第3話 大宣言!ここから始まるスクランブル!
「それはどうかな?そんなオンボロ作っているようでは。」
と、不穏な声がした。振り向くとその声の持ち主がいた。見た目はインド系の褐色の肌をした少年で、身長はみつばの頭一つ分ほど大きくて眼鏡をかけ、いかにもインテリな容姿。髪はいくつもの方向に跳ねていて、癖毛感MAXといった感じだ。確実に言えることは決してアウトドア派ではないだろうということ。
「オンボロって聞こえたけど、気のせいだよね!?」
みつばの言葉を遮り、ころねが不満たっぷりにつっかかる。
「気のせいじゃないよ。確かにオンボロって言った。」
「なんだって~~!!!」
ころねが頬を膨らませ、いかにも怒ってますというアピールをした。
「見たところ、超電導磁気コイルと液体窒素タンクの冷却系まで搭載して機動性に特化したみたいだけど。そんなチューンじゃ長持ちしないのは目に見えてる、超電導磁気コイルはまだ耐久性に乏しい。機械は半永久的に稼働するからこそ素晴らしいんだ。」
冷静な中に熱のこもったような声でころねに言い放つ。
「そ、それは時間がなくて仕方なく!」
ころねが反論する。
「時間がないのは言い訳だ。機械を作る者として限られた時間の中でも、妥協を許さない物を作りきるという精神は常に持ち合わせるべきじゃないかな?」
「む…むぅ…。」
機械の話でここまでころねを言い負かすとは…。この少年すごいかも。と、みつばは感心しながらこの会話を聞いていた。
「まぁ実際、これを短時間で作るのはすごいと思った。そこは素直に認めるよ」
すごく上から目線な発言だ。よほど機械に自信があるのか。
「確かに君の言うとおりかもしれないけど、初対面でその言い草はないと思うんだけどな!」
確かにころねのいうことはごもっとも。
「人間に興味がなくてね。まぁいきなりだったことは詫びるよ。僕はローハン。秋葉原の二足歩行ロボットメーカーの技術アドバイザーもしている。機械のことなら誰にも負けない自信がある。」
「ローハン…。ローハン!?」
急にころねが驚きの声をあげた。
「…!!!」
驚くみつばだが今回は変な声がでなかった。ほっ、とみつばは安堵するが
「…変な顔。」
とローハンに冷たく指摘され、しゅんと落ち込んだ。声じゃなくて顔にも出ちゃうのか…。
「ローハン!ころねだよ!!ネットでたくさん話したの覚えてる!?」
「…!ころね!?あんたが!?」
ローハンも驚く。どうやらこの2人は知り合いらしい。
「そっかそっかー!君がローハンだったんだ!!ローハンの言葉じゃ素直に聞き入れられるかなぁ!」
「ちょ、ちょっところね!お友達だったのに顔が分からなかったの!?」
「ん?あぁ、違うよ!ネットの中での友達だったから顔は知らなかったんだー!」
なるほど理解。ころねとローハンはお互い機械好きということで、ネットで絡み、友達になっていたらしい。
「あ、あんたがころね…。」
何だか相手がころねと分かった途端にローハンの態度がぎこちなくなった。
「あなたも【秋葉原インターナショナルスクール】に?」
とみつばが気になって聞く。
「え?あぁ。そーだからこの校章をつけてるんじゃないか。その目は何のためについてるんだ??」
「色々見るためだけど…」
「だったらその色々を見てから物事を聞いてくれ。」
「そ、そーだね。」
なんか癇に障る言い方をするな。などと思うみつば。
「ローハン!!言い方がきついよ!!」
すぐさまころねが指摘した。
「そ、そーかな…。気をつけ…る。」
何だろう。ころねに対してはやっぱりどこかぎこちない。もしかして…
「ローハンてさぁ、ころねのこと苦手…?」
「苦手!?そんなわけない!こんなに同じ趣味で盛り上がれた人間なんて今まで…。苦手じゃなくて、むしろ…うん。いや、苦手といえば苦手…なのか…?」
大通りの喧騒に加え、隣の大黒屋ではピンクの髪をした青年が英語でまくしたてているせいで、最後のほうは小さくて聞き取れなかった。しかし苦手じゃないならいったいなぜそんな態度なのだろうと思ってしまうみつば。
