、森だし、木ばっかり。

どうしたらいいわけ、これ。

頭が混乱して恐怖心が襲ってくる。



とりあえず、と思って携帯で連絡を試みる。

しかし、


「圏外…」


まあ、森だし。(2度目)

どうしよう。というか、この状況がわからない。なんで森。そんで私の愛犬はどこいった。

謎しかでてこない。いや、涙もでてきそう。


動いた方がいいのか、動かない方がいいのか。

ウロウロしながらその場から見える景色を眺める。



その時、ガサガサと音がした。

息を詰める。

あ、これやばい。

音はどんどん近づいてくる。なにやら話し声もする。日本語?いや、なんだろう…。というかそもそも人か?森に?

嫌でも警戒心が高まる。もちろん心拍数も上昇中だよ震えそう。

音は近づいてくるのにどこからかがわからない。

こういう時って後ろが怖いよね、ほんとに。ちらちら後ろも見ながら音を聞く。そういえば音楽聴いてたわ心音すごくて忘れてた。

取ろうとイヤホンを引っ張る直前、目の前から男性が現れた。正確には前の木々の隙間から見えた。それも何人も。

「あ、」


相手が声を漏らしたのが聞こえた。

私は逃げた。


彼らが持っている剣に、彼らの着ているまるでコスプレのような服に赤が付いているのを見て。





「おいっ待て!」

「止まれ!」

待てないし止まれないし訳わからないし言葉わかるしあの格好なんだよなんで追ってきてんだよ!


クロックスが脱げて裸足になった私はそのまま走る。携帯を手に持ったままで、音楽も流れたままなんだろうけど気にしてられない。

ちらり、後ろを見ると近づいている彼ら。肺が苦しい。もう無理ですって言ってるけどもう少し頑張ってくれ。しかし体力速さ共に人並みな私が逃げ切れる可能性なんてきっと少ない。

ちらり、後ろを見ると近づいている彼ら。それを確認して前を向くと、目の前には道なんてなかった。


「……っ」

やばいこれは

「おい、お前」

ばっと振り向くと男達がこちらを見ていた。いや、睨んでた。

私も彼らを睨んで、素早く崖下を見た。下は川ですか?なるほど。すぐに目線を直すと、彼らは私にたいして質問を投げかけた。

「お前、あそこでなにをやっていた」

「怪しい服だが一体どこの…?」

「そのまえに!ここはどこですか、貴方達はなんなんですか、何をするつもりで何が目的?」

質問に質問を返すが、仕方ないことだろ。状況がわからない。少なくともここは日本じゃない。私の前にいる彼らは、日本ではありえないだろう、綺麗な緑の髪や赤い髪、金色の瞳、深紅の瞳など。日本どころか地球にそんな人いるのか。髪染め?カラコン?わからないけど、そんなふうには見えない。違和感がないのだ。

「ふざけているのか?」

「いや待て、髪の毛が黒い。聖女様とお揃いだ」

「なんて不届き者…!」

誰が不届き者だ。黒髪おそろっちとか知らんがな日本人みんなおそろっちだわ。いや、それよりもセイジョサマ?こっちのがふざけてるだろ、なにそれ笑える(震え声)


まさかのまさかで、私、トリップってやつですか?異世界?ほんとに?で、なんなのこの危機的状況。



「待ちなさい」

その声とともに彼らの誰かが1歩踏み込んだのが見えた。どんな人か見るまでもなく、私は後ろに飛んだ。


だってこんな劣勢で目の前男に私は生物学上女なのだ。思うところは色々あるだろう。わかるはずだ。でもこの行為は咄嗟すぎて私も少しついていけない。

でも、これで死んだらどうなるんだろ。元に戻れる?それとも死ぬ?

そんなことを思っていたのに、急に落下がとまる。


え、なん…なに、なんで?

「何やってるんですか?」

それ私も思ってる。

手を掴んだその人は、一気に私を引き上げた。離せと言う暇すらなく、私はまた地面と仲良くこんにちはだ。さっきまで浮いてたから。


「全く、びっくりしましたよ」

それ私もだって。

「なんなんですか、離して」

手首を未だ掴んだままのその人。その人は薄い水色の髪で青の瞳だった。綺麗な顔してる。でも今関係ない。顔面殴ったら逃げられないかな無理かな。

「いいえ。これから一緒に来てもらいます」

「なんで勝手に決められなきゃいけないんですか」

「あなたがここにいるからですね」

来たくてきたんじゃないやい!



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