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シーン4:「税とは、秩序だ」
ザイゼルは、初めて顔を上げた。
その視線が、卓也に向く。
鋭さはない。
測るような重さもない。
ただ、確信だけがあった。
「税とは、秩序だ」
断定だった。
比喩でも、理念でもない。
「善悪ではない」
「人を信じなくても、守れる仕組みだ」
卓也の反応を待たず、言葉は続く。
「人は欲を持つ」
「欲は争いを生む」
それは否定でも、非難でもない。
前提としての事実だった。
「だから、削ぐ」
「奪うのではない」
「持たせすぎない」
ザイゼルは、机に置かれた帳簿を軽く叩く。
「税は、欲を薄くする」
「薄くなれば、衝突は起きにくい」
そして、結論を置く。
「重く、細かく、終わらせない」
言い切る声に、迷いはなかった。
「それが、平和だ」
室内に、沈黙が落ちる。
秩序は、完成している。