「とにかく、こんな喋ってる時間は僕たちにはないと思うんだけど?」
そういってローハンはわざと大げさに時計を確認してアピールする。
「本当だ!急がなきゃ!!!」
そうして早速友達?になったローハンと共に、開店準備のために忙しそうな人が増え始めた道を抜けて学校に向かうのだった。その途中あきばおーに入荷される商品が気になるころねを無理やり連れて行くのには骨が折れた…。
遅刻ギリギリに学校に到着する3人。
「間にあったねー!」
笑顔でころねが言う。
「無駄なおしゃべりがなければもっと余裕をもって到着出来たんだけどね。」
皮肉っぽくローハンが言うが
「ごめんね?」
と素直にころねに謝られると、視線を泳がせて黙りこむしかなかった。
「ローハンも結構おしゃべりしたけどね。」
とみつばがにやついて言うと
「あんたにかまってあげたってことに、しっかり感謝して欲しいな。」
「うぅぅぅぅ~…」
本当に…もう!という感じだった。
「体育館に集合みたい!はやく行こ!!」
そういって笑顔で駆けだすころね。
「ちょ!待ちなさいよ!もう!」
慌てて追うみつばだったが、みつばの顔にも期待の笑みがこぼれていた。
「やれやれだな。」
ローハンは決して走ることなく追いかけた。2人を追うローハンの口元は微笑んでいるようだった。そのローハンの後ろの方で
「学校なんてかったりー」
「めんどくせーよなー」
というある2人の声が聞こえたが、ローハンは軽く一瞥して、何も気にしなかったようにみつばところねのあとを追った。
体育館の前には大きな看板があり、そこにクラス分けの紙が貼ってあった。
「あ!見て見て!!3人とも同じクラスだよ!」
ころねが工具リュックからお手製の蒸気式デジタル拡大鏡を取り出して覗きながら喜ぶ。
「全っ然見えない…私にもそれ貸して~。」
たくさんの人が自分のクラスを確認しようと集まって来ていたので、看板の名前を確認するためにころねの拡大鏡を借りようとする。
「ころねの作った数々のものをバカにしてきたのにこういう時だけ…」
「まぁ固いこと言わないで、いいじゃない!」
ふてった感じになりながらも、拡大鏡を渡してくれる優しいころね。
「あ!ホントだ!みんな一緒で良かったぁ!」
名前を確認して笑顔で喜ぶ。
「ローハンも確認してみる?はい、これで。」
拡大鏡を手渡そうとするが
「ふん。僕には必要ない。もう確認済みだからね。」
得意げな笑みを浮かべながらローハンは応えた。
「ローハンは目がいいんだね!」
「違うでしょ、ころね。ローハンの眼鏡は何のためよ。」
「あ!そっか!あはは!」
ころねの天然ボケをみつばはすかさず冷静にツッコム。
「確かに目は悪いが、この眼鏡に注目したところは褒めてあげたくなるね。まぁ褒めないが。」
「そーなの!?その眼鏡にどんな仕組みが!」
さらっと言うローハンの言葉にころねはすごく興味を湧かされていた。皮肉な物いいはスルー。
「このフレームのボタンを押すと、ズーム出来たり、発信器をつければレーダーで位置を確認できたり、その人の外見の情報を数値化できたりするんだ。」
「「すごーい!!」」
ころねとみつばが声をそろえて驚く。
「ちなみにみつばのスリーサイ―――」
「ちょっっっ!やめて!!!み、見ないでよ!!!」
みつばが一気に顔を赤らめて、ローハンの眼鏡を奪い取ろうとする。
ローハンはみつばをひょいっとかわして、意地の悪い笑顔を見せる。
「冗談だ。第一に君の体に全くの興味もない。」
「……なんだか。。。複雑な気分だわ…。」
ホントに棘がある言い方しかできないんだから…。
するとローハンがみつばからころねの方を見る。
ころねは堂々と胸を張って「どう?」と見せつけてくるが
「ん?あれ??エラー?故障か?」
そういって向き直った瞬間、みつばは眼鏡をローハンからばっと奪い取り、勝手に色々いじりだした。
「お、おい!!そんな乱暴にしないでくれ!機械はデリケートなんだ!」
「ローハンが私でその性能を試そうとしたからでしょ!!」
