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シーン9:フックの一言
長い沈黙のあと、徴税官が口を開いた。
「……こちらの税の方が」
一拍置いて、
「分かりやすいですね」
声は低く、淡々としていた。
そこに賞賛も、皮肉もない。
ただ、事実を確認しただけのような口調だった。
卓也は、その言葉の意味を、すぐには理解できなかった。
なぜ異世界の徴税官が、
現世の納付書を「分かりやすい」と言ったのか。
答えは分からない。
だが、一つだけはっきりしたことがある。
――自分は、とんでもなくおかしな世界に来てしまった。
そう直感した瞬間、
納付書の重さが、
さっきより少しだけ現実味を帯びた。




