表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

可愛がっていた文鳥を妹に燃やされた

掲載日:2026/06/24

 妹は、この私リミナ・ワーテルの上位互換だった。

 同じ金髪、同じ青い眼、同じ白い肌にもかかわらず、まるで違う。

 私の髪はどこかくすんだ色なのに、妹の髪はとても(つや)やか。

 私の瞳の輝きは鈍いのに、妹の瞳はお店に並んでいる宝石のよう。

 私の肌はただ肉を覆っているだけだけど、妹の肌は潤いがあり、何もしていなくとも化粧をしたかのような華がある。


 妹は生き方が上手だった。

 私が口下手で人見知りなのに対し、妹はおしゃべりが得意ですぐに誰からも好かれてしまう。天性の人懐っこさを持っている。


 そして、妹にとって私は踏み台だった。

 それを象徴するようなエピソードがある。

 家の戸棚には金貨袋が置いてある。私たちの背丈では到底届かない。

 妹――リザイヤが言った。


「お姉様、踏み台になってよ」


「え?」


「買いたい物があるから、あの金貨袋を取りたいのよ」


「ダメよ。そんなの――」


 すると、リザイヤは私の右足を、左足で甘く踏みつける。


「いいから。やりなさいよ」


「は、はい……」


 痛みはなかったけど、私の心は完全に妹に屈服していた。

 私は四つん這いになり、その上にリザイヤが乗り、文字通り踏み台になる。

 ところが、そこにお母様がやってきてしまう。


「なにをしてるの、二人とも!」


 リザイヤの対応はあまりにも早かった。

 即座に泣き出し、「お姉様がやれって……」と私を指差す。


「リミナッ! あなたはなんて()なのっ!」


 お母様は目を吊り上げて怒る。

 私も事情を説明しようとするが、口下手が災いして上手く説明できない。

 私の言い分は全く信じてもらえず、このことは帰ってきたお父様にも報告され、こう言われた。


「お前には失望した」


 これ以降、私は両親から露骨に冷遇されるようになった。

 泥棒するような娘に注ぐ愛情はない。とばかりに。

 後から思えば、これもリザイヤの計算だったんじゃないかと思う。


 私と妹には生まれつき大きな差があったけど、それまでの両親は、私たち姉妹を曲がりなりにも平等に扱ってきた。

 だけど、この泥棒事件で「明らかに劣っている姉に手間をかけてやる大義名分」はなくなったんだもの。

 おかげでリザイヤは可愛い服、可愛い靴、可愛い人形、可愛いぬいぐるみ、みんな独占できるようになった。

 彼女の足の下で、私は灰色のような少女時代を過ごした。


 社交界にデビューしてもそれは変わらない。

 たっぷり愛情を注がれ、エレガントに成長したリザイヤは、期待の子爵令嬢として社交界でも注目される存在になり――私は注目どころか、誰の目にも留まらない。


 こんな会話が聞こえてきたことがある。


「リザイヤさん、あなたが大輪の花だとすると、姉のリミナさんは道ばたの雑草が咲かせた小さな花だね」


「そんなことおっしゃらないで。雑草だって懸命に生きてるんですから。私は雑草でありながら必死に生きているお姉様を誇りに思います」


「君は本当に優しいね」


 いったいどこが優しいのか。

 私を誇りに思うと言っておいて、見下しているのが丸分かりだ。

 だけど、周囲は妹の本性に気づかず、ますますリザイヤは人気を上げることになる。

 ここでも私は踏み台だった。


 そんなある日、私は道ばたで弱っている小鳥を見つけた。

 これは……文鳥?

