表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三年契約。  作者: 香月紫陽
prologue
1/19

プロローグ




 姿見で、真新しい制服を着た自身を見つめてみた。白のブラウスにグレーのチェックのスカート。紺色のブレザーには、学年を表す赤の校章。大きめのリボンは赤のチェック。そして、紺色のハイソックス。……成程、確かに高校生だ。どこか他人事のように、姿見に映る自身に対してそんなことを思った。

 黒崎伊織くろさきいおり、今日から通う、東條とうじょう高校の新入生だ。ざっとチェックを済ませると、伊織は壁に掛けられた電波時計を見た。まだ、出るには少し早い時間だ。それに、今日は同じ高校に通う幼馴染が迎えに来る。

 とりあえずテレビでも見て時間を潰そうとした時、ふとテーブルに置かれた携帯が着信を告げた。朝早くから誰だ、とサブディスプレイを見て、伊織は目を瞬かせる。そしてふっと笑みを浮かべると、通話ボタンを押した。


「……はい」

『あ、やっと出た。遅いわよ』

「……まだ五秒もたってないんだけど」


 相変わらずだ、と伊織は呆れたように返しながら、ソファに座る。


「で、そろそろ時間なんだけど。どうしたの、母さん」


 電話をかけてきたのは、ロスにいる母親・沙織さおりからだった。確かに時計を見れば、丁度昼を過ぎた時間帯だ。


『ちょっとー、冷たくない?折角六日ぶりに電話掛けられたのに』

「細かいこと覚えてるのは相変わらずだよね、本当」

『どんだけ寂しかったと思ってるのよ!……まあ、それはさておき』


 いくつになってもこのテンションは変わらない。そんな沙織に微笑を浮かべながら、伊織は寄って来た黒猫を撫でる。


『――入学、おめでとう。式に参加出来なくってごめんね、伊織』

「……ん、大丈夫。母さんこそ、ほどほどにね。ほんとワーカーホリックなんだからさ」

『だって楽しいんだもん。仕方ないじゃないの』

「…………」


 仕事中毒と言っても良いほど仕事にのめり込む沙織に、伊織は今度は苦笑を浮かべる。仕方ないか、と半ば諦めつつも再度軽く注意すると、来訪を告げるインターフォンが鳴り響いた。


「……あ、迎え来た」

『麻子ちゃん?』

「そう。……じゃ、行ってきます」

『はい、行ってらっしゃい』


 笑みを含んだ声を最後に、通話を切る。今行く、と外で待つ幼馴染の佐野麻子さのあさこに告げて、ソファでこちらをじっと見つめる黒猫を振り返った。


「……行ってくるね、りんご」


 ひと撫でしてそう言うと、りんご、と呼ばれた黒猫も小さく鳴く。それに微笑を浮かべ、伊織は家を後にした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