シーン7:時間の提示
卓也は、懐に残っていた納付書を取り出した。
しわのついた紙。
角は擦れ、文字も少し薄れている。
だが、その紙が──
今、この場で、わずかに光った。
納期限。
そこに記されていた日付が、淡く輝く。
同時に、空間に魔導表示が浮かび上がる。
《帰還条件、成立》
文字は簡潔で、感情を持たない。
続いて、下に表示された数字。
残り時間:数分
卓也は、それを見つめた。
胸が軽くなることはない。
高揚も、達成感もなかった。
「やった」という言葉は、浮かばない。
代わりに、
ただ一つの理解が、静かに落ちてきた。
──終わった。
制度は、終わりを持った。
税は、完結を許された。
それだけで、条件は満たされた。
彼がここで成し遂げたことは、
誰かを倒すことでも、
思想を打ち負かすことでもない。
「終わらせる仕組み」を、示しただけだ。
卓也は、納付書を静かに畳んだ。
光はまだ消えていない。
だが、もう確認する必要はなかった。
残り時間が減っていくのを、
数える気にもならない。
終わったのだ。
だから、待てる。
この世界に、
「終わる」という概念が根付いた瞬間を、
彼はただ、見届けていた。