 それにしては羽毛が妙に赤いけど、これでは目立ってしまい、天敵にも襲われやすいだろう。

 私はつい、この文鳥を拾ってしまった。


 自分の部屋に持ち帰ると、文鳥は非常に懐いてくれて、水やパンの欠片を与えると喜んで口にしてくれた。よほどお腹が空いてたみたい。


「なにか名前をつけてあげたいな……」


 私は羽毛の赤さから、炎を連想し、それにちなんだ名前にしようと思った。


「……フランザ。フランザというのはどう?」


 文鳥が首を縦に振り、ピィピィと鳴いてくれる。


「もしかして、気に入ってくれた? フランザにしましょう!」


 名前を呼ぶと、フランザはよく反応してくれた。

 我ながらメルヘンチックすぎるかもと思ったけど、私はフランザと大いに会話をした。


「うふふっ、あなたと話してたらだいぶ元気になってきたわ」


「ピィ、ピィ」


 フランザのおかげで、ずっと灰色だった私の人生にようやく色が灯った。



***



「好きにしなさい」


 文鳥を飼いたいと言うと、お父様はあっさり許してくれた。

 といっても口ぶりは私に関心がないから、という感じだったけど。

 それでも大っぴらにフランザを飼うことができるようになり、私は嬉しかった。


 フランザのおかげで人生が楽しくなった。

 夜会で相手にされなくても、両親に冷たくされても、リザイヤに踏み台にされても、私にはフランザがいる。


 フランザはとても賢く、トイレの場所などはすぐに覚え、逃げる素振りもないので手間は一切かからなかった。

 私が落ち込んでいると、近くにやってきて、慰めるように寄り添ってくれる。


「ありがとうね、フランザ」


 私がこの子を助けてあげたのに、今では助けられることの方が多い。

 フランザには感謝してもしきれない。


 おかげで私は性格が少し明るくなった。

 社交の世界でも、以前よりは流暢に他の人と話せるようになった。


 一方、リザイヤはというと、このところ荒れていた。

 ある公爵家の令息にアプローチをかけていたのだけど、思うようにいかなかったらしい。

 ようするに、振られたということ。


 家の廊下で見かけた時、あの子はハンカチを床に叩きつけていた。

 その瞬間を目撃した私を睨みつけてくる。


「……なによ」


「あ、いえ、別に……」


「あんた最近楽しそうだけど、どうせあのトリと戯れてるんでしょ? 現実逃避してる分際で調子こいてんじゃないわよ!」


 普段なら「ごめんなさい」と頭を下げるところだけど――


「そうね。私は現実逃避してる。だから、あなたはせいぜい現実で頑張ってね」


「……ッ!」


 いつになく強気な言葉を返してしまった。

 この瞬間こそスッキリしたけど、私はこのことを猛烈に後悔することになる。



***



 それから一週間ほど経ったある日の昼下がり。

 私は買い物から帰って、自宅の部屋に入る。

 すると、机の上に――


「!!!」


 すぐに分かった。

 姿形は面影すら残っていないけど、これはフランザだと。


 それを見計らったかのように、後ろから声がした。


「あぁら? なにそれ?」


「リザイヤ……」


「おやつのチキン? だけどチキンにしては小さいし、ちょっと焼きすぎね」


「リザイヤ……」


「お庭にある焼却炉……お料理に使うにはやっぱり火力が高すぎるみたい」


「リザイヤッ!!!」


 脳が沸騰し、私の視界が真っ赤に燃え上がる。

 私はリザイヤに飛びかかっていた。


 だけど、相手は私の上位互換。掴み合いになったところで、私に勝ち目はない。

 思い切り平手打ちを受け、私は倒れ込んでしまう。


「私がやったって言うの? 証拠もないのにサイテーね」


「う、ううっ……」


「ま、おかげで現実に戻れたんだから感謝することね」


 去っていくリザイヤに再び飛びかかることはできず、私は泣き崩れるしかなかった。


「ごめんなさい……フランザ……。私のせいで、ごめん、なさい……!」



***



 涙も出なくなった頃、気づくと私は川辺にいた。

 フランザを埋葬してあげたいと思ったのだ。

 家の敷地内には埋めたくなかった。そうしたらフランザが安らかに眠れないと思ったから。お墓は家の外に作りたかった。


「ごめんね……フランザ」


 無数に繰り返した無意味な謝罪。

 私がリザイヤに歯向かわなければ、こうはならなかったかもしれない。

 素手で小さな穴を掘り、私はそこにフランザを埋めようとする。


 ――その時だった。


 目の前にパッと炎が舞った。

 私にははっきりと見えた。

 大きな炎の鳥が、翼を広げるのを。


「――ッ!?」


 見ると、手元からフランザが消えている。

 いったいどこへ――


「ん……これでやっと君と喋れるかな?」


 男の人の声。若い。誰なの。私は振り向く。


