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『納付書を握りしめたまま異世界に転生した男は、期限までに帰ってこれるのか』  作者: 南蛇井


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シーン6:二つの言葉

卓也は、視線を納付書に向けたまま、静かに口を開いた。


「これは、なぜ払うか分かります」


声は低い。

感情は、ほとんど乗っていない。


問いかけというより、確認だった。


少し、間を置く。

この場では、その沈黙にも意味があると分かっていた。


そして、続ける。


「払えば、終わります」


強調はしない。

説得でもない。


事実を、二つ並べただけだ。


部屋の空気が、わずかに変わった。

ザイゼルは、ようやく手を伸ばした。


指先で、紙を押さえる。

石机の冷たさとは違う、薄い感触。


視線が、文字を追う。


納税理由。

納期限。

税目名。


どれも、簡潔だ。

余白が多く、説明は最小限しかない。


ザイゼルは、そこで気づく。


この税は、秩序のためではない。

戦争を止めるためでもない。


ただ――

生活を維持するために、存在している。


道を直すため。

車を走らせるため。

壊れたものを、直すため。


理由が、閉じている。


数字は小さい。

だが、完結している。


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