「あんたは被験者以外に何の価値が――!」
「なんですって!?」
取り合っているうちに眼鏡から煙が上がってきた。
「ちょっと2人ともやめなよ!それも壊れちゃうよ!!」
ころねが止めに入るが、2人の耳には入っていない。ころねの言葉は全くスルーされ、なおも繰り広げられる取り合い。すると眼鏡の回路のショートからか、電流が走った。
「きゃ!」
それに驚いてみつばは眼鏡を落とす。
「あっ!!」
眼鏡が落ちきる前に、ローハンが手を伸ばして拾おうとしたが間に合わず落下。落下した直後、ぼんっ!と軽い爆発音がした。
「…完全にただの眼鏡になってしまったよ。」
拾い上げたローハンが皮肉っぽくみつばに言う。
「もう!2人とも全然ころねの言うこと聞いてくれないから!みつばは壊したこと謝って!」
「ご、ごめんなさい。」
壊したことに対して素直に反省して、謝った。
「分かればいいんだ。」
「ローハンも悪いでしょ!謝って!!」
ローハンが憮然とした態度をとっているが、すかさずころねが制する。
「な、なんで僕が謝らなきゃならないんだ!」
「ローハン~~???」
ころねが顔を膨らませながら迫ってくる。
「っく!ご、ごめん」
「よし!仲直り!」
すごく小さな声だったがころねには聞き取れたらしく、笑顔に戻った。
「…それじゃぁ、席について入学式に出席しましょ!」
みつばが切りだした。
「うん!」
「…ふん。」
ころねとローハンはその提案に同意し、体育館へと移動した。
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3人は体育館に入り、最初から並べてあった椅子に腰を下ろした。座ってからそんなに時間が経っていないのに、みつばもころねもどこかそわそわして落ち着きがなかった。
「2人とも少しは落ち着きなよ。目立つ。」
「そんなこと言われても、これから色んな人と関われるって考えたら…ねぇ?ころね?」
みつばがころねに話を振ると
「ころね、トイレ行きたいの…」
「トイレなのかい!!!まぁいいわ。てか何でさっき行かなかったのよ!」
「だってさっきは全然気にならなかったんだもん!」
「もう…こどもじゃないんだからね!?」
「いや、小学生みたいにそわそわしてるあんたが言えたことじゃないと思うけどね。」
確かにその通りだった。
「うぅぅぅぅ~~すぐ私に対して突っ込んでくるんだからぁ~…」
少しふてくされ気味に言うみつばだが
「間違ったことを言ってるつもりはないよ。」
冷たくあしらわれた。ローハンは私にとって天敵なのかもしれない…。そう思った瞬間だった。
「みつば!トイレ行ってくる!!」
「まだ行ってなかったの!?」
「うん!!」
「本当にあなたって子は…まったく。」
満面の笑みで応えるころねにみつばはただ呆れるしかなかった。
「早く行って来なさい?もうすぐ始まるんだから。」
「はーい!」
そういってパタパタとトイレにかけて行った。
その様子をローハンはじーっと見つめていた。
「何か言いたげな顔してるわね」
「その目にそんな洞察力があるとは思わなかったな」
「うぅぅ…。皮肉な言い方しかできないのかしら!」
「…普段あまり会話なんてしないもんでね。慣れてないんだ。」
そう言ったあとローハンの顔に深い悲しみのマスクが被されたように見えた。
「こっちに友達は…?」
「……。こっちにはあまり。故郷に…。」
「故郷に?」
「いや、何でもない。この街で僕はつくらなきゃならないものがある。そのために僕は…。」
そのために何をするのか言い切ることなく、GALAXY S II何かを熱心に確認しながらローハンは沈黙する。ローハンの目は野望に燃えるように険しい目に変わっていた。
「ローハン…?」
「………。」
少し不安げにみつばはローハンの名前を呼ぶが、ローハンの応答はない。
「ローハン!?」
少し声を大きくして名前を呼ぶと、ローハンは反応した。
「ん?…あぁ。すまない。気にしないでくれ。」
「……。何かあったら聞くからね!」