 そこには私と同い年ぐらいの青年が立っていた。

 少し跳ねのある炎のように鮮やかな赤髪、それに相応しい真紅の瞳、ゆったりとした白シャツに紺色のベストを着て、黒のスラックスを履いている。

 明らかに人生で初めて出会う男性(ひと)。なのに私は自然と呼びかけていた。


「フランザ……?」


 青年は一瞬目を丸くするが、にこやかにうなずく。


「よく分かったね。そう僕はフランザ。君に可愛がってもらっていた文鳥だ」


 当たっていた。

 なぜ当てられたんだろう。多分、身にまとう雰囲気(オーラ)がそっくりだったから。

 だから、自然とフランザと呼んでしまった。


「あなたは……いったい……」


「うん、改めて自己紹介をさせてもらおう。僕の本当の名はフランザ・ニクス。不死鳥なんだ」


「不死鳥……!」


 王国にも不死鳥の伝説はある。

 炎のような鳥だとか、その血を飲めば不老不死になれるとか、たとえ死んでも炎となってよみがえるとか。

 でもまさか、実在したなんて。今日まで可愛がっていた文鳥がその不死鳥だったなんて。

 まだ頭が状況を理解しきれていない。混乱している。

 だけど、これだけは言える。


「あなたは生きてるのね? 元気なのね?」


 フランザはうなずき、両手を握り締める。


「うん、元気元気」


 それだけ分かれば十分だ。


「フランザッ……!」


 私はフランザの胸元に飛び込み、フランザは優しく受け止めてくれた。


「リミナ、僕はもう決して死ぬことはないよ。なにしろ不死鳥だからね」


「うん……!」


 涙は出し尽くしたはずなのに、またも涙が溢れ出る。

 だけど今度の涙はとても心地よかった。

 私はしばし、フランザの温かみと優しさを堪能した。



***



 私とフランザは、川辺にあったベンチのような石に並んで腰かける。


「せっかくだし、一から説明しようか。僕は神界に住む不死鳥王の息子で、一応次の王ってことになってる」


 フランザは不死鳥の王子(プリンス)だった。


「不死鳥は不死なだけでなく、人間からすれば“魔法”ともいえるさまざまな能力を持つ。だけど、不死鳥というのは一度死んで初めて本領発揮できるような性質があってね。僕は父から試練をこなすように言われた」


「試練?」


「乱暴に言うと『力のない状態で人間界に降りて、いっぺん死んでこい』っていう試練さ」


「まあ……」


「僕は力無き一羽の文鳥としてこの国に降り立ち、やがて君に拾われた。君に“フランザ”って名付けられた時は驚いたし、嬉しかったよ」


 そう、私が思いついた“フランザ”という名前は、彼がご両親から付けられた“フランザ”と一致していた。

 そういえば、あの時フランザは喜んでいたっけ。


「あれは……たまたまで……」


「たまたまだからこそ、僕はあの時運命を感じたよ」


 ささやくように言われ、私の心臓が跳ねた。


「で、その後は君も知っての通り。さっき僕は君の妹に焼却炉に放り込まれてね。おかげでこうして君に真の姿を見せることができた」


 私に歯向かわれたリザイヤが、腹いせの矛先をフランザに向けたのだ。


「ごめんなさい……私の妹が……」


「いやいや、僕は彼女に感謝してるよ。おかげでこんなにも早く、君と喋ることができたんだからね」


 “試練”についても色々教えてくれた。

 フランザのおじい様は試練の際、なかなか死が訪れないので、かなりやきもきしたそうだ。孫のフランザにもよくその話をしてくれるとか。

 一方で、フランザのお父上である今の不死鳥王様は、試練を受けた時、あっという間に鷹に食べられるはめになってしまったらしい。


「このことをいじると、父上怒るんだよね~。それに比べれば、僕はなかなか試練を楽しめたよ」


 この不死鳥ジョークには、私も苦笑い気味になってしまった。


 とはいえ、フランザとお喋りするのは楽しかった。

 なにしろ人生で最も私と一緒にいた男性(ひと)なのだから。


 だけど、太陽が沈み、空に赤みが出てきた頃、フランザが言う。


「――これで僕は試練をクリアしたことになる。不死鳥としての真の力を手に入れた以上、神界に帰らなきゃならない」


「え……」


 せっかくお喋りできるようになったのに、もうお別れなの。

 引き止めたい。だけど、一介の人間である私にそんなことできるはずがない。

 胸が締めつけられるような心持ちの私に、フランザは言った。


「リミナ、僕についてきてくれないか?」


「……!」


「いや、もっとはっきり言おう。僕と結婚して欲しい」


 フランザはその赤い瞳で私をまっすぐ見つめる。


「実は……神界においては、名を明かす前に名を当てられるというのは、とても大きな意味があるんだ。それこそ……当てられた側は“この人こそ運命の人だ”と思ってしまうぐらいの」


