4節 名前
「ダンジョンについて考える前にまず考えなくちゃいけないことがある。名前だ。」
「わたしはマスターに創られた存在ですので、マスター。名づけていただけませんか?マスターの名前も教えてほしいです。パートナーとして。」
さっそくパートナーって単語使ってるな。俺の理想の相手を創ったんだが、相手にとってはそれ以上みたいな存在になってるぞ、俺。
だけど俺まだ名無しなんだよね。よく考えてみれば、俺も生まれてまだ半日もたってないし。
「もちろんだ。ただ俺も名前がまだないんだ。それは君に決めてもらいたい。ファミリーネームはそうだな、ハートというのはどうだろう。」
「ハート・・・素敵です。それでいいです。マスターの名前は本当に私が決めても?」
「ああ、頼む。」
エルフは目を瞑り、これ以上ないくらい真剣に名前を考えている。ただ時々幸せそうににやけているが。パートナーとして創造したエルフの名前を考えながら、疑問に思ったことをコアに確認する。
もしエルフの隷属化を解除したら、対応は変化するのか?するとしたら、それはそれで悲しいが。
サー。大きくは変化しないと思われます。隷属化はマスターへの忠誠付与と反抗抑心抑制が主ですが、彼女の場合、マスターへの忠誠のほか、恋慕の情なども確認できます。おそらくは自身の創造主への尊敬なども含まれますが、それらは隷属化の影響ではありません。
生命体創造の際には隷属化がなくてもマスターへ忠誠を誓うであろう例は温厚で知性のある生命体ほど今後も出てくる可能性が高いと思われます。
マジか。あれが創造主かつパートナーである俺に対する彼女のノーマルだったのか。すごいな創造主。もう彼女にとって神みたいなものなかもしれないな。それならある程度したら彼女の隷属化はといても大丈夫かもな。
「マスター、決めました。ゴッド・ハートというのはいかかでしょうか。」
「ありがとう。俺のことは呼び捨てでいい。君はセレーナ・ハートだ。」
思ったより安直な名前に驚いたが、自分もそんな考えて決めたわけじゃないしいいだろう。理想の相手に名づけられるっていうのは思ったよりもうれしい。ただやはりセレーナにとっては、俺は文字通り神的存在のようだ。まあこれで名無しは卒業だな。