今はまだ何も聞けないだろうと思って、みつばは気休めの言葉をかける。
「ありがとう。でも気にしなくていい。それより、自分の変な声がでる癖を見つめなおした方がいいと思うけどね。」
「もう!」
話を終わらせるかのように皮肉を言い終わると、ローハンはいつもと変わらない無愛想な顔に戻っていた。
みつばはいつもの調子に戻ったローハンに少しほっとしていた。それと同時に、ローハンの中にある何かを、みつば感じ取った。この先1人で抱え込まずに頼ってくれることを願うみつばだった。
「ただいまー!」
「ひゅぅぅうぅ!」
勢いよくころねに抱きつかれ、南都水蝶拳の伝承者のような声が…。
「あははははは!」
「私で遊ばないでよー!!」
「ごめんねごめんねーーーー!あはは!」
まったく反省してない…。
「あなたがそうなら私にも考えがあるわ…」
そう言ってみつばは手をわしゃわしゃと奇妙に動かし始めた。
「あはは…は…。…え?みつば??その手は一体…。」
ころねはその手が意味することを理解して一歩後ずさる。
「お利口なころねちゃんは理解できたみたいねぇ…。そう。こーするためよ!」
みつばはころねのわき腹を鷲掴み、みごとな手つきでくすぐり始めた。ころねはくすぐりが大の苦手なのだ。
「わぁぁ!あはは!ご、ごめ!はははは!!無理!!むりぃぃぃぃぃ!わはははは!」
「ん~~~?聞こえないわ??はっきり喋ってぇ?」
「ご、ははは!ごめ、なさい、ははは!!許し、ふふふ、も、もう!あは、あぁぁぁ!!」
ころねが悶えたため、ポケットからはハンダゴテやらノギス、使い方も良く分からないたくさんの色々な工具がぼろぼろ撒き散らされていた。よくもまぁこんなたくさん…。
「ふぅ。しょうがないわね。このぐらいで勘弁してあげるわ?」
みつばの顔は勝ち誇ったように、満足げな顔になっていた。
ころねは……
「あはは、は、ふふ、あへへ、ふ……」
くすぐりの余韻が残ってるらしく、ピクピクと少し痙攣しながら不気味に笑っていた。
「……やっぱり子どもじゃないか」
ローハンは引きつった顔でその様子にひとりごちた。
「ん?ローハンもくすぐられたいのかなぁ??」
ローハンは相当の小声だったのに、みつばには聞こえていたらしく、にやついて手をわしゃわしゃしながらローハンに迫る。
「く、来るな!な、何もしてないぞ!!」
「ん~??」
ローハンは抵抗するが、みつばのいたずら心に油を注ぐだけだった。
「ち、ちち、近づくなー!」
叫びながらローハンは慌ててスマホをとりだし、慌てていじり、神田明神のお守りの画像をみつばに見せつけ何とかしようとする。今のみつばはローハンにとって妖怪か何かのように見えるらしい…。
「そんなに嫌なの?冗談よ!ふふふ。」
ローハンの態度がおもしろくてにやけが止まらないみつば。
「か、からかうな!」
「もちろんくすぐられたいのよね。」
「!?何一つ意味がわからない!」
全力で拒む様子からみて、ローハンも相当弱いのね。と確信するみつばだった。
そんなこんなしてる内に、入学式開始のアナウンスが始まった。
「おふざけはこれまでね。さ、式に集中しましょ!」
「誰が空気を乱したと思ってるんだ…!」
全てみつばのせいだというのに、ふざけたことを言うみつばにすぐにツッコむ。
みつばは何も言わずジト目でローハンを見つめ、手をわしゃわしゃと動かし始める。
「……っく!」
ローハンはそれ以上何も言うことができなかった。
「ふふふ」
みつばは満足げに笑い、ローハンから目をそむけた。ローハンの中の負けず嫌いのスイッチが作動し、「いつか覚えていろ」と心で呟くのだった。
式が始まり、国歌や校歌が流され、お偉い方たちの長い話が繰り返されていた。少し疲れてきた頃に、式の締めを飾る理事長の話が始まった。この【秋葉原インターナショナルスクール】の理事長はみつばの叔父で、みつばにとって尊敬する人物だ。そんな理事長は
「全身全霊!!猪突猛進!!切磋琢磨!!有言実行!!以上だ!!」