 なんとなく分かる気がする。

 神様やそのレベルの存在にとって「自分の名」というのは私たち人間とは比較にならないくらい重要なものなのだろう。

 そして私はフランザを拾った時、その名を当ててしまった。


「ただし、僕についてくるとしたら、君にも神格を得てもらわなきゃならないけど……。つまり、僕の血を授けて、君も不老不死になってもらわないといけない……」


 フランザはうつむき、再び私を見た。


「だけど、僕は君についてきて欲しい……一緒に暮らしたいんだ」


 ……なんだかフランザに悪い気がした。

 フランザは多分、塔のてっぺんから飛び降りるような覚悟で、告白してくれたから。

 だけど私の答えは「ついてきてくれないか?」と言われた時点で決まっていた。


「一緒になりましょう」


 私が迷わず答えたので、フランザはかえって戸惑っている。


「ちょ、ちょっと待って。よく考えた方がいいよ。家族とは別れることになるし、後悔することになるかも……」


 私は首を横に振った。


「後悔なんてしないわ。私に後悔することがあるとするなら、それは私のせいでリザイヤの矛先をあなたに向けてしまったことだもの。だから私は絶対後悔しない。あなたについていかせて」


 私ははっきりと返事をした。

 今度はフランザも受け入れてくれて、にこやかに笑む。


「ありがとう、リミナ」


 さっそく血を授かる儀式が行われる。

 フランザは自身の左手で、右腕を傷つけ、垂らした血を私の右手に授けてくれた。

 これで私は神格を得て、人間界ではなく神界の住人となった。

 あとはもう、このまま神界に向かうだけだけど――


「……リザイヤをこのままにしておけないわ」


 結果だけ見ればフランザの覚醒を早めたとはいえ、なんの罪もない小鳥を死に追いやろうとした人間を放置しておくわけにはいかない。


「たとえあなたが許しても、私はリザイヤを許せない。神界に行く前に、あの子に自分のやったことの責任を取らせたいの」


 フランザはうなずく。


「だとしたら、僕は君の夫として、君の期待に応えたい」


「あの子には……あなたと同じ目にあわせてやりたい」


「同じ目……。ということは、僕の炎で焼き尽くすかい?」


 私が頼めば、フランザはやってくれるだろう。

 だけど、私の頭に浮かんでいたのはもっと違う方法だった。


「あの子にあなたの美しい炎はもったいないわ。私がやってもらいたいのは――」


 私の“アイディア”にフランザはにっこり笑う。


「それぐらいなら十分できる。お安い御用だ」


 ありがとう、フランザ。我が夫となる人。

 ――そして報いを受けなさい、リザイヤ。



***



 昼下がり、ワーテル子爵家邸の私の部屋。

 部屋には一羽の文鳥――フランザがいる。

 逃げる気配はなく、陽気にピィピィと鳴いている。

 だけど、そんな穏やかな光景に、あまりに似つかわしくない一人の女が現れる。


 リザイヤだ。相変わらず外見は華やかで美しいけど、眉間にはしわがあり、不機嫌なのは明らかだ。

 ドアを閉め、リザイヤとフランザは一対一になる。


「あのバカ女、グズのくせに私に『現実で頑張ってね』だなんて――このままで済ますもんですか!」


 大声で独り言を漏らす。

 私の反撃は、よほど彼女の心をえぐっていたみたい。

 リザイヤは突如、フランザを右手で鷲掴みにした。


「あの女に思い知らせてやるわ。現実の厳しさってやつをねえ!」


 フランザを握り締めるリザイヤは悪魔のようだった。

 ほんのわずかでも良心があれば、か弱く鳴くフランザを見て「私はなんということを」と我に返るはずだ。

 だけど、リザイヤはそんな素振りは一切見せなかった。


 そのままリザイヤは庭に出て、隅にある焼却炉に向かう。

 薪をくべ、火を起こし、燃え盛る炎を見て、ニヤリと笑む。

 そして、なんのためらいもなくフランザを中に放り込み、扉を閉めてしまった。


「さあ、お焼けなさいな! あの女が泣き叫ぶ姿が楽しみだわ!」


 ――これはフランザが実際に体験したことである。

