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世界の綻び

02:知らない写真

作者: コトリ
掲載日:2026/10/12

スマートフォンの写真を整理していた。

最近は撮るだけ撮って、そのままにしていることが多い。

いらない写真を消していると、見覚えのない一枚が出てきた。

夜の道だった。

街灯の下に、古い自動販売機が写っている。

その横に、細い道が続いていた。

写真を見ても、どこなのか分からない。

私は少し考えた。

「……こんなところ、行ったっけ」

撮影日時を見る。

三日前の夜、11時42分。

その時間なら、私は家にいたはずだった。

念のため、カレンダーを確認した。

その日は仕事から帰って、夕食を食べて、家で動画を見ていた。

外に出た覚えはない。

それでも、写真は確かに私のスマートフォンの中にあった。

間違えて撮ったのかもしれない。

そう思って、写真を閉じた。


翌日になって、そのことはすっかり忘れていた。

仕事から帰って、何気なく写真を眺めていたとき、また目に入った。

知らない写真。

今度は、少し違って見えた。

写真の端に、小さな公園が写っている。

ベンチの前に、黄色い花が咲いていた。

私はそこで、妙な感じがした。

この公園を知っている気がする。

どこにあるのかは分からない。

けれど、写真を見ていると、右手の奥にコンビニがあるような気がした。

そんなはずはないと思いながら、私は画像を拡大した。

確かに、遠くに白い看板が写っている。

コンビニだった。

それを見た瞬間、なぜか道順まで頭に浮かんだ。

家から出て、交差点を一つ渡る。

まっすぐ歩いて、二つ目の角を右に曲がる。

その先に、この公園がある。

私はスマートフォンを見たまま動けなかった。

そんな場所は知らない。

少なくとも、今まで行ったことはない。

気になって、地図を開いた。

しばらく探していると、似たような場所が見つかった。

市内の外れだった。

私は次の休日、そこへ行ってみた。

写真に写っていた道を見つけるまで、それほど時間はかからなかった。

街灯。

自動販売機。

細い道。

写真と同じだった。

少し先に、公園もあった。

ベンチの前には、黄色い花が咲いていた。

私は立ち止まった。

写真では、花の横に白い小さなものが写っている。

よく見ると、猫だった。

その猫は、今も同じ場所にいた。

私に気づくと、ゆっくり顔を上げた。

なぜか、懐かしい気がした。

私はしゃがんで、猫を見た。

すると猫は、私のところへ歩いてきた。

足元まで来ると、何度か私の靴に体をこすりつけた。

その瞬間だった。

頭の中に、一つだけ映像が浮かんだ。

この公園のベンチに座っている自分。

隣に、誰かがいる。

でも、顔が見えない。

私はその人に向かって、何か話している。

内容は思い出せない。

ただ、最後にその人が言った言葉だけが、はっきり聞こえた。

「また来る?」

私は立ち上がった。

そんな記憶はない。

それなのに、なぜかその言葉を知っていた。

怖くなって、私はその場を離れた。


帰宅してから、もう一度スマートフォンの写真を開いた。

あの写真を見つける。

今朝まで気づかなかったものが、もう一つ写っていた。

公園のベンチの端。

誰かの手が写っていた。

袖だけが見える。

その服には、見覚えがあった。

自分がよく着ているコートだった。

私はしばらく画面を見ていた。

そして、写真の撮影日時をもう一度確認した。

三日前。

11時42分。

その時間、私は家にいた。

そう思っていた。

けれど、写真の中の自分は、誰かの隣で笑っていた。

まるで、何度も来た場所のように。

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