たったこれだけを学生に伝えた。学生たちの目は点状態だったが、1人だけ目を輝かせて強く頷いている人物がいた。
「うんうん!さすが叔父さん!!あれだけの言葉なのにすごい!!」
みつばだ。
「そこまでむねあつになることばだったかな…?」
みつばをジト目でみつつ、ローハンがころねに尋ねた。
「みつばはすごい叔父さんを尊敬してるからしかたないよ。」
あははと作ったような笑いをしながらころねは軽くながした。
その直後、どこからともなく声が聞こえてきた。
「くっだらねー。」
「何だ?理事長のくせにあれだけかよ。まぁ長ったるい話よりかは全然ましだけど。」
「確かに!てか言ってること意味わかんねぇし。あいつばかじゃね?」
「だなー!!」
明らかに自分たちがバカだということに気付いていない聞き覚えのあるその2人の声は、静まりかえっている体育館では大きすぎるボリュームだった。その声は少し離れていたみつばのところにもはっきり聞こえていた。しかも、それを発端に周囲の学生も「確かに短かすぎてよくわからないかも」「あんなのが校長先生で大丈夫(笑)」などと言うざわつきが生まれはじめた。
「さっきの2人組のせいで!」
元通り、正常に戻ったころねが言う。
「さっきの?」
ローハンが小さな声でころねに尋ねる。
「ローハンと逢う前にちょっとね。同じ学校だったんだ!まったく懲りてないなー。ねぇみつば?あ、あれ?みつばは??」
みつばの方に目をむけるがそこには誰もいなかった。
も し か し て …。
周りがざわつき始めてるのに気付きみんなが視線を向ける壇上に目を移すと…。オレンジ色の髪をして、光り輝くイチョウ型の髪飾りをつけたみつばがそこにいた。
{逆切れ超説教モード}発動状態のみつばが…。
司会者がみつばに戻りなさいと指示をだしたようだが、一瞬でズーンと肩を落としマイクをみつばに捧げた。あの一瞬でかなりのダメージを与えられたようだ。
「そこのあなたたち!!!!!!」
マイクを手にとるとヤンキー二人組を指差しながら大声でみつばは叫ぶ。
そんな姪の姿を学長は薄笑いを浮かべて見守っている。
「っげ!!!!」
「あの女!!同じ学校だったのかよ!!」
あたふたし始める2人組。
「ぜんっっっっぜん!懲りてないのね!いいわ!わかるまで私がここの素晴らしさを教えてあげる!何にも理解できていないあなたたち2人に、分かりやすく簡潔!尚且つ迅速にね!!」
これを言い切るのに息継ぎは存在していない。
「い、いやぁ。もうじゅうぶ―――」
「うるさい!!」
ヤンキーの抗議を全く受け付けないようにみつばは鋭く遮る。
教員たちも慌て始め止めようと動き出すが、理事長であるみつばの叔父がそれを止めた。
みつばの説教じみた話が1分すぎる頃には、その場にいるころねと、理事長を除いてはみんなげっそりしている感じだった。
「あ、あれは…なに?」
みんなと同じくげっそりしたローハンがころねに尋ねる。
「あはは…。あれはころねがみつばの為に作った機械なんだけど。初めての機械作りだったから、色んな副作用があるみたい…」
ペロッと舌をだして答えるころねにローハンは呆れながら首を左右に振った。
「―――いい!?理解できたかしら!?」
みつばの説教が終わるころには…と言っても2分経つぐらいなのだが、ヤンキーを始めとするみんなは、立っているのがやっとの状態にまで疲労困憊していた。恐るべし…。
「は、はい………。」
絞り出すかのようにヤンキーが返事をすると
「じゃぁ最後に!!!」
みつばが切りだした。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」
本気で怯えるヤンキーと、愉快なみんな。
「秋津みつばの名のもとに宣言するわ!!私が、この街が素敵だってことを証明してみせる!!!ここにいない人たち、まだ偏見を抱える人たちに、私が証明してみせる!」
そう、全てはこの一言から始まるのだった。
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