 フランザの力によって真実が、王国中――いや世界中の人間の脳内に克明かつ鮮明に映し出された。

 あまりにも生々しく残酷な、犯行の一部始終。

 ただの幻覚、作り物などと思う人は皆無だろう。


 さて、世間はどうなるか――当然こうなる。


「これは……リザイヤ嬢か!?」

「文鳥を焼却炉に……なんてひどいことを!」

「いい子だと思っていたのに……。だけど確かに気が荒いところもあったな……」


 しかも、このタイミングで私は姿を消している。

 なにしろ、私はもうワーテル家の人間ではなく、フランザの妻なのだから。


 噂は広まり続け――


「リミナ嬢もいなくなったらしい。まさか、彼女も……!?」

「文鳥を殺した時の悪魔のような彼女なら、あり得るぞ……」

「ワーテル家は呪われてるんじゃないか?」


 人による“炎上”というものは、時に実際の炎より、熱く、永く、広く、しつこく燃え上がり、対象者を苦しめる。

 世界中に自身の本性と悪事を晒された今、リザイヤの逃げ場はどこにもない。

 彼女をそんな風に育ててしまったワーテル家もろとも、その身を業火に焼き尽くされるのみ。


「なんでよっ……! なんで私がこんなことに……!? あの女はどこにいるのよぉ!? 私はこれからどうなるのおぉぉぉ……」


 妹の絶叫は、まるで悪魔の断末魔の叫びのようだった。


 これを見届けると、私とフランザは神界へと向かう。


「行こうか、リミナ」


「ええ」


 フランザは炎の鳥の姿となり、私はその上に飛び乗り、神界へと旅立つ。

 程なくして私たちは結婚し、私は不死鳥王子の妃となった。



***



 ……数千年の時が過ぎた。

 不老不死になったことを、神界の住人になったことを、少しぐらいは後悔するかと思ったけど、あいにく今のところその兆しはない。

 なにしろ、毎日があまりにも楽しいから。

 フランザと一緒にいるだけで、私の心は幸せで満たされ、飽きることがない。


 人間界もずいぶん文明が進歩した。

 ランプは炎でなく電気で照らすものとなり、馬車は自動車になり、人は機械で空を飛べるまでになった。

 当然、娯楽もずいぶん発達している。


 今も変わらぬ青年姿のフランザが私を誘う。


「リミナ、新しいゲームが発売されたから、買いに行こう」


「ええ、前作が面白かったから今作も楽しみね!」


 玉座に座る、赤髪赤髭の威厳たっぷりな不死鳥王――お義父様が呼びかける。


「お前たち、また人間界に降りるのか」


「うん、欲しいゲームがあるから」


 お義父様はため息をつく。


「ワシもいずれはフランザに譲位をする。つまり、お前たちは将来的には不死鳥王とその王妃になるのだぞ。もっと自覚を持ってだな……」


「父上は、人間界にいい思い出ないもんね。なにしろすぐ鷹に食べられちゃったから」


「むむっ……そのことをいじるでないわ!」


 お義父様が顔を真っ赤にする。

 ちなみにお義父様の不死鳥としての姿はやはり巨大で神々しく、まさに“神様”といった風貌だった。そのことをお義父様に告げたら、やけに照れてたけど……。

 私はお義父様をなだめるように言う。


「ゲームを買ったら、お義父様も一緒にやりましょう?」


「むむ……リミナがどうしてもというのなら、一緒にやってやらんでもない。行ってくるがいい」


 晴れて許可が下りたので、私たちは人間界に向かう。


「よし行こう、リミナ」


「ええ!」


 ちょっとゲームを買いにね。






おわり

お読み下さいましてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
えっと、ちょっとだけ気になる事が…【電気】とかどうしてます⁇ゲームをするんですよね⁇ 主人公「え?魔法よ?」あ、大変失礼しましたにゃ。 ♪───O(≧∇≦)O────♪byオイラ
息子嫁にデレデレな不死鳥王良いね
実際に生きた鳥を焼却炉に投げ込む映像を見たら絶句してしまう。 あらすじが面白そうだったから読みましたが大正解でした。 面白い作品でした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