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シーン3:魔王の説明
ザイゼルは、帳簿から視線を外さないまま、語り始めた。
「かつての魔王領は、ひどいものだった」
淡々とした口調だった。
評価も、感情も、そこにはない。
「富は一部に偏り、武装勢力が乱立していた」
「戦争は日常で、終わりという概念がなかった」
紙を一枚、めくる。
「武力で抑えようとした時期もある」
「だが、それでは止まらない」
短く、結論を置く。
「戦うには金が要る」
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「金が動かなければ、戦争は起きない」
ザイゼルが行ったのは、剣を振るうことではなかった。
制度を、振るった。
武器。
装備。
兵糧。
それらすべてに、重税をかけた。
受け取る前に徴収し、
使う前に削り、
蓄えることを許さない仕組みにした。
一律課税。
例外なし。
蓄積不可。
誰も、力を貯められなくなった。
結果、戦争は終わった。
終わり方は、あまりに静かだった。
勝者はいない。
英雄もいない。
ただ、数えきれない死者が――
それ以上、増えなくなった。
ザイゼルはそこで、ようやく言葉を止めた。




